M-014 ワープ
ワープ
再現魔法そのに
「魔法使いなら空を飛ぶ魔法を使いたい人も多くいるだろう。しかし、わたしはそうではない。ワープ派だ」
突然宣言し出した魔法使い。
彼女はスカイアドベンチャーの誰もが認めるアタッカーだ。
彼女の魔法攻撃はどんな相手だろうと必ず通用させてきた。魔法無効と魔法反射以外は。
「お、おう」
やや引いた反応を返したのは舟長。スカイアドベンチャーのリーダーだ。
戦闘能力は素早さ以外特筆する点がないが、物理攻撃や魔法攻撃以外振らない、他のパーティーメンバーと違って生き残りやすい。
あと即死と状態異常に弱い。
「いやそれはおまえらがオレにホワイトカードを装備させないからであって……聞いてるかおまえら」
「いや、全然」
舟長の嘆きに対し、冷酷にもそう答えたのは斧戦士。
第二のアタッカーで、魔法で死にやすい無茶なステータスをしている。
攻撃はクリティカルが効いてもちろん鋭いが、口撃もこのように鋭い。
「いやだって、舟長の分のホワイトカードがないから仕方ないよ」
「ホーリーカードも全員分欲しいな」
斧戦士の援護をするように口添えしたのはアサシン。
彼女はその名の通り、即死攻撃を得意とするやや物理よりのオールラウンダーだ。舟長とは他人ではない関係も手伝って彼への口撃はアサシンが一番鋭い。
そして最後にマイペースにも口を挟んだのが剣士。
剣士はどっちかというと騎士みたいな役割をスカイアドベンチャーでは果たしている。
みんなを、特に死にやすい魔法使いや斧戦士を庇って死ぬことが多い難儀なメンバーだ。
「ワープの魔法作ったからみんなついてきて!」
「やっぱそういうオチか」
「いいじゃない。楽しくて」
魔法使いが朗らかに告げた内容に、舟長はため息をつき、アサシンは笑う。
いつもどおりのスカイアドベンチャーだ。舟長はいつもやる気がないけど、他の面子はいつもやる気に満ちてる。魔法使いは特にそうだ。
魔法使いがみんなを集めたのは、だだっ広い草原。
ここからみんなの通う学園のドームへ転移するというのだ。今日は学園が休みなので、そこに転移しても大丈夫なことは確認済みだ、と魔法使いは言った。
「ホントかぁ?」
「まあ、人がいたら黙らせちゃえばいいし」
「アサシン……ジョブ特有の黒さは見せなくていいから」
「そう? ごめんごめん」
アサシンはからからと笑う。
魔法使いが杖を取り出した。いよいよ、魔法の行使に取りかかるらしい。
杖の形状は普段のシンプル一直線な感じと違って、魔法使い風に言うなら余計なパーツが付いていた。レア素材である、天使の羽根を六枚も豪勢に使い、練金して出来上がった杖である。
振り回したりしないで恐る恐る空にかざすと、魔法使いは叫んだ。
「ウィング!」
「あれ、杖なのにウィングなのか」
「舟長、黙ってられないの? ボクが黙らせてあげようか?」
「ごめんなさい」
派手なエフェクトがスカイアドベンチャーを取り巻き、杖を握っていた魔法使いだけが転送された。
「あ、あれ?」
「一人用の魔法……?」
「置いてかれたぞ、どうなってる」
「いや、それより魔法使い大丈夫か? 所定の位置に飛んでるか?」
一方、その頃の魔法使いは、みんなが着いてこないことも知らず、案の定誰かいたドームにちゃんと転移していた。
しかしだ、その誰かは派手な攻撃の練習をしていて、魔法使いはその余波に当たって死んだ。
「ぬわぁあああ」
「誰だ!? っていうか大丈夫か!?」
魔「……仲間たちはすぐには助けに来てくれませんでした」
舟「だってさ、おまえが死んでるとはついぞ知らなかったんだぜ?」
斧「だが、一人用とはな。ソロ冒険者にしか売れないぞ」
魔「ソロ冒険者、結構いるからいいんじゃない?」
ア「でもさ、魔術を込めた杖って魔法具だよね。勝手に売っていいんだっけ?」
魔「調べてくる」
剣「こりゃ無理なパターンだな」
※無理でした。




