M-163 クリーンクロース
クリーンクロース
いつでも清潔な服を着るために
ふんふん、ふふーん。
魔法使いが鼻歌を歌いながら、窓を拭いている。
自室の掃除も嫌がる彼女が、こんな上機嫌でこんなことをしているのは珍しい。
舟長が通りがかった。
彼も彼女の珍しい言動は強く印象付けられたらしい。
声をかけようとして一度やめる。
だが、何かに気が付いた舟長は、再び声をかけることを決める。
「魔法使い」
「んー?」
「高級品がほこりまらけなんだが」
ここで言う高級品とは、魔法使いの着ている服のことだ。
ウィザードローブ。魔術師しか装備できない、非売品のレア装備。
それが、無残にもほこりで汚れていた。
「ふふふー。だいじょうぶー。クリーンクロース!」
「なに……!? 家の中で雨だと!」
「ほら、元通りキレイでしょ?」
魔法使いはまた鼻歌を歌いながら、次の窓を掃除するため、去っていく。
舟長は、廊下の端にできた水のシミをしばらく見つめていた。
魔「ああ、あれね、三秒ぐらいすると消えるよ。ただのエフェクトだもん」
舟「ならいいけどよ」
魔「っていうか、舟長、わたしの装備のこと、気にし過ぎじゃない?」
舟「おまえが気を回さないからだろ!」
魔「わたしが装備してるのなんか、ほとんど非売品なのになあ。おっかしー」




