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SF『自己鍛造弾頭』  作者: 壱りっとる
第五章『実機演習』
33/36

『ハイ&ロー』

リアル時間ががが


飛び込め囮部隊! そんなお話し


作戦当夜。


 夜気を裂き、空気が炸裂する。

 闇を割って、眩い閃光が空を埋め尽くす。


 作戦開始と同時、全力で投射された各種阻害・妨害弾頭が、敵のセンサーの眼を塞がんと、都市上部や周辺で一斉に炸裂する。広大な市街を形成する、まだ白さの目立つビル群が閃光を反射、可視光からガンマ線まで、あらゆる電磁波が空間を埋め尽くし、突入部隊の道行きをきらびやかに彩った。


 「現在、敵は市街に篭り誘引殲滅を狙っている可能性が高い。相手が反攻に出た際の急激な戦況の変化に注意せよ」とは、アビゲイル嬢のお言葉である。


 ややこしい状況であるが、そこを体当たりで引っかき掻き回しに行くのがヤマダやNAKAの仕事である。


(さて、迎撃態勢はどーなっとるんかいな。先日以来、大きな動きは確認できてないから、派手ジャンジャン迎撃バリバリはこないと思いたいんだが・・・)


 盛大に放り込まれた目眩ましが、白とも黄色ともピンクとも見えるサイケデリックで濃密な霧となって電波・光学視界を塞いでいる。この妨害の半分以上が自軍の放ったものだが、当然こちらの部隊にも妨害は有効なのである。


 市街地突入までの数十キロ。その間の発見率を下げるための電磁封鎖とあいまって、受動パッシブしか使用が許可されていないセンサー類は真っ黒、絶賛五里霧中であった。


 しかしここまでは良くあるシチェーションである。


 敵も何時もの通り。

 力任せに撹乱を突破しようと試みてレーダー出力を上げまくり、超音速破砕弾ソニックバスター(妨害煙幕等に穴を開ける為の特殊弾頭)を釣瓶撃ちして観測窓をこじ開ける。・・・と、言いたいところだが。

 今回に限っては、敵側の対応が全く行われていない。


 誘引殲滅という読みは正しかったのか。それとも囮部隊程度に手の内は晒したくないのか。10kmに及ぶ市街線からの迎撃は見受けられない。


(おっや~? 通り一遍の反撃すら来ねーのはなんなんだ? ・・・まあ、なんかあればそん時はそん時か)


 ハヴォックヤー。


 ヤマダは、事前に作成された精密なデジタルMAPに従い、超高速で出来る限りのランダム機動をもって、不気味なほど反応のない市街に突入・・・した。


「俺に触れると怪我するぞぉぉ! 触れると漏れ無く壊れるぞおおぉぉ!! 俺がなぁあああああ!!!」

 

 市街に入ったヤマダは電波封鎖を解除。もはや存在を隠す必要もない。

 心に浮かんだ妄言を大音量で吐き散らし、予備電源系をセンサー類に接続。センシング強度をMAX。


 妄言を垂れ流す音響装置スピーカーなどよりも、遥かにやかましい電磁波を大出力で照射。妨害煙の中を照らし出し、なんとか近距離視界を確保。デジタルMAPと突き合わせ、戦闘機動速度を何とか維持する。

 

 同時にBM-KALD-SM123ssのトリガー反応拘束を最低値に設定。羽よりも軽く設定された引き金は、各種センサーに現れる反応全てに即発射状態である。


 現在のヤマダは、揺らいだ雲の影にさえコンマ0001以下の脊髄反射で弾頭をぶち込む、問答無用の殺戮機械キリングマシーンなのだ!


