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魔法戦士と聖戦士と魔女  作者: 慶天
1章 盗賊と騎士またはアインフォードとキャロット
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1章:サイドB アインフォードとキャロット その3

先ほど見た川を目指してフライで移動する。あまり高度を上げると空を飛ぶモンスターに発見されるかもしれないので森のすぐ上を飛ぶようにする。キャロットを抱えているのであまりスピードは出ないが、おそらく3時間もすれば着くだろう。

「キャロット、寒くないか?」

「・・・・・・・つーん。」

 まだ怒ってやがる…。

 

 一時間ほど前

 「キャロットはフライを使えないから、俺が抱えていくことにする。エイブラハムは普通に飛んできてくれ。」

 そういってキャロットを抱き抱え用としたとき、キャロットが抵抗した。

 「ア、アインフォード様!それはいかがなものでございましょうか!わた、わた、私をそのようにまるで米俵のように担いでいくなど、そのような仕打ちはありぇりません!」

 噛んだな。うん。

 「いや、誰が肩に担ぐといった。ほらこっちに来い。ちゃんとお姫様抱っこしてやる。」

 それでも真っ赤になって抵抗するが、これ以上ここにいたらまた獣がやってきそうだ。

 「諦めろ。ほら。」

 キャロットは顔を覆って恥ずかしさに悶えているようだ。顔を覆っている指の間からチラッとこっちを伺っては顔をうずめて、小さくキャーとか言っている。何この可愛い生き物。こっちが悶えるわ。

 しかし、女性とはいえフル装備の戦士の総重量は決して軽くはない。自分の筋力なら全く問題なく1日中でも抱えていられそうだが、それでも予想よりはズッシリきた。

 「キャロット、君意外に重 うぼぁっ!」

 グーで殴られました。

 

 「今日はここで野営をすることにしようか。薪になりそうなものを探してくるから、キャロットは先にそこの川で体洗っといで。エイブラハムは護衛をよろしく。」

 「覗いたらぬっ殺します!」

 エイブラハムはオスだったと思うけどそれはオッケーなのかな。

 

 狼と戦った場所から3時間ほどかけて野営できそうな川原に降り立った。

 フライの魔法が使えないキャロットは空を飛ぶ経験などないものだから、あれほど不機嫌だった彼女も珍しい周りの景色に徐々に機嫌を直してきたようだ。やれやれ、もとNPCでも女性は女性か。そういや、カタリナも『空気嫁!』ってよく言っていたなぁ。

 

 野営できそうだと思ったポイントは結構広範囲に小石が広がった川の曲がったところだ。果たしてそこが野営に本当に適しているかどうかなんて分かるはずもない。ボーイスカウトやっとけばよかった。

 ワニみたいなものは見かけないけど、水棲のモンスターとかいたらやだなぁ。そういや子供の頃、川原でのキャンプは鉄砲水に気をつけろってよく言われた。中洲でキャンプは厳禁だって言われたような気がする。

 自分も体洗ってこびりついた狼の血とか洗い流したいが、さすがにここはレディファーストだろう。森に少し入って薪になりそうな枯れ枝を集める。生木は煙がいっぱい出るからダメなんだっけか。

 

 薪の準備ができ火を付けようとしてはたと困った。どうやって火をつけるんだ?昔、テレビで原始人がやっていた火おこしを再現しているのを見たことあるけど、あれ相当大変だったような気がする。

 ファイアボールで火をつけたらいけるかな?そう思って一瞬やってみようかと思ったが、あまりよろしくない未来が予想できたので自重した。きっと薪と下の地面ごと吹っ飛ぶに違いない。エイブラハムのブレスでなんとかできる…か?

 「ドラゴンブレスで焚き火の火起こしとかバッカじゃね?」

 ドラゴンブレスを火起こしに使うとかそう思うとなんだか可笑しくなってきて、一人で腹を抱えて笑ってしまった。

 

 ひとしきり笑ったところでキャロットとエイブラハムが戻ってきた。キャロットは鎧を脱ぎ、鎧下の軽装である。白銀の神器級の鎧は無造作に川原に放り投げられていた。その鎧ゲットするのに結構苦労したんだぞ。もうちょっと丁寧にだな。まぁいいか。それくらいじゃ傷の一つもつかないし。しかし、そのうちこの世界の人間と接触するだろうし、その時には盗難に遭わないように気を付けないといけない。

 服も洗ったようで水に濡れていた。鎧の中まで血が入り込んでいたから洗わないと匂いも取れないし気持ち悪いからな。まだ火をつけていなかったのが申し訳ない。

 それにしても…ぴったり体に張り付いていてこれは結構エロいぞ。

 

 「エイブラハム、軽くブレスでこの薪に火をつけてくれないか。」

 うまくいくのかな。と思いながら頼んでみた。エイブラハムはチョロっとブレスを吐き出し、器用に火をつけてくれた。ドラゴンブレスは出力自在なのか。これは便利だ。

 「これでこれが焼けますね!」

 そう言ってキャロットが差し出したのは川でとってきたらしい魚だ。5匹ほどある。ほう。素手で魚を捕らえるとはなかなか器用じゃないか。でもこれで食料も少しは節約できる。

