表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ピヨネラ  作者: 猫姫 花
4/6

魔法の鏡に住む仕立屋


「こん、こん♪ピヨネラ~、遊びに来たよ~」


 とある日、ピヨネラの家にマシューが遊びに来ていました。


「あ。マシューだ」


 玄関まで走ったピヨネラは、嬉しそうに扉を開けました。


 そこにはマシューがいて、今日は花飾りを髪の毛に付けています。


 手には綺麗な花束を持っていて、「お見舞いに」と言葉を添えました。


 実は最近、ピヨネラのお母さんが風邪をこじらせていました。


 お留守番が多くなったピヨネラのために、マシューがお見舞いに来たのです。


「ありがとう。きれーい。花瓶に飾るねっ」


「うん。入ってもいーい?」


「いいよ~」


 手頃な花瓶に水を入れて、花を活けるピヨネラ。


 顔を見せることはできませんでしたが、ピヨネラママから「ありがとう」の伝言。


 マシューははにかんで「分かった」と言います。


 テーブルに置かれたカップに入った植物が面白いと言うと、ピヨネラが笑いました。


「これはパパが考えたの」


「そうなんだぁ。可愛いね」


「うんっ。気に入ってるんだ~」


「他にも何か育ててたりする?」


「シンク周りにキッチンハーブがあるよ」


「なに、それ?」


「バジルとかパセリとかをシンク周りで育ててるの。すぐに使える」


「ほー」


「あと、お庭で家庭菜園をしているよ。私はミニトマト担当なの」


「収穫して、食べる役?」


 ピヨネラは大笑いが落ち着くと、「ちゃんと水もあげてるよ~」と返事をします。


「ウケてよかった」


「ねぇねぇ、マシューに見せたいものがあるの」


「ん?なぁに?」


「魔法の鏡」


「なんですって?どんなの?」


「その中に、仕立屋が住んでるってパパが言ったの」


「ピヨネラのパパは仕事何をしてるひと?」


「アイテム屋だよ」


「なるほど~。今、その鏡、見れる?」


「いひひ。見に行こうっ。物置部屋にあるの」


「楽しみだ」



 移動をして物置部屋の扉を開け、遮光カーテンを開くピヨネラ。


 明るくなった部屋の奥、壁際に姿見がありました。


 マシューが先にその鏡を対面して、じーっと見つめています。


 ピヨネラが言いました。


「実は、魔法の言葉を言わないと出てこれないんだって」


「ほー。住んでるの?誰かが?何も見えないけど」


「『ベクト・バスク』ってひとが住んでるんだって」


 すると少しだけ、魔法の鏡が光りました。


 ぎょっとして身を退くふたりがしばらく固まっていると、何も起きません。


「なに今の・・・?」


「『ベクト・バスク』って言ったら・・・」


 するとまた、鏡が淡く光り出します。


「え」


「えっ。まさかっ・・・」


 マシューが、「一緒に言ってみる?」とうながします。


「うん」とピヨネラが返事をすると、ふたりは息を合わせました。



「「ベクト・バスク」」



 今度こそまばゆい光を放った鏡に思わず目をつぶったふたり。


 まぶたに当たる光が落ち着いたような気がして目を開きました。


 そこには、巻尺を首にかけて指先でいらっているベストスーツ姿の美青年がいました。


「やぁ、僕はベクト・バスク。お呼びかな?」


「「おお・・・」」


「ん?」


「イケメンね」


「思ってた感じとかなり違う」


「そうなんだ?」


 ピヨネラが「ベクトは鏡の中でなにをしているの?」と聞きました。


 するとベクトは、「お客さんを待っている」を言いました。


「「お客?」」


「ああ、大丈夫。君たちからお金は取らないから。魔法を解きたいんだ」


「どうして鏡の中にいるの?」


「昔はお城に使えていた。姫より自分が美しいとぼやいたのが聞こえたらしい」


「ああ・・・それで魔法使いに?」


「そう、鏡の中に閉じ込められた」


 ピヨネラは「かわいそう」と素直に言いました。


「ありがとう。ある程度仕事をしたら、魔法は解けるんだ」


「そうなの?」


「そう。お嬢さんたち、時間があるなら僕の仕立てた服を着ないか?」


「お姫様の服を仕立てていたの?」


「そうだよ」


「ぜひ!」


「マシューはそのままがいいから、別にいい・・・」


「なんで?」


 ピヨネラの言葉は、ベクトの「さぁて」と言ういきごんだ声にかききえてしまいました。


「もっと可愛くしてあげる」


 鏡が光ってたんぽぽの綿毛みたいな輝きがピヨネラを包みます。


 やがて光は小さくなって、いつの間にか消えていました。


 光の螺旋と共に、ピヨネラの服はベクトの『仕立て魔法』で変わっています。


 マシューが「わぁ」と感嘆。


 ピヨネラは首元に赤いリボンが結んである淡い桜色のワンピースを着ています。


 靴も桜色のローブーツです。


「すてき~。素敵だと思わない?」とベクトは言います。


「すっごーい。魔法ってすごーいっ」とピヨネラ。


「かっこいい魔法ね」とマシュー。


「だろう?」とベクトは嬉しそうに笑いました。


「時々、お願いしてもいーい?」とピヨネラ。


「もちろんだとも。仕事をすれば魔法は解けて鏡から出れるからね」


「分かった!マシュー、あっちの部屋で遊ぼうよ」


「うん。じゃーねー、ベクト」


「うんうん」


 手を振っている場面で、ベクトの姿はいつの間にか見えなくなっていました。


 物置部屋から出たふたりは、一緒にクッキーを焼いておやつの時間。


「ピヨネラは好きな男の子とかいる?」


「えっ・・・」


「あ。いるんだ?」


「えっ。うん、あの・・・オオカミ君が気になってるの。秘密にして?」


「分かった、分かった」


「どうして急にそんなこと聞いたの?」


「オオカミ君に、聞いておいて欲しいって言われたから」


「えっ。どういう意味っ?」


「そうねぇ。今度、オオカミ君に、この美味しいクッキー焼いてあげたら?」


「えっ・・・」


「あ。顔がりんごみたいで可愛い」


「もうっ」



 楽しい時間はあっという間に過ぎ、夕暮れ前。


 また遊ぶ約束をして、マシューは帰って行きました。


 大丈夫かな、と思いつつ少し様子を見ていたピヨネラ。


 遠目に、物陰から出てきたコーカを見つけて、思わず微笑んだのでした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