17 フランの利き茶
「フラン様、お茶の準備が整いました」
「ありがとう。では始めましょうか」
晴れて心地よい日差しの中、私は見習い侍女たちを連れ、中庭へとやってきた。彼女たちはアーシャの指示に従いながら動いている。
アーシャは見習い侍女たちに見せるように私にお茶を淹れた。
「お嬢様、どうぞ」
「これはカーディス領産の茶葉ね。春のような爽やかな香りがするもの」
「正解です」
アーシャのお茶の淹れ方を真似しながら見習い侍女の一人がお茶を淹れ、私はそれを口にする。
「二度目にしては上出来よ。とても茶葉の甘みが引き出されている。これはナローザ国のカルドーゾ産のお茶ね」
「正解です」
侍女は少し笑顔を見せ、次の見習い侍女に変わった。私はまた同じようにお茶を口に含む。
「……少し苦みが出ているわ。温度が高かいようね。焦らなくてもゆっくり抽出すればいいのよ。そうね、これはカルディット茶ね」
茶葉から出る苦みで当てるのが難しいわね。
「せ、正解です」
見習い侍女は私に怒られると思ったのか今にも泣きそうな顔をしている。
「貴女、名前は?」
「ミラです」
「ミラ、大丈夫よ。落ち着いて。今は練習よ。ここでいっぱい失敗してちょうだい。練習を重ねれば問題ないわ」
「は、はいっ。お嬢様、ありがとうございます」
こうして私は五名の見習い侍女のお茶を飲み、茶葉を当てる『利き茶』をよく行う。
我が家は教会で育った孤児たちを見習い侍女や従者に引き上げて教育を施している。
ここで基礎を覚えた侍女や従者は下位貴族へ就職することができる。彼らにとって良い就職先を見つけるためには必要なことなの。
本来なら貴族自ら見習いに教える必要はないが、我が家は昔からこうだ。そのためかは分からないけれど、男爵家に就職する従者たちの忠誠度は極めて高い。
この考えは他家でも見習うべきだと思っているわ。
アーシャはたまに他家の従者たちから話を聞くことがあるのだが、貴族によっては給料が出ないところや使用人を鞭で打つ家もあるのだとか。
忠誠心の高い従者や騎士たちは何物にも代えがたいと思うの。
「お嬢様、そろそろ日が落ちます」
「そうね。寒くなってきたし、今日はこの辺で終わるわ。みんなもよく頑張ったわ。次回もよろしくね」
「「「フランお嬢様、ご指導有難う御座いました」」」
私はアーシャを連れて自室に戻った。
「アーシャ、あの子たち頑張っていたわね」
「お嬢様に良いところを見せたいと張り切っていましたが、まだまだですね。あとできっちりと指導しておきます」
アーシャの言葉に私はくすりと笑った。
アーシャは私専属の侍女だけど、こうして新人教育もしっかりとこなしてくれる優秀な侍女だ。ついつい私もアーシャに頼ってしまうもの。
私はアーシャに感謝しつつ、この後もゆったりと過ごした。




