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第二話

 〜第二話〜


「お兄ちゃん……鼎ちゃんをけしかけたけどさぁ……真夜さんって本当に鼎ちゃんの事が好きなのかなぁ……?」

「どういう意味だ?」

「あの人って時々すっごく優しい時があるよね? だからお兄ちゃんに振られた悲しみを癒してあげる為に……」

「ははは、いくらアイツが優しすぎるって言ってもさすがにそれはねぇだろうと思うけどな。結果的に余計鼎ちゃんを苦しめる事になるだろう?」

「そっかぁ……じゃあ真夜さんは本気で鼎ちゃんの事が好きって事なの?」

「だと思うんだけどなぁ……実際の所は真夜に直接聞いてみないと判らない事だからなぁ」

「じゃあ聞いてよっ! 真夜さんに鼎ちゃんをどう思っているのかをさ……」

「嫌だっつーのっ! 何で俺がそんな事をしなきゃならないんだ……俺が鼎ちゃんの為にそこまでやる必要は無いねっ」

「夕紀の友達なんだよぉ?」

「それでもだ……」

「じゃあ……夕紀からのお願い。友達の幸せを守ってあげたいの……」

「くっ……面倒……だが引き受けてやろう。勘違いするなよ? 鼎ちゃんの為では無くて、お前の為にやるんだからな」

「えへへ、照れちゃって可愛い〜」

「俺は可愛いとか言われても嬉しく無いんだけど……」

「そぅ?」

「だって男だもん」

「ふぅ〜ん……でもありがとね、やっぱりお兄ちゃんは優しいねぇ〜損する事とか無いの?」

「判ってるなら少しはヤメろや……俺が夕紀のお願いを断れないのを知ってるクセに……」

「えへへ、お礼あげるね」

 夕紀が俺の唇にキスをしてくれた。唇を離したあと、夕紀は顔を真っ赤にして上目使いで俺を見上げる。

「えっと……あまり上手じゃないけど……」

「おま……そんな事されたらお前のお願いを何でも聞きたくなっちゃうんですけどねぇ」

「じゃあ、これからもヨロシクね」

「判った……じゃあ俺は今から真夜に……」

 俺が真夜の捜索に行こうとしたら俺の制服を夕紀がつかんだ。

「どこ行くの? チャイム鳴って無いんだからもっと一緒にいようよ……」

「そうだな……で、何がしたい?」

「うぅ〜んと……お話っ!」

「お話ぃ? 何のお話が良いんだぁ?」

「何でも良いのっ! とりあえずお兄ちゃんが側にいてくれたら……あ、何でも無い、何でも無いからお話〜」

「そっちが本心か……それならそうと言ってくれたら良いのに」

「だって……何か理由が無けりゃ迷惑だもん」

「夕紀が側にいたいって言ってくれるなら充分理由になってるよ……」

「ホントっ!?」

「ウソはつかない……夕紀……俺達はず〜っと一緒にいれるよな?」

「もっちろんだよっ! でも、お兄ちゃんは今、高二だからあと二年もしない内に卒業だから夕紀が高二の後半から高三の間はつまらないよぉ〜」

「この年で進路を気にせずに好き勝手出来るってのは良いよなぁ〜」

「もう進路決まったの?」

「親父達の遺産……じゃなくて、給料とかあるし、俺は自分の工房があるから別に金には困らないし……」

「良いなぁ〜」

「良いなぁ〜って……」

 危ない危ない……そうだった、夕紀も一緒にってのはまだ言って無かったはずだったな。そろそろ言っても良いカモだが……

「夕紀もお手伝いとかしたいなぁ……なんて」

「えっ!?」

「あ、ごめんなさい。そうだよね……夕紀なんかじゃ足手まとい……だよね?」

「いや……そ、そんな事は無いけど……夕紀には夕紀で他にやりたい事は無いのか?」

「夕紀のやりたい事なんて一つだけだよぉ〜」

「じゃ、じゃあお前はそれをやらなきゃダメじゃ無いか」

「夕紀のやりたい事……それはねぇ〜……ず〜っと、ずぅ〜っとお兄ちゃんと一緒にいる事……だよっ!」

「夕紀……」

「えへへ、夕紀を捨てたりしないでね? 夕紀を捨てたりしたら今度は本当に死んじゃうカモだよ?」

「判ってる……俺はお前を捨てたりしないさ……俺だってお前とず〜っと……いや、やっぱり何でも無い……」

「この恥ずかしがり屋ぁ〜」

「うっせぇ」

「夕紀ってうるさいんだ……やっぱりうるさい女の子って嫌?」

「あ、そんな事は無いさ……静かな子よりは自分の事を表現できる様な明るい女の子の方が……」

 軽く泣いていた夕紀が一瞬で笑顔に戻った。ウソ泣きか……

「本当に優しいばかりじゃ損するよぉ〜」

「ぬぅ〜」

「でも嬉しかったかな……」

 夕紀はもう一度俺にキスをする。今度は離さない様に俺は夕紀の背中に手を回して夕紀を抱きしめた。

「ちょっと、お兄ちゃん離してよぉ〜」

「ダァ〜メ……この休み時間が終わるまでは夕紀を抱きしめておくから……」

「むぅ〜この甘えんぼ……」

「甘えんぼでも結構だ……」

 俺はチャイムが鳴らなければ良いのに……とか思いながら夕紀をずぅ〜っと抱きしめていた。この時間が永遠に……と思っていたのだが……

「透弥先輩に夕紀ちゃん、まだいます……か……?」

「お兄ちゃん……後ろ」

「関係ない……この時間は離さないって決めたから……」

 俺は夕紀に小声で呟くと夕紀も『うん……』とうなづいてくれた。


 あとで鼎ちゃんに謝れば……良いよね? 友達なんだから……お兄ちゃんと恋人ってのも判ってくれてるし……


 キーンコーンカーンコーン


「あ、チャイム鳴ったよお兄ちゃん。そろそろ教室に行こうよ……」

「サボろうよ……」

「ダァ〜メ……あのね、高校は理由が無いと授業放棄はダメダメなんだよぉ〜そりゃあお兄ちゃんは時々技術分野で授業を抜けるの許されてるけどさぁ〜夕紀は許されて無いからダメぇ〜」

「お願い……もう少しだけだからよ……」

「お、お兄ちゃん……そんな顔で見ないでよ……ほとんど脅迫じゃん。断れないよぉ……」

「よかった……あ、でもワガママはダメなんだよな? じゃあ……」

 俺は夕紀に一度だけキスをしてから教室に戻る事にした。

「夕紀も早く教室に帰るんだぞ」

「う、うん……」

 夕紀は放心状態のまま教室に帰って行った。大丈夫なのか……


〜続く〜

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