M-162 クロースマジック
クロースマジック
着替えするときは周囲を確認して
「クロースマジック!」
魔法使いが朝からどでかい声で叫んでいる。
日曜日のまったりとした起床をぶち壊してくれた魔法使いは、一直線に舟長の部屋へ。
たどり着いた先でも、割と大きな声で挨拶した。
おはようございまーす。
礼儀正しいことはいいことだね。
「人の部屋に勝手に入るな! オレは一応男なんだから! 女のおまえは少し自粛するべき!」
「まくらが冷酷無比な命中力で、わたしのほうへ飛んでくるのが見える」
「人の話を聞け!」
「ふにゃ!? 舟長、いまなんて?」
「おまえの耳はちくわか! はあ……朝からなんだよ。元気で羨ましいこったな」
どうせ叱っても聞いてくれないので、自己満の忠告はやめにする舟長。
彼よりいくらか年上の彼女は、朝からお日様のごとく元気いっぱいだ。
「クロースマジックっていう魔法ができたの」
「そうか。報告ならオレの部屋じゃなくて、いつものリビングでやれよ」
「誰もいなかったから」
「そりゃ、早朝だからだろ」
舟長は大きなあくびを一つする。
こんなことがなければ、もうひと眠りしたいところだが。
さっきのやりとりですっかり目が覚めてしまった。
「だいたい、アサシンは昨日の夜、呑みに出かけてて朝からいないだろ。剣士は支援課の合宿で昨日からいない。斧戦士は……どうしたんだ?」
「なんかいなかった」
「まあ、よくあることか。で、誰もいないからオレの部屋に突撃してきたのね」
「うむ。クロースマジックは、着替えのさいに周りに謎の煌めく布を出現させて、覗き行為を防止する魔法なんだ」
「アサシンに見せたらすぐ使いこなしそうな魔法だ」
「ちなみにディスペルではげる」
「おい!」
魔「わたしらには縁のない魔法だけどね。装備のはや着替えで事が済む」
舟「え、まさかおまえ、下着類や装備の下に着る服もそれで着てんの!?」
魔「きゃー舟長エッチー」
舟「(イラッ)」
魔「まさか。そんなわけないじゃん。下着替えるときは斧戦士さんに見張っててもらう」
舟「今日はどうしたんだよ」
魔「朝はいた」




