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魔法戦士と聖戦士と魔女  作者: 慶天
2章 錬金術師の夢
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2章:錬金術師の夢 その15 第三位階魔法

「ところでバルドル、街の様子はどうだった?特に昨晩墓地でアンデッドが出たという話はあったのか?」

 アルベルトたちがアンデッドと戦ったのは昨日の早朝の事である。その日は墓地周辺に治安維持団が何人も配備されていたので彼らは墓地に近づかなかった。墓地に侵入するものがないよう兵士が見張っていたからである。

「ああ、昨日は平和な夜だった様じゃ。念のため教会の神官に話を聞いたがアンデッドは出現しなかったということじゃ。」

「あの夜はひょっとして特別な何かがあったのかな。ベネディクトっていう錬金術師が襲われたのちょうど私たちが墓地で戦ってる頃だよね。」

「ドーリスさんがヴァンパイアを率いてベネディクトを襲撃したのは間違いないと思いますが、その撤退を紛らわすための陽動とか…。または単純に強力なアンデッドが夜の墓地などという負のエネルギーが集まりやすいところに現れたため、勝手に湧いて出たのかもしれませんね。」

 やはり一度墓地の探索をしたほうがよさそうだ。となるとやはり夜になるのか。できたらアンデッドの活動が弱まる昼間のほうがいいのだが、兵士がそれを許してくれないだろうからな。

「今夜、墓地に侵入してみませんか?」

 俺は3人に提案してみた。3人ともそれしか方法はないだろうと考えていたようだが、真祖の恐るべき能力を聞かされた後では躊躇してしまうのも仕方ないことだろう。

「それしか方法はありませんね。問題はどうやって兵士の監視を抜けるかですが。」

「それにつきましては魔術を使いましょう。エリーザさんも透明化の魔術を使えるのでしたよね。私とエリーザさんで皆さんに透明化の魔術をかけます。さらに暗視の魔術も皆さんにかけます。万が一ヴァンパイアと戦闘になったしまったときのためにエンチャントもしておきましょう。」

「アインフォード様、音も消したほうが良いのでは?」

「それもそうだな。ではサイレンスも展開しよう。アルベルトさんに一時的に沈黙の魔法をかけますので皆さんアルベルトさんの周りから離れないでください。離れすぎるとサイレンスの効果範囲から出てしまいます。もちろん効果範囲にいる間は会話もできませんから打ち合わせは入念にしておきましょう。」

 ここまで話して皆の意見を聞く。

「なんていうか、アインさんほんとに戦士なの?それだけの魔術が使えるなら立派に魔術師を名乗っていいと思うんだけどなぁ。私自信なくすわぁ。」

「エリーザ、それは戦士の俺としても同じだから気にするな。アインさんとキャロットさんは本人を前に言うのもなんだが別格だ。あ、すいません、その悪い意味ではなくて…。」

「いえいえ、お気になさらず。ですが私達も最初から魔法を知っていたり、このような装備を持っていたわけではありません。最初はゴブリンに追い掛け回され、何度も死にかけたものです。少しずつ強くなれば良いと思いますよ。」

「アインさんがゴブリンに追い掛け回される姿とか想像がつきませんよ。でもそうですね。努力はきっと報われるはず!俺たちは大魔女カタリナの遺産を見つけるんだからさ!」

 カタリナについてはこの一件が終わったら彼らに聞いてみよう。

「ねぇねぇ、そういえば聞いてよ。みんな気が付いてなかったと思うのだけど、私も魔術進化したんだよ!この間のアンデッド大集合の日、最後に撃ったマジックミサイルがね、3本でたの!」

「3本出たって、一度の呪文で3発出たということか?」

「そう!威力3倍だよ!」

 いや、まて。それすごく重要なことだぞ。「ソウル・ワールド」準拠なら魔術師として一番大事なレベルアップをしたってことじゃないか。魔術師が初級から中級にかわる第三位階の魔法を使えるようになった証拠だぞ。この子魔術学校を出てるんだろうなぜ知らない。

「あ、あの。エリーザさん。それはすごく重要なことかと思うのですが。その、学校で習いませんでしたか?」

「あー私、中退だからぁー。」

 そ、そうなんか。悪いこと聞いたかもしれないな。

「それでは出発まで時間がありますので、エリーザさんをちょっと借りてよろしいですか?ちょっと二人だけでやりたいことがあります。」

「え、やだぁ。うれしいけど…そ、その、そんなストレートに…。」

 そう言ってなぜか赤くなって悶えるエリーザさん。

 あ?なんか大変な誤解をしていないか?

