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SF『自己鍛造弾頭』  作者: 壱りっとる
第三章『非日常』
22/36

『非日常B』4

一旦ポンコツ回終了

でもすぐ再開しちゃう

「『おいお前さんー!!!!』」


「ハイイイー!?!?」


 突然呼びかけられ、ビビッたカズントの機体が大きく跳ねた。


 機体が痺れる。


 短い機生の中でも特に印象的な水没事故の記憶を反芻していたカズントは、その声によって意識を現実に引き戻された。


 ジャミングのせいか、誰何の声は電波と音声の混合である。


 カズントがいるのは暗視機能をONにしないと視界を確保できないような暗がりである。まず見つかるまいと安心していたのだが。


 ・・・よくよく考えてみれば、今は辺り一帯が停電中である。


 当然、皆暗視モードであり、暗視装置を点けた機体が少し見渡せば、工房の角に佇むカズントはすぐに見つけられたのだろう。


 暗く広い工房の中ほどから声をかけてきたのは、騒ぎのせいで破損でもしたのか片腕が曲がっている人型機体(男性M型)である。


 カズントはすぐにでも裏口に戻って逃げ出したかったが、システムエラーによる痺れは今も体を蝕んでいた。


 仕方なくカズントは、四角い頭をヨッコラショと声を掛けてきた人型機体の方へ傾け、(震える声で)何気ない返事をしてみた。


「ナ、ナンデアリマソー? 別に不審ナ整備機ではありませんヨヨヨ?」


「『いや、さっき警察が言ってただろ!』」


「・・・警察っ!?」


 ”警察”その言葉を聞いて心臓(エネルギー伝達中枢)が止まりそうになる。


(警察が言ってた!? ま、まさか・・・もう自分がこの騒動の犯人だってバレたのか!!)


 ガチャァン


 緊張により情報伝達神経が過剰反応。多すぎる危険信号にpinを返しきれなくなった筋肉系がオーバーフロー、痺れとはまた違う震えに襲われたカズントは、尻餅をつくように床へと崩れ落ちる。


 手配を回す警察の声がジャミングのせいで聞こえなかったのかだろうか、はたまたドライバの再更新の不都合で聞き取れなかったのか、それとも、物思いに耽りすぎていたせいなのか・・・。


「い、イヤ違うんです。違うんですよ!?」


 パニックに陥って腰を抜かしたカズントが「いやいや!」と手を振って暴れながら言い訳にもならない言葉を紡ぐ。それを意に介せず、外套が金屑だらけの人型機体がその肩をガッシと掴む。


 捕まった!! 背筋に走る物凄い悪寒。状況打開のために電脳網がフル稼働、背中を通るメイン冷却パイプがフル稼働しているのだ。


 しかし、焦るが機体は動かない。

 

(もうダメだ・・・。ここで捕まって警察に引き渡されて、厳しい取り調べの末に、パーツ単位でバラバラにされて、リサイクルラインに乗せられて、世界のどこにもいなくなってしまうんだ・・・あははうふふ)と、カズントが何かを諦めようとした時、肩を掴む人型機体が口を開いた。


「『ID・トランスポンダー出し忘れてるぞ! 奴ら(警察)・・・マジで撃ってくるからな!?』」


「エエッ? ID・トランスポンダー!? あ、ソウイエバ! 何か遠くで警察の方ガ言ってたような・・・アーハイ!」


 そういえば、裏通りで『警察のそういった宣言』を聞いたような覚えがあった。

 目の前の人形機体は、親切にもID・トランスポンダーの作動を忘れているカズントに、その事を伝えようとしているだけだったのだ。


 カズントは名札を変更して「これでIDを照会されても大丈夫!」と安心したせいで、肝心のID・トランスポンダー---照会信号応答装置。作動させていないと捕縛や破壊される場所や場合がある。工房から殆ど離れない整備機達は、そもそも使わない---のスイッチを入れ忘れていたのだ。