 「じゃ、キャロットは魚のワタ抜いて焼いておいてくれるかい?俺も体洗ってくるわ。」

 いい加減血を洗い落とさないと気持ち悪い。生臭くて仕方ない。

 「お任せ下さい。こう見えてももとはメイドです。お料理はバッチコイでございます。」

 お、おお。バッチコイなんか。なんだかわからないがすごい自信だ。メイドなのは確かだし、料理のスキルもつけた覚えがある。任せておいても大丈夫だろう。

 魚をさばくのは料理。獣をさばくのは…解体?うーんこの違いの線引きはどこなのだろう。

 「じゃ、頼んだ。すぐもどるわ。」

 

 キャロットの鎧が置いてあるところで自分も鎧を脱いだ。その時よく見たら無造作に置かれていると思っていたが、綺麗に水洗いし、汚れがつかないように大きな葉っぱを下に敷き乾かしているようだった。なんだやっぱりキャロットはちゃんとした娘じゃないか。言葉使いが時々おかしいけどお父さん安心したよ。

 川に入りとりあえず体中を手でゴシゴシ洗った。あーさっぱりするわ。できたら温泉にでも入りたいところだけど、それは贅沢か。服も脱いで揉み洗いし、川原に上がってそれを着る。着替えも欲しいなぁ。とりあえず火に当たって乾かそう。

 

 焚き火のところに戻るとキャロットが困った顔で言ってきた。

 「アインフォード様。…塩がありません。」

 塩?塩なんか持っているわけないよ。あー。これは問題だ。人として塩は絶対必需品だ。これは早いとこ人間と接触してなんとかしないと。

 「しかたない。今日は素材の味を楽しもう。」

 なんか塩気のある食べ物あったかな…。そう思ってバックパックを引き寄せ、ふと気がついた。このバックパックの中はどうなっているんだ?ゲーム中のバッグはただのデータ上持てるアイテム個数を管理するためのものでしかない。だから重量や形状は無視して入れることができる。実際予備の武器としてロングボウを入れてきたはずだ。こんなバックパックにロングボウなんて物理的に入るわけがない。

 ひっくり返してみた。するとありえない状態になった。どう考えても入るわけがないロングボウと矢入の矢筒が出てきた。食料として堅焼きパンと干し肉が出てきた。ヒーリングポーションがゴロゴロと10個出てきた。10mはあろうかというロープが出てきた。あとは水袋とマジックアイテムの小物が幾つか。

 「どうやって入ってたんだこれ?」

 キャロットもバックパックをひっくり返している。中身は似たり寄ったりだ。プリーステス時代に使っていたメイスがロングボウの代わりに、ヒーリングポーションの代わりにMP回復ポーションが入っているくらいか。

 うーん?とりあえず入れ直してみるか…。そう言いながらロングボウを入れようとする。

 「あ、入りやがった。」

 どうなってんだ、これ。つまりあれか。これ魔法のバックパックに変化してしまっているのか。まぁ確かに「ソウル・ワールド」にも魔法のカバンはあった。通常20個しか入らないバックパックを40個まで持てるようになるアイテムだった。

 ま、まぁいいか。便利グッズだしこれからの旅にも役に立つだろう。ひょっとしたらこの世界じゃ一般的なものかも知れない。

 ん?エイブラハム…おまえよく見たらちっちゃなバックパック背負ってるのな。中身が気になるが…

 うーん、やめとこう。エイブラハムはカタリナのNPCだ。勝手に扱うのはやはり良くない。

 それにしても毛布くらいあれば良かったのに。ゲームだと野営するとき寝袋とか毛布とか必要だってそんなの関係ないからね。あーもうゲームから離れよう。とりあえず塩だわ。干し肉はきっと塩気がきついだろうから、しばらくはそれでいいとしても早いうちに人里に出なければ。

 「アインフォード様。お腹すきました。」

 あ。はい。君大食いキャラだったね。

 

 

 

 それから3日。ようやく森の端までたどり着くことができた。

 ここまでしたことは獣どもとの戦闘と、とにかく狩りである。一度ゴブリンと思しき緑色の小人を見かけたが、向こうが逃げていった。やはりゴブリンとかオークとかいるみたいだ。

 どうにかこうにか「食肉」を手に入れることはできた。もっとも肉屋さんがみたらもったいなさに発狂して肉きり包丁で襲いかかってきそうなレベルでの解体作業だが、そこは勘弁してもらおう。余った部位はエイブラハムが美味しく頂いていたので。

 それにしても塩が欲しい!

 素材の味を満喫するのはもう十分だ。血の滴るレアステーキは大好物だったが、どんな寄生虫がいるかもわからんからしっかり火を通した。獣の種類によって肉の味が違うことも理解できたが、それ以上に調味料のありがたさが身にしみて理解できましたわ。なるほど史実で胡椒が重要な交易品になっていたわけだ。やっぱ、胡椒は同じ重さの黄金と同じ価値なんだろうか。この世界では胡椒が一般化されていますように!

 ちなみに皮剥もだいぶ上達した。獣を吊るしてお腹を切り裂けば上手に剥ぐことができたのだ。社長室に敷いてあった虎の皮っぽいやつは魚の開きみたいな形をしていたのを思い出して実践してみたわけだ。ただ、皮ってなめしたりする作業が必要だったような気がする。

 わからんのでとりあえず水で洗って脂をこそげ落として陰干ししておいた。そうしたら縮んだ。しかもちょっとカビてきた。ままならんもんだ。

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