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SF『自己鍛造弾頭』  作者: 壱りっとる
第一章『日常』
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『インポッシブル』

 機体の大半を占める情報処理専用電脳で、索敵部隊から得られた情報に評価・検証を加え、敵陣の内容どころか、その意図までもつまびらかにする恐るべき機体である。・・・通信網が完調なら。



戦術機:TYV-10210 楊貴妃


「毎回まともなネットワークが構築できるような戦場なら、どれだけ手間が減るのでしょうねえ・・・」


 今現在で情報経路の構築は、当たりに続く横線の殆ど無いあみだくじと同じぐらいの信頼度である。たまには縦線も消えたりするので油断ができない。


「今日も意味不明な連絡共ね・・・。頭痛が痛いわ」


 上げられてくる情報を受け取るたびに、記憶~ メモリ ~上にそっと積み重ねる作業が始まる。


 重要性が高そうだと上の階層、低ければ逆。

 

 発信座標が近ければX座標が近くなり、遠ければ逆。


 時間が近ければY座標が近くなり、遠ければ逆。


 近いセンテンスが多ければそれらに紐を通し、なければ逆。


 裾野の広いもの、頂点は高いが狭いもの。

それら情報を纏めた山の頂は、更に高い情報の山の麓となる。


 山頂と山頂の間には糸が張り巡らされ『ブリッジ』が構築されているものもある。


「これはつまり・・・コイツとコイツは連動しているのね。A1からx29まで、どの地点も波のように押して、反応の強い所は波のように引き返し・引き込みながら逆側からの効果射撃で敵を削り、そして弱った所を押し返し、波のように洗う。・・・チョーまともに連動してるじゃないの」


 戦術機も超光速空間を経由し、自己判断を加えた情報を母艦に伝達する。


「・・・・・・これうちの負けじゃないのナウ」


 評価と検証を書き、時刻をヘッダに付け、接尾語を加えたら送信。


「と、強襲の衝撃から立ち直って、完全に連携を始めたわねぇ」


シュポッ。


 放熱塔を開きラプラス機関で位相を揃えた熱量をこっそりと宇宙空間へ排熱する。頭が熱くなりすぎた時にはこれが一番効く。


プハー。


 一服すると、波間に揺れる自軍の部隊、それに対する敵の対応に”アラ”があるのが見えてきた。


黙考。


「(戦域に敷かれた有線ラインで指令は通るけど、自動兵器や行動中の部隊は、この強度の通信妨害の中では通信精度に問題が出る。それで各地の対応への微妙なアラにみえるのね・・・・・・敵のHQに近い所ほど、対応に雑味がない。・・・・・・。でもこの対応の揺らぎも、混乱から立ち直った今はほとんど消えかかっているが、素早く対処できれば・・・立て直せる、かな?)」


 更にもう1本放熱塔を開き、今度はゆっくりと放熱。


プフゥー。


 別に、冷却が足りていないわけではないけど。

一服すると、思考の冴えが・・・センスが一段と増すような気がするのよね。


「よし。最も揺らぎのない戦域、E-18に存在する有効な戦力を・・・」


 情報をパッと見ればE-18付近の味方は、敵の反撃前に撤退を済ませている。

そりゃあ揺らぎもないけれど判断が早過ぎる。


「そりゃ的確な対応してくる相手に連携取れない味方じゃ勝ち目はないですけどもねぇ。どうしてこんな早く反応できたのかしら・・・と?」


 上手いことランディングできた偵察機が、精度の良いネットワークを構築していたのが索敵に一役買ったらしい。


 丁度いいので、そこのネットワークの情報からE-18の中でも怪しい地点を選別。

付近を飛んでいたネットワークの構築の功労者、強襲偵察機 RBYF-19E 大輪に指令。


「通信、RBYF-19E 大輪。E-18 b28を捜索せよ。敵の有力な通信・HQが存在する可能性あり、重要度B5。出来る限りの索敵を行い、可能なら攻撃も許可」


と、指令を飛ばす。


 ついでに光学観測機と電子補正を駆使し、RBYF-19E 大輪の様子を目視で確認しようとした瞬間、


カッ!!!


 目も眩む激しい閃光がRBYF-19E 大輪を包み込む。


「えーっ!?」


 一瞬でプラズマに包まれた機体(?)が、これまた一瞬でもの凄い速度で吹き飛んで木々をなぎ倒してゆくのが見える。


 長く地面を削ったラインの先ではプラズマ炎が上がり、噴煙と塵灰で観測が不可能になった。


 「あれはもう駄目なんじゃないだろうか」と思う。


 沈思黙考。


 何もかもが上手く行かない時はある。

 今度は一気に3本の放熱塔を開き、コヒーレントな熱量を近くの恒星へ向かって吐き捨てた。


 ブッハァ~!!! ・・・冷気が美味い。


「・・・・・・この作戦、もう無理だと思いますナウ」


 通信終了。



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