 今はもう警察機にIDを照会されようが何も問題はないのに。

 カズントは気兼ねなくID・トランスポンダーを”ON”にする。


「『おー、点けたか? まあさっきの一発以外に動きはないみたいだから、逃げるなら今のうちか。落ち着いて気をつけてな。いや、テロだ何だと言ってるけど、今一番危険なのは、慌てて逃げ出す奴、警察機構、それと・・・怒り狂う工房主だからな! 注意しろよ!』」


 彼はなにか疲れた様子で話し終えると、隣りにあった整備中の小型レーザーの乗った架台に座りこみ、工房の玄関先をチラと見た。


 カズントも釣られてそちらを見れば、そこにはトーチやハンマーやプラズマカッター、果ては液体噴射装置やらで武装した、ガタイの良い整備機達---見たことのある工房主まで混じっている---が、何故か警察機に捕まって「何してやがるんだこのバカどもが! 紛らわしいっ!!」と、厳しい叱責を受けている姿が見受けられた。


 本当に、何をしているんだ。


「ハ、ハイ、色々と気をつけますデス」


 話を聞いたカズントは、素直にコクコクと頷いた。


「『じゃあ気を付けてな! 警察だかテロのだか知らないけども、ジャミングがかかってるから索敵は音響と光学系に頼って行くといいぞ』」


「ハイ、アリガトウゴザイマシタ!」


 架台の上で片手を振りながら、カメラアイと集音センサーをグルグルして重要性をアピールしてくれている人型機体に、尻餅をついたままぎこちない角度でお辞儀を返したカズントは、抜けてきた痺れを押して立ちあがろうとする・・・。


 が、そこにまたも違う機体から声が掛けられた。


『おう、なにやってんだそんな所で! って、おめえは・・・』


 でかいスピーカーから出ているようでハッキリと聞こえる------、この聞いたことのある胴間声は・・・。 


「イエ、チョット通りすがっただけですんでオ構いなく・・・」


 警察に開放され、表玄関から近づいてきた整備機には見覚えがあった。


 巨大なタンク脚でキュラキュラと滑らかに間合いを詰めてくるのは、知り合いの整備機であり工房長、銘はENGJm-msw-23456 8代村生、通称『オヤジ』さんだ。


 ということは。ここは『村生工房』だったのか。


 暗闇の工房の片隅で、3機の視線や赤外線が交錯する。


『おう、TaNaKaMaん所のカズントじゃねえか。お前ん所の方は大丈夫だったか?』


 ガチャァアン


 立ち上がる途中だったカズントは、またも尻から崩れ落ちた。


「ッッ! ハッ、ハイッ、カズントです! ゴブサタシテオリマス!」


 まあしかし知り合いとは言っても、IDが変わっているので、カズントだということはよもやバレないだろうなどと考えていたのに。


(一発でバレましたーーーっ! なんで? どうして??)


 再び床にへたり込んだカズントは、顔を見られたくないので四角い機体は斜めのままで挨拶を返す。

 

(顔を見られると完全にバレる・・・。って、ああそうかー。IDを変えても見た目でバレバレだこれえ!)


 見知ったオヤジさんなら、IDなんて見るまでもなく自分をカズントと見破って当然である。なにしろ、見た目は全く変わってない。


「『なんだ。この、こけてる整備機さんはオヤジの知り合いだったのか』」


『おう。こいつはTaNaKaMa工房のカズントってえんだ。【Kz】系列なんぞという変わり種だが、立派なやつだぞ! 結構な不具合持ちで「整備機なのに整備に向いてない」ってえ、とんでもな機種なんだがなぁ』


 【Kz】が欠陥機なのは重々承知しているが、他人から聞かされると、こと更に酷い気分になる。カズントの機体の傾きはますます激しくなり、もう地面を舐めんばかりである。


『・・・TaNaKaMaの奴は「カズントは他の奴の倍も働いて、そんな【Kz】系の不利を物ともしない。こいつは立派な偉い奴だ」と、よく話してたもんだ』


「えっ?」


 その言葉を聞いて、『村生工房』の金属の床についた無数の凹みに詰まった金屑を暗視視界のままで偏光分析するといった、無益なことをして現実逃避していたカズントの機体の傾きが、60度ぐらいまで持ち上がる。


