魔法の森のマシュー
「ひー、ふー、みー、よー・・・それから何だっけ?」
ぷるぷるつるつるとしたクリーム色の身体に、つぶらな瞳、カウボーイハット。
魔法の森の精霊である『マシュー』は、その隣の迷いの森に入っていく少女を見つけた。
「あぶないっての!」
急いで追いかけて行くも、道しるべの看板は違う方向をむいていた。
それを直している間に少女を見失ったマシューは、しかたなく少女を助けるために迷いの森の中に入って行った。
◇◇◆◇◇
ピヨネラは七歳の、天然波のある長い金髪を持っている、女の子。
目の色は茶色で、ワンピースドレスにタイツ、履き心地のいいパンプス姿。
今日は赤いチェックのワンピースなので、頭には同じ色柄のリボンをしている。
片手にさげているのはバスケットで、中にはたくさんのクッキー。
「あら?分岐路?ちょっと右のほうが薄暗い・・・曲がってみよう、っと」
その頃マシューは、長いまつげのあるつぶらな瞳をぱちくりとしていました。
「おかしいなぁ・・・風に乗ってお花みたいな香りの気配はするけど・・・」
まさかなぁ、と分岐点の左のほうの先で立ち止まるマシュー。
「気配は右から・・・ちょっと行ってみるか・・・危なそうっ」
薄暗いその細い道は、炭化した木々が時々揺れて、粉墨が舞っています。
ピヨネラは何があったのかしら、と空想中。
「ドラゴンが火を噴いたとか・・・?」
しばらく進むと大小の岩に道ははばまれて、行き止まり。
少し残念そうに道を戻ったピヨネラと、マシューが鉢合わせ。
「あ、いたっ」
「向こうは行き止まりだよ。墨の粉でお洋服も黒くなっちゃった」
「僕はマシュー」
「私はピヨネラ」
「そう言えば、ここは『迷いの森』だよ?」
「ええっ!?パパとママに入ってはいけません、って言われてるところだっ」
「危ないから一緒に出よう?」
「ありがたいわ」
分岐点まで戻ったピヨネラとマシューは、迷いの森の入り口付近に来ていました。
「お洋服・・・汚れちゃった」
「魔法は使えないの?」
「まだ目覚めてないって」
「なるほどなぁ~・・・粉墨で息をするのも危なそう」
「あっ。魔法札のついたアイテムなら持っているよ!」
「なに、魔法札って?」
「ブランドだよ」
「高級系なの?」
「うーん・・・値段はよく分からないけど、魔法力がないひとも使える魔法アイテム」
「そんなのあるんだ!?面白そう。今持ってるの?」
バスケットの中から、小さな箱に入ったネックレスを取りだしたピヨネラ。
それを装着してみると、空気中に小さく光がキラキラと輝きました。
ピヨネラは「魔法のネックレスよ、叶えたまえ」と言う。
するとネックレスの石が淡く光り、その光が螺旋を描いて登り消える。
「おお、すごい!」
墨粉が綺麗になって、元の状態に戻ったピヨネラは微笑む。
「はじめて魔法を使っちゃった!」
「制限はあるの?」
「よく分からないけど、アイテムによって回数は決まってるみたい」
「そうなんだ・・・1回限りとかもあるの?」
「それはパパに聞いたことがあるわ。1回限りのものもある、って」
「ほ~・・・今度調べてみーよおっと」
「一緒に歩いてくれてありがとう」
「いいよ、いいよ。可愛い子をほおっておけなかっただけ」
「お上手ね」
「ははは」
魔法の森付近の空は、冴えている青空だった。
花畑の花が、心地よい風に揺れて、まるでふたりを祝福していたとさ。