「ヤマダはまた馬鹿なこと言っとるやろー! 聞こえなくても分かるんやからなー! あーーもーーー隠し砲座とか地雷とかは、全部ヤマダが引っ掛かれーー!!!」


 ついで市街に突入したNAKAも、通信妨害でまともに聞こえないからと、好きなように叫んでいた。


 無責任な通信と共に、囮コンビはスラスター全開で市街地の空気をえぐり取る。


 EMP弾頭による電磁パルスが、戦場を漂う煙幕に混じる電磁波反射膜に弾けて砕ける。煙幕の合間に幾筋もの電光が走り、ヤマダの過敏過ぎるトリガーシステムが、奔った閃光の作る影にさえトリガーを引く。


 光学・電子センサーどちらも視界は最悪だが、脊髄反射に電脳の光源演算が追いつき、トリガーは数発引き絞られるだけで済ませ・・・ない。


 さらに追加で行われた画像解析の一部。


 見通しが最悪の4車線道路。その100m前方左下方。「万が一の場合、電光で炙られた機体の影」らしきものを発見。他の噴煙に揺らぐ影よりも、ほんの少し脅威度が高い。


(不審な影の可能性)


 再度トリガーオン。


 立ち並ぶビルの間を超高速ですり抜けながら、後方の下部と左部のスラスターを瞬間開放。

 スラスターから噴出する推進剤の反作用で、速度はそのままに、緩やかな前と右方向への回転ベクトルを獲得する。


 慣性と抵抗と回転ベクトルの融合解を電脳網集積が処理し終える前に、勘を頼りにBM-KALD-SM13ss(サブマシンガン)を持つ腕を射撃位置へ誘導。勘は正しく、電脳が微小な補正を加えるだけでその腕は目標に狙いを定めた。


「なんでも良いから当たってくれよー! 高速移動中に軽機関銃ぶっぱなすと変な回転するし、道は狭いし上に逃げると撃たれるし、反動処理が面倒なんやぞ・・・っと」


 飛びゆく最中も更に電脳網集積は計算を続け、射程や逃走ルートなどを考慮しつつ、デジタルMAP上の機動経路をバンバン修正してゆく。


 ヤマダの右手の中で、既に唸りを上げるBM-KALD-SM13ssの吐きだす弾丸が、遂に不審な影の軌道予測位置を捕らえる。概算によれば必中コース。これが、やっぱりただの光の加減が見せた幻影でなければ、だが。


 コンマ以下の世界。トリガーの隙間。連射される弾丸の3発目と4発目の間。


 影が呼応した。


 EMP弾頭による電磁パルスが引き起こした瞬光で姿を晒したその機体は、やはり敵機。しかも既に、こちらへの迫撃を敢行していた。


 ・・・とんでもない速度で。


 ギィーーーーーーーーーーーーーン”ン”ン”ン”!


 空気を裂く、どころではない。急激な大気圧縮による爆轟が弾丸の軌道すら歪める。


 こんな狭いビルの谷間で音速超過もはなはだしく、こちらの予測速度を遥かに凌駕して。命中する筈だった弾丸すらすり抜けて。


「!? と、特攻機っ!? んな余裕があるとか、聞いとりゃせんのだがーー!?!?   ・・・・・・」

 

 このコースは直撃してヤマダもろともに爆砕、万が一外れた場合は、背後のビルに激突して爆砕(ビルも機体も共にである)する、角度と速度である。


 せめて激突時ゼロタイムに一矢報いてやらん、と電脳網を超過駆。

 緊急冷却材アイスノンの投入を待つまでもない。電脳網集積が溶け出す前にどこまで足掻けるかが、戦機の腕の見せどころである。


 ・・・オーバークロック。高速思考状態の間延びした時間の中で、交差機動を演算し直してみれば、なんと敵機の機動は、直撃ではなく接触ニアミス狙い。近接兵器をこちらに一薙する代わりにビルに激突して果てる、酷い捨身往生の軌道である。


「くあ、流石にそのコースは封鎖しきれんぞ・・・」


 命を張っておいてこんな当て逃げ同然のセコイ機動を取るとは・・・思いもよらなすぎる。流石にヤマダの予測範囲の、外角一杯の外側であった。


 反応が、間に合わない。


 ヤマダが迎撃防御用に廻していたビームトライデント、それを握る右腕の鈍い青灰色に光るC型防盾をもすり抜けて、6脚の敵影から伸びる異様に長大なビームソードが、芸術的な角度でヤマダの胴を撫で斬る。機体表面のセンサーが灼熱を感知するよりも疾く。機体の胴が。爆発する。


 閃光。

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