M-152 ノイズレス
ノイズレス
沈黙の結界を張ろう3
「今度こそ、作ってやったぞ! 防音魔法!」
大量の燃えるゴミの袋を背景に、魔法使いは言った。
前回の挑戦からおよそ三か月。
そんなに時間がかかった訳ではなくて、理由はだいたい他の魔法に浮気していたから。
昨日の夜ふいに思い出して、斧戦士を自室に招いた魔法使いは、今朝起きてこなかった。
心配したアサシンが駆け込むと、目の下にくまを作った魔法使いが鎮座していて、そんなセリフを吐いたのであった。まる。
「もしかして、寝てないの?」
「二時ぐらいかな。寝たの。ふわー、眠い」
目をしぱしぱするさまはまさに眠そうである。
眠い目をこすりながら服を着替え、トレードマークのローブを羽織る。
それから、危なっかしい足取りで一階まで降りると、杖と短冊を掲げた。
「ノイズレス!」
「いまやるんだ。あ、舟長、どうしたの?」
「……急に声が……。魔法の効果か」
近付くにつれて明瞭になる舟長の声。
アサシンは魔法の成功を感じて、後ろを振り返る。
魔法使いは柱に寄りかかってすやすや寝息を立てていた。
魔「サイレントとサイレンスを組み合わせて魔法を作ったよ」
斧「円形に広がる外側はサイレントの効果を利用して、声を吸収する。内側はサイレンスの効果で声が出て行かないようにする。魔法使いさんはほんとうに優れた魔術師だよ」
ア「範囲が間違ってただけで、ほとんど正解に近かったんだね!」
魔「発動するのに膨大なSPを消費するところがネックだけどね……」
剣「やっぱりあるのか、デメリット」
舟「魔法陣の記述が詳細過ぎるとSPが多くなるんだっけか。改良の余地ありだけど、とりあえず完成したんだ。喜ぼうぜ」




