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ここは、魔導研究所  作者: 紅藤
本編(Mシリーズ+Aシリーズ)
142/527

M-138 バウンドボール


バウンドボール

スーパーボールばいんばいん




「相変わらず頭悪そうな説明だな」


 舟長がなにもない頭上を見ながら言った。


「ばいんばいん……かあ。擬音語で分かりやすくする作戦かな?」

「誰もツッコミ役がいないから、なんで見えるんだよって突っ込むシーンがないのだ」

「急に何言い出してるの? おまえは」


 良識ある剣士が、尋ねてもいないことをべらべら喋る斧戦士にツッコミを入れた。

 もちろん、剣士も本気で斧戦士の言っていることが分からない訳ではない。

 彼にも頭上の、タイトルと説明文は見えてるのだから。

 わたしもなんで見えてるの?とか無粋なことは言わないつもりだ。


「舟長、ちょっと階段まで来て!」


 その場にいなかった魔法使いの声がした。

 彼女はどうやらずっと二階の自室にこもっていたらしい。


「階段で魔法使うなよ……」


 呆れながらも舟長が重い腰を上げて階段に向かう。

 他の三人は気楽に「いってらっしゃーい」とか言って待機だ。

 舟長はイラッとした。


「いくよ、バインドボール!」


 威勢のいい声と、ばいんばいん跳ねる音が聞こえている。

 しかし、魔法使いの姿も魔法の正体も一向に分からないまま、5分経った。

 舟長が階段を駆け上ると、魔法使いが叫んだ。


「舟長、危ない!」

「は?」


 目の前には高速でスピンする灰色の球。

 舟長は驚きのあまり、階段から転げ落ちた。






魔「だいじょうぶ?」

舟「ちょっと腰を打った程度で済んだからいいものの、何が起こってたんだ?」

魔「わたしのイメージでは、ぴょんぴょんと階段を跳ねながら降りていくはずだったんだ。それが何故かあっちこっちに飛んでいって、全然下に降りてかないから、もう一つ呼び出そうとしたときに舟長が現れたの」

舟「ふむ……つまりオレは悪くない、と」

魔「その辺は知らないけど、災難だったね、舟長」

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