M-130 リトルソウル
リトルソウル
身体も精神も子ども
「ねえねえ、魔法使いちゃん。リトルボディとリトルマインド、両方発動したらどうなるの?」
「えー、なにも起こらないと思うよ? 優先度は大人のほうにあるから」
リトルボディは、身体を子どもにする魔法、リトルマインドは精神を子どもにする魔法である。
名探偵ごっこや赤ちゃんプレイが捗るね。
「つまり、リトルボディの精神は大人のまま、リトルマインドの身体が大人のままっていう効果が優先されて、結果的に何も起こってないように見えるんだ」
「うん」
そんな会話をした翌日、魔法使いは、一つ背伸びをして誰ともなく呟いた。
「まあ、こういう相反する魔法があると知ったら、合成したくなるのは流れ的に分かるよね。うむ、盛者必衰の理である」
近くに座っていた舟長が怪訝な顔をした。
慣用句の使い方が間違っていたからだろうか?
もしや、合理的だ、と言いたかったのではなかろうか。
間違っているとは気づかない魔法使い。
深く頷くと、杖を取り出して構える。
「長く苦しい戦いだった……」
魔法使いは過去を振り返る。
まず、リトルボディとリトルマインドを改造して、子どもになる作用の方が優先されるように効果を変えた。それから……えーと。それしかやってなかった。
あとは、リトルボディ改とリトルマインド改を、なるべく急いで両方かければ、理論的にはうまく行くはずだ。念のため、それ専用の魔法も作ってあるが、たぶん使わないだろう。
「さて、今日は誰にかけようかな?」
不穏なつぶやきに、舟長は身を固くする。
なるべく気配を消して座っている椅子と一体化する。
気配の読めない魔法使いは、無事、舟長をスルーして剣士に話しかけた。
「君に決めた! なんちゃって」
「オレの幼少期なんて、今とそんなに変わらんぞ?」
「それでもいいよ。効果の確認をしたいだけだから」
「じゃあ、よろしく頼む」
その言葉を了承と受け取って、魔法使いはリトルボディをかける。
しかし、リトルマインドが重ねてかからない。
困った魔法使いは、ディスペルを唱え、一度剣士から魔法を引き剥がす。
それから、切り札のリトルソウルを唱えると……?
「ここはどこだ?」
「おお、小さく……髪の毛も短くなってる」
魔「昔から長かった訳じゃないんだ」
舟「女の子と間違えられるって言って、やってなかったんだよ」
ア「かなり成長してからだよねー、そうやって伸ばすようになったの」
剣「二人とも、急にでかくなりやがって……オレの目がおかしいのか?」
斧「残念、まだ効果時間中です」