 まさか、あのTaNaKaMa工房長が、自分をそこまで買ってくれていたとは思わなかった。


 工房の長にしてはのんびりとしたあの細い顔を思い出し---カズントは、自分がその工房には二度と戻れないことも思い出して---再び身体が傾き、顔が地面と水平になる。もう戻れないのだ。


「『あー。どこの機種も同じか・・・。詳しいことは言えないが・・・・・・偵察に向いてるかどうか怪しい機種なのに偵察機やってるやつもいるからな! ・・・・・・俺だけどな!!』」

 

 架台の上で目をチカチカ、動く方の腕をブンブンして、色々話そうとしていたが、戦機の守秘義務というやつなのだろう、口をパクパクするが詳しくは言葉に出せないまま結論だけぶっちゃけていた。


『大輪・・・お前も不憫なやつだったか。ま、大体見てりゃあ分かったが。おお、そういえばこいつの紹介がまだったか? えー、こっちの戦機はRBYF-19E 大輪だ。ビームカッターばっかり持ち込んでくるうちの客だ。ハッキリ言って、あんなもん使ってるやつはこいつしかいねえ。てか実戦で使わねえのに、なんで毎回持ち込んでくるんだ!? で、さっきも言ったがこっちの整備機はENGKz-msw-10044 カズント。近くの工房の頑張りやさんだ』


 オヤジによる今更ながらの紹介に、人型機と傾いたままの整備機があらたまって挨拶を交わす。とは言っても簡単なもので、お互いの”IDコードを交換”するだけである。


「『[IDコード送信:RBYF-19E 大輪]だ、まあこんな所で紹介しても何だが。次回から虎徹の整備はオヤジをやめてそっちにするか・・・[文末コー

ド:(´ε` )]』」


「あ、ドーモ。[IDコード送信:ENGKl-smss-8003 独]デス。」


 互いに挨拶し、IDコードをピカピカと交換した。? 何か、違和感を感じる。


 ・・・・・・。


(アーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!)


「『あれ? 独さん・・・? カズントさん・・・??』」


『ん? どうした。』


「『いや、IDが違うんだが・・・?』」


『ああん? 大輪おめぇ・・・何言ってんだ? こいつはどう見てもカズントだろう?』


 しかし一応オヤジはカズントのID・トランスポンダーをジロリと一瞥してみた。そこには確かにカズンt・・・”ENGKl-smss-8003 独”と銘が有ったのだ。

 

『・・・おおっ!?!?』


 表通りの喧騒が遠い。暗視視界の中で、3機は互いに顔を見合わせ固まった。

 

 その中で一番最初に口を開いたのはオヤジであった。


『ええー・・・ええーーー? いやいや。お前さん、カズントのそっくりさんだったのか!? ・・・すまん! 見た目がカズントにこれがまったく良く似てたんでな、間違えちまった! いや、本当によく似てるんだこれが』


 普段から押しが強すぎると評判のオヤジである。

 今回も「勘違いのまま話しまくっちまったか!」と謝ってはみたが・・・どうも釈然としない。そもそも、記憶にあるカズントとの違いがよく分からない。


『すまんな。安ものの暗視装置は色味が分かりにくいんでなぁ・・・おお、そうだ』


 少し頭を捻ったオヤジは「ああ、そうか。生の光源ならカズントとの違いが分かるかもしれんな」と、でっかい両腕に据え付けられたアームトーチに点火し、火を噴くそいつを『カズント(仮)』に向けて近づけてみた。


