M-164 リターンクロース
リターンクロース
サンタクロースじゃないよ
「ぬわんと!」
魔法使いの変な叫び声が聞こえてきたのは、お昼のこと。
昼食を作っていたアサシンは心配したが、手が離せないので舟長を代理で行かせる。
舟長は嫌な予感がしたものの、そこは恋人の言葉、素直に従って玄関を出る。
「おい、魔法使い! どこだ!」
今日は外でひなたぼっこ! と今朝魔法使いが言っていたのを思い出す。
家の真正面に広がる草原にはいないらしかった。
なら裏庭か、と舟長は目星をつけ、家のわきを通っていく。
裏庭には木が茂っている。
服をひっかけないように慎重に。
でも、家の裏側って基本日が当たらないから、ひなたぼっこできないんじゃ……。
「みぎゃー!」
「ふんがー!」
ネコみたいな声を出してる魔法使いかと思ったら、ネコと奮闘していた。
ネコはびしょぬれで、なんだか怒っているらしい。
魔法使いもびしょぬれで、なんだか張り合っている。
「なにしてるんだよ……」
「む、その声は舟長?」
魔法使いが目を離した一瞬の隙に、ネコは逃げていく。
「ああー! 逃げられた……」
「何してたんだよ」
「ネコが泥まらけだったから、水をかけてあげようとしたら、盆は落ちてネコを強打し、わたしは盆の水をかぶって濡れた」
「そ、そりゃあ災難だったな」
魔「つめたーい。さむーい」
舟「ウィザードローブ、洗濯するから寄越せ」
魔「洗濯? 要らないよ、リターンクロースで今朝の状態に戻すから」
舟「なんじゃそりゃ」
魔「いま作った魔法。でも一日の終わりには洗濯しようね」




