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ピヨネラ  作者: 猫姫 花
2/6

ウルフさんに甘くないクッキー


 とりあえず魔法の森に向かい直したピヨネラとマシュー。


 話題はバスケットの中のクッキーの話になりました。


「バスケットの中にたくさんクッキーがあるから、少しわけてあげるわ」


「え、嬉しい」


「でもね・・・」


「なぁに?」


「甘くないの」


「クッキーが甘くない?なにがあったの?」


「ウルフさんにお届け物で、疲れたら少し食べてもいいように多めに作ったの」


「ウルフ・・・?」


 バスケットのふたを開けて、中身が無事なことを確認するとクッキーを渡す。


「まずはおひとつ、いかが?」


「じゃあもらおうかなぁ・・・甘くないクッキー?」


「甘さ控えめ、ってわけでもないの」


 少し考えた様子で手に取ったクッキーの香りをかいでみるマシュー。


 おもむろにそのクッキーを口の中に入れて、食べ始める。


「あ、サラミとチーズだ!」


「ご名答」


「あ、あと黒胡椒も入ってるでしょ!これ美味しいな」


「うふふ。じゃあ少し包むね」


「わ~、ありがとう」



 ラッピング用の小分け袋を持っていたらしく、渡されたマシューはご機嫌。


 ピヨネラは幼い姿として低身長だが、マシューはその腰ほどに届かない身長。


 ふたりは楽しそうにお喋りをしながら歩いています。



 そして魔法の森の入り口前の、花畑・・・


 そこに、美男子が眠っていました。



 顔を見合わせるピヨネラとマシュー。


「「なんでこんな所に?」」



 黒い制服を着た美男子は鞘に入った剣を持っていて、花畑の中、眠っています。


 ピヨネラとマシューには倒れているように見えたようで、心配中。



「声をかけてみようよ」


「いきなり攻撃とかされたらどうしよう・・・?」


 小声で相談をしているふたりを前に、うっすらと目を開けて、しばたく美小年。


「・・・何?何の生き物?」

 

「わたしはピヨネラ。こちらはマシュー」


「僕は魔法の森の精霊だよ」



「バスケットの中身、何?」


「もしかしてお腹がすいているの?」


「・・・多少」



 ピヨネラは、こんなにたくさんあるんだから少しくらいいいよね、と独り言。


 バスケットの中の甘くないクッキーを15枚ほどおすそわけする。


「これ美味しいな」


「そう言えば、あなたのお名前はなんと言うの?」


 少しの間視線があって、凛とした顔立ちの美小年は「僕はオオカミ」と言った。


「オオカミっ?嫌だ、怖いっ」


 苦笑する美小年は花畑の花を一輪積むと、ピヨネラに差し出しました。


「怖がらせてごめん。今手持ちがないので、これで」


「あなたは人間に変身したオオカミなのっ?」


「違う、違う。僕の通り名だ」


「じゃあ・・・オオカミ君?」


「んん~・・・まぁ、それで、いい。オオカミ君は迷いの森に用事があるんだ」


「それなら、最初の分岐路の右側は、墨になった木でいっぱいよ。気をつけて」


「ありがとう。美味しいクッキーも。もう行くよ」


 手をふって軽く挨拶をして、迷いの森に姿を消していく黒髪の美小年。


 姿が見えなくなった頃、ピヨネラとマシューは魔法の森へ。


 可愛いお花が時折キラキラと光っていたりします。


 木々の葉の水滴も、光を宿してキラキラ。


 ピヨネラが言いました。


「なんて綺麗な場所なんだろう?」


「魔法の森はいいところ」


「でも・・・あんなに綺麗な目をしている男の子、初めて見た・・・」


「・・・ほ~・・・」


「なんだろう、この気持ち?」


「オオカミに恋をしたの?」


「まさかっ、そんなはずはなくってよ」


「じゃあ・・・なに?」


「分からない・・・」



「うーん・・・そう言えば、どこにクッキーを届けに行くって?」


「ウルフさんのお家に」


「オオカミ?」


「ううん。ウ・ル・フ。今日は親戚のひとが来るんだって」


「だから甘くないクッキー?」


「そう、あ、あっちの角を曲がって少し進めばウルフさんのお家だよ」



 駆け足になって十字路の角を右に曲がり、しばらく進むと家がある。


 その玄関先の花壇でハーブの手入れをしていたのは、ウルフさん。


「はぁい、お嬢ちゃん」


「ウルフさん、こんにちは。ちょっと数が足りるか分からないけど甘くないクッキーです」


「おや、何かあったのかな?」


「途中でオオカミさんにクッキーをあげたの」


「もしかして黒い制服の?」


「そう。綺麗な目のひと」


「ほ~・・・あいつは確かに、目に灯る光がひととと違う感じはするけど」


「ウルフさんはオオカミ君のことをご存じなの?」


「ははは。親戚だよ。オオカミ君の、ね」



 不思議そうに首をかしげたピヨネラ。


 マシューが「なるほどなぁ」とぼやく。


「どうしたの、マシュー?」


「ウルフさんのニックネームは、多分『オオカミ』なんだろうに」


「ええっ?」


「ははは。そうなんだよ。ウルフは別の字で『オオカミ』と言うこともある」


 長い黒髪を後ろでひとつにまとめていたウルフさんは、大きな丸眼鏡をかけている。


 クッキーをもらったあと、ちょっと待っていてね、と言われて待機。


 玄関の扉が再び開くと、彼女は薬酒を示した。


「はい、薬酒と交換」


 もらい受け、バスケットの中に薬酒を入れると「はい、たしかに」とピヨネラは言う。


 笑うウルフさん。


「気を付けて帰るんだよ」


「うん!」


「それからオオカミ君とやら、また会ったら仲良くしてあげてね」


「はい!」



 それから少し、もじもじしていたピヨネラに気づくウルフさん。


「ん?どうしたの?」


「あの、ね、あのね、ウルフさん、髪の毛の縛り解いて、眼鏡はずしたら可愛いと思う」


「えっ・・・ほ~・・・ははは。ありがとう。今度のパーティーの時の参考にするよ」


「うんうん。コンタクトレンズ、って言う、人魚のうろこがあるらしいから」


「ふふふ。もう知ってるんだね。人魚のうろこ」


「はい!あのっ、もう、帰りたいです」


「うんうん。もうお帰り」


「うん!マシュー、行こう?」


「え、うんうん。あっちのお花、ラブリーだよ~」


「今日はもうお家に帰らないと。だいぶ時間を使ってしまったわ」


「そっか~。魔法の森にまたおいでね、マシューそこらへんにいるから」


「そうなんだ・・・いつ来れるか分からないけど、またね!」


「うん、またね!」



 そうしてピヨネラはマシューと出会った初日、ママからのをお使いをかなえました。


 無事に帰ってきたピヨネラは甘いクッキーと冷たいミルクにご機嫌。


 なによりお届け物ができた達成感が、彼女をにこにことさせていましたとさ。



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