一話
〜第一話〜
俺と夕紀が付き合い始めた数日後の話……
「あ〜あ……結局透弥と夕紀ちゃんは付き合ったのねぇっと」
「やっぱり辛かったりしますか?」
「そんな事はねぇよ……夕紀ちゃんも透弥も幸せになれたんだから友達としては祝ってやらにゃならん訳よ」
「男の子の感情ってよく判らないなぁ……」
「別にお前が判らなくても良いんだよ」
「私も夕紀ちゃんみたいに彼氏欲しいなぁ……」
鼎ちゃんがポツリとつぶやいた。
「別に俺なら鼎の彼氏になってやっても良いぜ?」
「冗談はヤメて下さいよぉ〜失恋したばっかりなんですからぁ〜」
「冗談じゃなけりゃ良いの?」
真弥が真剣に鼎ちゃんを見詰める。
ちなみに、俺と夕紀は定例どおりに中庭にいる。人の幸せを覗き見とは最低な奴だ。が、今屋上はそれどころではなかった。
なぜなら、真弥が本気で鼎ちゃんをおとそうとしているからだ。
ったく……本当はウチの学校の屋上には立ち入り禁止の指定が出ているんだがなぁ……
ま、そんな事は気にしないで俺は夕紀と長く過ごせる事を考えた。
「夕紀……ちょっと移動しようか……」
「何でぇ? 夕紀は別にここにいても良いよぉ〜」
「いや……何だか移動した方が良い気がするんだよ」
「ふぅ〜ん……お兄ちゃんがそう言うなら移動しよっか?」
俺は夕紀を連れて移動した。もちろん俺には屋上の様子が見えていた。真夜が何をしているのかも……
「鼎ちゃんはおちたな……」
「えっ! 鼎ちゃんが落ちるって事は……留年しちゃうの!?」
「違うよ……学年末テストも終わって無いのに留年とかが判るわけないだろうがよぉ〜」
夕紀は納得したように手を叩いてから俺の後ろをチョコチョコとついてきた。
「この辺りで良いかな……ここなら誰も見ていないだろうし……」
話は変わって屋上の二人……
「鼎、俺は本気だぜ」
「真夜先輩……私は透弥先輩が……」
「透弥は夕紀ちゃんの物なんだ……叶わぬ恋より俺の物にならねぇか?」
「私は……たとえ叶わない恋でも良い……透弥先輩を思い続けたい」
「そっか……じゃあ最後にテスト」
そう言うと、真夜は鼎ちゃんを抱きしめた。
「ま、真夜先輩……?」
「ドキドキした?」
「あ、当たり前ですっ! 真夜先輩はいつでも強引なんだから……」
「普通どうでも良い男に抱かれてドキドキするかねぇ? 宣言しよう。鼎は俺を好きになるってな……」
「し、失礼しますっ!」
鼎ちゃんは屋上から走って逃げた。
「はぁ……はぁ……何で真夜先輩なんかに……こんなにドキドキするんだろう……あ、透弥せんぱぁ〜いっ」
「か、鼎ちゃんっ!?」
俺はせっかく誰もいない所で夕紀にキスできそうだったのに妨害された様な気分だった。
「透弥先輩……私は……」
鼎ちゃんが先程の事を全て俺に話してくれた。
「それって真夜の事が好きなんじゃねぇの?」
「え?」
「普通好きでも無い奴に抱かれても嫌だし……」
「透弥先輩は……夕紀ちゃんだったら嬉しいですか?」
「そりゃあ喜んで」
「夕紀もオールOKだよぉ〜」
「っとまぁ……行っておいで鼎ちゃん。君の納得がいく方法でね……」
「はいっ!」
〜第一話続く〜