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男爵令嬢の記憶が交差する  作者: まるねこ


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20 ブラジェク伯爵との商会立ち上げ、公爵家の話(伯爵視点)

 ここはノール男爵家のとある一室。


 私はノール男爵から呼び出され、こうして男爵に会いに来た。


 彼はいくつもの大きな宝石の付いた指輪を指に嵌め、大きな机の前に座っている。いつ見てもその姿は悪徳金貸しのような姿だ。


 私は借金を彼に肩代わりしてもらっているため、大きなことは何も言えないが、彼がとても情に厚い人物だということは知っている。


「ブラジェク伯爵、我が男爵家としてはいつまでもおんぶに抱っこというわけにはいかないのですよ」

「……ノール男爵、すまない」


 従者が「どうぞ」と私にソファへ座るように勧め、お茶を出してくれる。


「いやいや、謝罪はいりません。うちの大事な娘を伯爵夫人になるのです。これからはそれ相応の収益も必要になりますからな」


 ノール男爵は卑下た笑いを浮かべているように見えるが、娘思いのいい親なのだろう。


「だが、我が家に残されたものは借金以外何もない」

「前ブラジェク伯爵は隣国に多大な支援を行っていたようですな。あちらの国の特産品にも目を付けていた」

「ああ、だが父は殺された」


「伯爵はどこまで知っておられるのです?」

「何のことかな?」

「エフィン公爵はブラジェク伯爵が持つ港の使用権や交易ルートを奪ったことをですよ。それに加え、いまだあちらの借金を押し付けられている」


 私は男爵の言葉にぎょっとして周りを見渡した。


「ここにいる者にエフィン公爵の息のかかった者はおりませんので安心してください」

「……父が殺されたことも大分あとで知ったのだ。エフィン公爵は書類を偽造し、我が家に全て押し付けたのだ。私が知ったのは全てが終わった後だった」


「国には言わなかったのですか?」

「当時のエフィン公爵から脅されたんだ。私もまだ十代でまだ若かった。今考えればもっとやりようがあった。今でも悔しくて仕方がない」


「キャロライン・エフィン公爵令嬢はロイ君を気に入っているようだが、彼はキャロラインと婚約させなかったのですかな? その方が借金も消えて家も安泰だったはずです」


「偽造した書類を私やロイが手にするのを警戒しているせいだろうな。残念ながらキャロライン嬢はあまり賢くない。


 こちらとしても我が家を陥れた家の娘をロイの妻に迎えたくもない。我が伯爵家を潰さないのも偽造がばれるのを恐れているからな。そのために伯爵家を潰さないよう最低限の金を出している」


「……ふむ。やはりそうでしたか。我が家がブラジェク伯爵家を支援しようと思ったきっかけは他家からの情報でした。


 我が家にお金と引き換えに情報を持ってくる貴族もおおいのですよ。他の貴族もエフィン公爵が絡んでいることは分かっているが、口を出せない状況でしてね。


 我が家としても伯爵家がただ借金を重ねているだけなら見向きもしなかったんですがね」


「ノール男爵には本当に感謝している」

「こちらとしては問題ない。掛った費用は全て回収しますから。で、借金の返済のために今日は伯爵をお呼びしたんですよ」


「借金、返済できる方法があるのだろうか」

「エフィン公爵の借金ですがね。伯爵家はもともと隣国との交易品の流通事業を行っていた。ルートや品は公爵家に取られましたが。新たに隣国の商品を取り扱う商会を立ち上げるのはどうでしょうか。資金はもちろん我が家で持ちます」


「商会か。確か父の代で商品に携わっていた者はまだ何人か残っているはずだったな。だがエフィン公爵から横やりが入るのではないか?」


「借金を返すためだと言えば相手も邪魔できない」

「あとは商会の中にエフィン公爵の手の者が入らないようにしなければなりませんな。ここが一番大変だ」

「確かに」


「商会が軌道に乗るまで我が家の次男を手伝に向かわせます。フランは女として家の奥に閉じ込めておくような娘ではない。どう使うかは伯爵やロイ君次第だが」


 執事が頭を下げ、人を呼びに行ったようだ。


「父上、お呼びでしょうか」

「ブラジェク伯爵、次男のアモイだ。アモイ、しばらくの間ブラジェク伯爵の立ち上げる商会の手伝いをしてくれ」


「ああ、構わない。ブラジェク伯爵、よろしくお願いします。俺は主にお金に関することをお手伝いすることになるでしょう。フランは人心掌握に長けている。我が家で育てた孤児たちを連れていくことになりますが問題ありませんか?」


「もちろん構わない。こちらとしても助かる」

「わかりました。準備出来次第すぐに伯爵家へ向かいます。では父上」

「ああ、アモイ頼んだ」


 彼はそう言ってすぐに部屋を出て行った。


「うちの子供たちは優秀に育った。我ながら鼻が高い」

「ロイはフラン嬢を一目見て恋に落ちたようだ。いつもフラン嬢の話をしている。本当に素晴らしい令嬢だ」


「フランは気が強くて、男勝りな部分がある。そのせいでなかなか婚約者が見つからなかったのです。ロイ君は好青年でこれからが楽しみだ。フランもロイ君に好意を持っている。二人の仲が良いことはいいことだ。これからが楽しみですな」

「ああ、二人には期待したい」


 そうして伯爵家は借金返済のため、商会を立ち上げることになった。


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