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初級魔法しか取り柄がない!!  作者: なるっち
2章 エルフの里編 ― 世界樹の問い
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第51話 ブサイクだけど

「いい? 身体強化ってのはね――」


ラグナが、根の上で軽く足を開く。


「“びゅっ”って力を集めて、“バーン!”って踏み出すの」


自分の胸のあたりを、指でとんと突き、

次の瞬間、地面を軽く蹴った。


どん、と土が鳴る。

一歩で視界の端まで滑った。


「簡単でしょ」


戻ってくると、今度は腕を振りの見本を変える。

動きには一切の無駄がない。


エリュナは、横でこくこく、うなずいていた。


「お母さんの、“びゅ”ってして“バーン”。

 森の戦士たち、みんなこれで覚えた」





「これじゃわからんだろう。言葉で説明する」


リュシュアがしゃがみ込み、

地面に簡単な図を描いた。


胸の中心から、四肢へ伸びる一本線を指先でなぞる。


「全身持続型の身体強化は、

 ここの太い線に魔力を通して、全身を押し上げる」


「だが、お前はそれができない」


リュシュアは、あっさり言う。


「じゃあ、俺は、どうやれば——」


言いかけたところで、ラグナが割り込む。


「だ、か、ら〜。

 ここから、“バーン”って飛ばせばいいじゃない」


ラグナは、俺の胸をつつく。


「飛ばすって、なにを、どこに、どうやってですか」


「知らないわよ。そこはあんたの変な発想の出番」


軽く言うな、この人。


「そ、そんな無責任な」


「無責任じゃない」


「魔力核はちゃんとある。魔法点もある。

 ごちゃごちゃ考える前に、

 まず一回“バーン”ってやってみな」


「さっき、考えろって言ってたの、誰ですか」


ラグナは、じろりと睨む。


「できませんって顔見てると、正直、殴りたくなるのよね」


「理不尽すぎません?」


「半分は本音よ」


エリュナが、くすっと笑った。

 



 

森の開けた場所。


根と土が入り混じった足場の上で、俺は深く息を吸った。


「じゃ、やってみます」


ラグナが少し下がり、腕を組む。

リュシュアは木にもたれて、黙って見ている。


エリュナは、その隣で目を閉じ、

俺の中のマナの揺れを追っていた。


飛ばすなら、《エアーパレット》だな。


「マナを魔力核から、直接魔法点へ——

 狙って飛ばす」


自分に言い聞かせるように、口に出す。


胸の奥——まだ熱の残る魔力核に、意識を沈める。


イメージを固めて、胸から足首へ向かって、

マナの小さな球を撃ち出す。


——すう、と何かが移動する感覚。


足首の内側が、ほんのり温かくなった。


「……?」


ぬるい感触。

ただマナが動いただけで、魔法は発動しなかった。


失敗だ。


あれ、俺、今までどうやって魔法使ってたっけ……


頭の奥で、いくつかの組み合わせが浮かぶ。


《ヒール+ウオーター》。

《ストーン+エアーパレット》。


統合してから、流してた。


……そうか。


もう一度、胸の奥に意識を沈める。

焼けた線の残骸から、ゆっくり探る。


「……あ」


そこに、懐かしい感触があった。

統合線。その根本の点——


「……まだ、生きてる」


「組み立てられるのか」


リュシュアが問う。


「はい。

 《統合点》から《エアーパレット》でマナを飛ばす。

 届いた瞬間、《スコーチ》で火を入れる」


「一瞬の圧と熱で代謝を上げるってことね」


ラグナが、にやっと笑う。


《瞬間ブースト》


そう名前をつけた瞬間——

俺の頭の中で、何かが噛みあった。




 

深呼吸。


魔力核。

《統合点》。

右足首。


イメージを、ひとつにまとめる。


《瞬間ブースト》


――次の瞬間。


足首の内側で、

小さな爆発のような感覚。


「今!」


地面を蹴る。


世界が、跳ねた。


足が勝手に出る。


次の瞬間、腰が跳ねる。

ありえない角度に折れる。


体が、順番に裏切る。


そして——


「うわっ——!」


視界が斜めにひっくり返り、

俺はそのまま地面に突っ伏した。


べしゃ。


……沈黙。


ラグナが、腕を組んだまま呆れ顔で言った。


「なに、そのブサイクすぎる身体強化」


エリュナは、俺の体の内側をじっと見ている。


「……一箇所の点に、マナが集まりすぎてる」


リュシュアが、静かに言った。


「だが、できたな」


胸の奥が、少しだけ熱くなる。


世界はまだ歪んでいる。

体は、思い通りに動かない。


それでも――


一歩、踏み出せた。


俺は、土を払って立ち上がった。


「型としては、まだ粗い」


リュシュアが続ける。


「無駄な力も多い。

 上半身との連携も取れていない」


「だが、方向性は間違っていない」


ラグナが、にやっと笑う。


「つまり、ブサイクだけど有望ってことね」


アザだらけ。

ヒリヒリする。

でも、嫌な痛みじゃない。

不思議と、悪くない気分だった。


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