『ちょっと動くんじゃねえぞ』


 シュゴォォォォォォォォォォォォ


 青白い炎の中で見てみても、幾分傷やカスレが増えてはいるが、機体の形も配色も、記憶にあるカズントそのままに思える。


『おう、本当にカズントそっくりじゃねえか・・・こりゃわからねえわなあ』


 「この系統の機体はこのカラーリングがデフォなのか?」などと思いながら、オヤジは更にゴリゴリとカズントヘ近寄ってゆく。


「あわわわワわわワワ」


 暗闇に青白い炎が噴き上がる。

 その光の中で、カズントは機体を硬直させアワアワしていた。


 カズントにしてみれば、突然強面で巨大な整備機が、炎を吹き出すアームトーチを振りかざし『本当にカズントによく似てるんだがなぁ!?』(脳内意訳)と威圧してきたのだ。


 その恐怖たるや並大抵ではない。カズントは蛇に睨まれた蛙のように萎縮し、分けのわからないことを呟き始める。


「ち、違うんです。私カズントなんですけどカズントじゃないんでス。あの、あの、現在起こっている事案につきましては、決して悪気があってやったわけではないんです。生き残るための、仕方ない、あれでして、そっくりさんと言われましても、そりゃそうですというわけで・・・」


武器トーチを振りかざしたオヤジさんに追い詰められている! きっとオヤジさんは自分がENGKz-msw-10044 カズントであると確信したのだ。そして先程のID照会の不手際から、IDを不正に偽っているのがバレたのだ! IDを隠しているのは犯罪者である。だから捕まえて警察に引き渡そうとしているのだ!)


 工房の隅で相手は2機。しかも片方は3機分ほどもある3Lサイズの機体でまさしく壁のようである。


(痺れは収まったようだが。とてもこの2機から逃げられるとは思えない)


 ・・・・・・よし。


 カズントは観念した。


(かくなる上は、もはや一刻も早く自白し罪を軽くする以外に、一介の整備機が取りうる方策はないのだ。・・・儚い逃走劇だった。自白による罪1等減が、今からでも有効ならいいなあ・・・)


 テンパり過ぎな上に、ネガティブな判断が異様に早い。ドラッグが切れかかり、ダウナーな効果が出てきているとは本人は気づいていない。


 一瞬の内にそこまで思考を飛ばしていたカズントの脳内に、久しぶりに指示AIの声が高らかに響いた。


-いや・・・あのー。何だか知り合いみたいだし、危険も無さそうだから黙って見てたんだけど・・・。そんなに思い詰めるんなら、自白しちゃう前に『じゅもん.zip』を使ったら良いんじゃないかなぁ、なんてボクは思うんだけど。アレはこういう時に使うといいよーー-


『お、おう? どうしたカズントのそっくりさん。なんか知らんが大丈夫か?』


 シュゴォォォォォォォォォォォォ


 反応が無いカズントをオヤジが「何だどうしたと」覗き込むたびに、青白い炎を上げるアームトーチが近づいては唸りを上げる。


「『いや、ちょっと待てオヤジよ。もしかしてカズント・・・独さんは、そのトーチに怯えてるんじゃあないか??』」


 大輪とオヤジが周りでゴチャゴチャ言い合っているうちに、指示AIのお陰で正気(?)を取り戻したカズントは、少しばかりの勇気を振り絞って2人に向けて『じじゅもん.zip』を唱えてみることにしたのだ。


 これが何なのかは良く分からないが、今以上に酷い状況には陥るまい。半分以上はヤケクソである。


「あ、あの聞いて頂きたいことがアリマス! オホンッ」


『おう?』


「『ん?』」


 指示AIに言われるがまま『じゅもん.zip』 を展開する。

 その但し書きには『口頭でハッキリと伝えること。電信・レーザーを推奨』とあり、その通りに大きな声(とレーザー通信)で中から出てきた『じゅもん.txt』を唱え、ノートン神に祈りを捧げる・・・。


「〈edrft43e5rt67yuj8~略~iujmik,olu0000jikop@[文末コード:Damass:dtrgkmlolojkp,ctv]〉」



 ノートン神よ我を守り給え。



何かこう、できますれば評価などして頂けましたら、これ幸いと存じ上げ御座候。文末コード:(*´∀`)

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