「アインフォード様…昨晩の事といい…アインフォード様はいつからそのような色欲魔に成り下がりやがったのですか!キャロットは、キャロットはっ!」

 まて、待ってくれキャロット。こら聖剣を抜くな。

 周りのみんなもそんな微妙な目をしてないで止めてくれ。

「ちょ、違うから!エリーザさんがたぶん第三位階の魔法を使えるようになっていると思うから、魔法を教えようと!」

「え?」

 その場にいた全員がエリーザを見た。

「エ、エリーザ、それは本当なのか?」

「ちょっとよくわかんないけど、確かにあの戦いの後魔力が増えたような気はしてたんだよね。そっかー私、上級の仲間入り?」

 第三位階は一流魔術師の証だったな。そう考えるとこの年齢で第三位階が使えるというのはものすごい才能なのではないか?

「アルベルトさん。エリーザさんの年齢で第三位階を使うものは他にいるのですか?」

「い、いや、もともとこの歳で第二位階を使えるというだけでも、すごい才能の持ち主だって言われてたから。まさかもう第三位階が使えるようになっているとは。」

「な?わかっただろ、キャロット。」

「そ、そうでございましたか。これは私としたことが早とちりをしてしまいました。」

 そう言いながらまだこちらをジト目で見ている。だから聖剣をしまいなさい。

「というわけで、夕方までエリーザさんを借りますよ。」

「えー夕方までたっぷりですかぁ。そんなぁ。」

 おまえ、わざとやってるだろ。

「アインフォード様!や、やはりあなたという方はっ!」

 あー。ループしてますがなー。


 それから夕方まで隣室でエリーザに魔法の講義をすることになった。第三位階を使えるようになったとはいえ、いきなりすべての魔法を使えるわけではない。誰かから教わる必要がある上、最初は一つだけしか習得できないはずだ。だから今ここで習得する魔法は重要になる。今後この子が第4,5と位階を上げていけるならそれにつながる呪文を選択しておかなければならない。とはいっても、大体の魔術師はここで選択するのは「火球」が「電撃の矢」かのどちらかなんだが。

「エリーザさん。第三位階の魔法は重要なものばかりです。いくつか候補を上げますが、今回習得できる魔法は一つだけです。じっくり考えて決定してください。」

「うん、わかった。アインさんから教えてもらえるんだもんね。ちゃんと考える!」

 非常に良い返事だが、なぜそんなに密着してくる。こんなとこキャロットに見られたらまたあらぬ誤解を受けるぞ。


 第三位階の主な呪文は攻撃魔法では「火球」「電撃の矢」など。また「飛行」「魔法解呪」「加速」など重要な魔法が目白押しである。通常はパーティの編成や今後の取得呪文を考えて選ぶのだが、大体のものは大規模攻撃魔法である「火球」や「電撃の矢」を選ぶ。魔術師はこの段階で始めて大きな攻撃力を得ることができるからだ。


 エリーザは「火球」と「飛行」でずいぶん悩んだようだが最終的には「火球」を選択した。妥当な判断だろう。ただその時、次に魔法を習得できるようになった時には必ず「飛行」を教えてくださいと懇願されてしまった。この子の成長スピードからするとそれは決して遠い未来の事ではないと思うから、俺が近くにいるなら必ず教えてあげると約束しておいた。その時「いっそ結婚してしまうほうが…」という独り言が聞こえたが聞こえないふりをしておいた。



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