どこかで会ったキミ。
街を歩いていてふと思う。
「みんなどこへ行くんだろう」と
この一人一人に違う人生がある。
生きる目的も違う。
趣味も容姿もそして性格も違う。
そう思いながら今日もオレは横断歩道を渡っていた。
その時だ。
向かいから来る女性と偶然目があった。1秒いや2秒ほどお互い見つめあった。
あれ、なんだこの不思議な感覚。オレは彼女を知っている??
誰だ誰なんだ…。オレは瞬時に記憶を探る。
いや、ダメだ。思い出せない。でもどこかで…。
気が付くと彼女は雑踏の中に消えていった。
たしかにあの女性とは過去にどこかであったことがある。
でも、どこで…。
「そういや、今日夕方から雨って天気予報で言ってたな」
空を見上げると曇天の空が広がっていた。
早く帰ろうと思いながら、少し早歩きで昨日と同じ横断歩道を渡ろうとした時だ。
「あれ、あの女性…」
向かい側から人々の雑踏に紛れて、昨日この場所で目があった女性が歩いてきた。
「やっぱりあの女性は見覚えがある」
もう一度彼女の顔を見た瞬間、疑惑が確信にかわった。
「よし、話しかけてみよう」
そう決意した時だ。
横断歩道の真ん中ですれ違った彼女がオレに駆け寄ってきた。
そして、彼女からオレに話しかけてきた。
「こんにちは。私のこと覚えてます?」
彼女はぎこちない笑顔を浮かべながらそう言った。
「あ…。すいません。どこで会ったかは覚えてないんです。でも間違いなく会ったことありますよね」
「オレは正直にそう答えた」
「そうですか。でもまた会えてよかった。あの時は助けてくれて本当にありがとうございました」
そう言って彼女はペコリと頭を下げた。
「え…。助けた?この女性を?でも…。オレは覚えてない」
戸惑っているオレを見ながら彼女は話を続ける。
「あなたがまだ小さい頃、猫を助けましたよね?」
猫…。それなら覚えてる。たしかにオレは小学校5年生の時、トラックに引かれそうになった猫を助けた。あの時、ケガをして少し入院したから鮮明に覚えている
「猫を助けた事は覚えてます。もしかして飼い主の人?」
「う~ん、少し違います。でもそんなとこです。あっ…もう時間がないから私はこれで。本当にありがとうございました!」
そう言って彼女は裏路地の方へ走っていった。
オレは急いで彼女を追いかけたのだが、そこにはもういなかった。
上を見上げると、トタン屋根に一匹の黒猫がいた。
黒猫は透き通った眼差しでこっちを見ていた。