M-147 インベリアブル
インベリアブル
状態保存
「クソ生意気な魔法使いだな」
舟長がそう言い捨てると、魔法使いは憤慨して杖を振り回した。
「あんだと? エナフォすっぞ」
「こういうところは変わんねーってことは……おまえ、本物の魔法使いか!」
「それはどういう意味だろうな? 舟長」
別人説を疑っていた舟長は、あんな発言を、いつもの魔法使いが言ったとは到底信じられない。
しかし、そんなことを言うなんてできなかった。
頭の後ろに冷たい金属の感触を感じたからだ。
斧戦士がわざわざガンナーにジョブチェンジして、銃口を向けていたのだ。
「ええっと」
「ブブー! 時間切れー舟長は死んだー」
「ちょっと待て、まだ死んでな――」
ばきゅーん。
容赦なく引き金を引いた斧戦士によって、舟長は予告通り死亡。
斧戦士は、出来上がったほかほかの死体を見て満足そうに頷く。
そして鼻を鳴らした魔法使いとともに、舟長を放置して去っていった。
「あれ、舟長の……死体が転がってる」
「なんでそこで考えたんだ?」
「いや、焼死体とか水死体とかあるけど、銃でやられた死体はなんていうのか考えてて」
「……強いていうなら銃痕のある死体とかじゃね?」
やや呆れた声でアサシンと応じているのは剣士。
斧戦士が舟長の死体をつくって30分経とうとしていた。
当然の如く蘇生してもらえなかった舟長は、相変わらず廊下の真ん中に横たわっている。
邪魔だ。
「どうする、これ?」
「本人は……」
剣士がちらっと死体を振り返る。
死体から舟長の魂が起き上がって、こっちを見ていた。
『助けろよ!』
ついでに喋った。
むろん、これらのことはスカイアドベンチャーでは常識である。
「ええーそんな生意気言う舟長には、リバイブかけてあげない!」
『えっ、おい、剣士!』
「オレもかけないぜ。某舟長風に言うとSPがもったいないからな」
『某舟長風って、完全にオレ――って、待て、どこ行くんだよ!』
「部屋?」
無情にもそう言い放った剣士は、くすくす笑っているアサシンと廊下の奥に消えていく。
舟長は、ひとり寂しく廊下の中央に残された。
魔「インベリアブル。人の状態をそのまま保管する魔法だよ」
ア「効果は一時間ぐらい続くみたいだね」
剣「村の診療所とかで、延命がはかどりそうな魔法だな」
斧「舟長はあまりにも可哀想だったので、おれがリバイブで蘇生してあげました」
舟「おまえ、回復量少なすぎ! もっかい死ぬかと思ったわ!」
斧「もう一度死体にしてほしいのかね?」




