35 エピローグ
それから半年が経った。
それはとても長くて短かったように思えてくる。
私の予想通り、国中は大変な騒ぎになった。
エフィン公爵家の財力はブラジェク伯爵の資産だったことを国が発表したからだ。
そしてエフィン公爵家の事業の失敗や夫人の散財で作られた借金をブラジェク伯爵に押し付けていたことも。
だが、国中が騒ぎになった理由はそれではなかった。
なんと、ウェルタ侯爵の息子アロイドが薬物を使い、エフィン公爵夫人に取り入り、夫人を通じて貴族夫人たちに薬物接種をさせていたことだ。
幸いなことに公爵夫人を含む薬物を接種した人たちは軽症だったようだが、夫人がアロイドの進言で貴族たちを襲撃したため、襲撃された貴族との関係性もしっかりと捜査されたようだ。
エフィン公爵夫人と関係のあった夫人たちは被害者として名前が挙がったのはいいが、同時に自分たちの痴態もばれてしまったのだ。
貴族社会は蜂の巣を突いたような騒ぎになったのは言うまでもない。
当のエフィン公爵はというと、前エフィン公爵が書類を偽造し、国を騙していたことや港から得る収益、危険な薬物の流通や使用していたことを知っていた。
父がしたこととはいえ、罪は無くならない。それに夫人の罪もある。
本人は罪を犯していないということもあり、マルド陛下は彼に「爵位剥奪の上、十年の強制労働か毒杯がいいか」という選択肢を与えた。
エフィン公爵は毒杯を選び、貴族牢の中で静かに息を引き取った。
エリザ夫人はというと、貴族たちの面子を保つためということもあって、彼女は王都の広場で公開処刑された。
「私は悪くない。アロイド様の指示に従っただけ」と最後まで繰り返し発言していた。
アロイドという男について私は詳しく知らなかったのだが、どうやらウェルタ侯爵の息子だったようだ。彼の生い立ちも、どのようにして過ごしていたのかも全て謎のままだ。
父から話を聞いてみたが、やはり彼の出生については知らないらしい。
薬物の流通経路などの関係もあって公表ないのかもしれない。
ブラジェク伯爵家はというと、翌月からメルロワード国からのお金が振り込まれるようになり、もちろん借金の返済もなくなったことでようやく一般的な伯爵家の水準までの暮らしができるようになった。
もちろんノール男爵家からの出費は回収した上でだ。伯爵が立ち上げた商会も大幅な黒字になっている。
ブラジェク伯爵家が持ち直したことでデメリットも出てきた。
それはロイ様が学院で令嬢たちに声を掛けられるようになったことだ。私と出会ってからも声は掛けられていたのだが、伯爵家に借金がなくなった途端に様々な人たちが押し寄せてきたのだとか。
私は当然卒業しているので学院内でロイ様に近づく令嬢たちを牽制することはできない。
ロイ様はあと半年で卒業だ。
ロイ様に少しでも取り入ろうとする人や婚約者にと目論む人たちもいるようだ。
ロイ様は人の裏を沢山見てきたせいか、あまり快く思っていない。
ただ、笑顔で対応はしているようだ。
私はというと、商会が繁盛しはじめて手が足りなくなってきたので、伯爵家に入り、教育に力を入れている。もちろんお義父様やお義母様との仲も良好よ。
たまにエリオット陛下やギリン兄様から「息災か」と手紙が届いている。
「改めて。フラン、一目合ったその時から君の魅力に心を奪われた。借金まみれの僕に優しく手を引いてくれた天使。どうか僕と生涯をともにしてください。君を必ず幸せにすると誓うよ」
「嬉しい。私もロイに会った瞬間に感じたの。ロイとなら私を幸せにしてくれるって。愛しているわ。他の誰よりも」
【完】
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