34 謁見
「お父様!」
「父上」
「フラン、無事でよかった。ロイ君も怪我はないか?」
「ノール男爵のおかげで問題なくここまで来ることができました」
私たちは物々しい状態のまま王宮前に到着した。
出迎えてくれた父とブラジェク伯爵とともに王宮内に早足で入る。
数日前に襲撃を鎮圧して以降場内の警備は物々しい。警備に当たっている騎士たちもどこかぴりぴりとした雰囲気だ。
「書類はちゃんと持ってきたか?」
「はい。ここに」
ロイ様が脇に抱えた書類の入ったケースを見せると、父は頷いた。
「ではこのまま陛下のもとへ」
私たちは父に連れられて陛下の待つ部屋へと向かった。
「マルド陛下、娘を連れてまいりました」
「うむ」
私たちが連れてこられたのは客室のような部屋だった。新たな襲撃を警戒しているのか警備をしている騎士も多い。
部屋にはマルド陛下と宰相と関係している大臣がいた。ロイ様が陛下へ挨拶をしようとすると、陛下は堅苦しい挨拶はいらないと手を挙げた。
「ブラジェク伯爵子息、早速だが、メルロワード国のエリオット陛下からの書類を渡してくれ」
宰相の言葉にロイ様は頷いた。
「はい、ここに」
ロイ様はケースを騎士に渡すと、騎士は慎重にケースから書類を取り出し、陛下に手渡した。
「……ふむ」
マルド陛下は書類を受け取り、目を通していると、みるみるうちに眉間に皺がより、怒りの表情となった。
「メルロワード国のエリオット陛下の直筆のサインに間違いはない。これは、二国間で戦争が起こってもおかしくない。エフィン公爵は戦争をさせたいのか!」
宰相は陛下から書類を受け取り、目を通して大臣たちにも回していく。
「ウエルタ侯爵の残党か。エリザ夫人を捕まえた時にうわ言のように言っていた名にも関係がありそうだ……」
するとブラジェク伯爵が口を開いた。
「陛下、メルロワード国の書類にも書かれている通り、我が家の収益は全てエフィン公爵に奪われたもの。そしてエフィン公爵の借金は現在まで我が家に書き換えられておりました」
「そうだな。父の代の話とはいえ、メルロワード国のことを全てエフィン公爵に任せきっていたのが悪かった。エフィン公爵の資産を全て没収し、ブラジェク伯爵が返してきた借金も帳消しにする。ブラジェク家へ公爵家が受け取ってきた収益を付け替える」
「有難う御座います」
陛下の言葉に私たちは礼を取った。
ようやくロイ様は、ブラジェク家が借金から解放された瞬間だ。
「エフィン公爵についてだが、襲撃もあり、まだ取り調べが終わっていない。どうやらエフィン公爵夫人の起こした襲撃も裏がありそうだ。全ての事件が解決するまで今しばらく待っておいてくれ」
「承知いたしました」
私たちの役目は無事に終わった。
あとは陛下たちが動いてくれるだろう。
私とロイ様は父たちと共に陛下たちのいる部屋を後にした。
「無事に書類を届けることができてよかったわ」
「ああ、お前たちのおかげでメルロワード国との関係も維持できそうでよかった」
「なぜエフィン公爵一人に任せっきりにしていたの?」
「それは当時の陛下にしかわからんが、何らかの薬物で陛下の判断が鈍っていたような話もあったな。私は年寄すぎて耄碌したのだと思っていたが」
「そういう話も出ていたな」
父たちの言葉に私は思った。
イェシュティア国の陛下もまたウエルタ侯爵が使用していた薬物が使われたのかもしれない。
もしエフィン公爵家から貴族に薬物が回っていたとしたら大問題よね。国中大騒ぎになりそう。
「父上、我が家の借金がなくなってよかったですね。これでフラン嬢に好きな物を気兼ねなく買える」
「ああ、そうだな。幸いなことに商会の方も軌道に乗ってきた。エフィン公爵家の持っている商会は取り潰しになるだろうから我が家は更に忙しくなる」
「さて、まだ残党が残っているかもしれないから我らも早く王宮から立ち去りましょう」
「そうだな」
「では、ロイ様。また手紙を書くわ」
「ああ、フラン嬢。僕も書くよ」
私たちは王宮の馬車停まりの前で別れ、久々の自宅へ戻った。
「アーシャ、疲れた。当分は家でゆっくり休みたい」
「お嬢様、お疲れ様でした」
アーシャは私好みのお茶を淹れてくれる。
メルロワード国はやはり懐かしく感じた。
ギリン兄様にも会えてよかった。
両親には本当に心配をかけたと後悔はするけれど、こうして生まれ変わったもの。
前世の後半は幸せとは程遠かったけれど、今はおつりがくるほど幸せだわ。




