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男爵令嬢の記憶が交差する  作者: まるねこ


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14 側妃は動いた(シャリア視点)

 大きな会議室には沢山の人たちが席に着いて雑談をしている。集まった大臣や騎士団団長、副団長などの関係者とジゴッド公爵が一堂に集まった。彼らは大会議室に呼び集められた理由を理解しているようだ。


 私と宰相が会議室に入ると、それまで騒がしかった会場が静まり返り、一同礼を取っている。


「急遽呼び出しに応じ感謝いたします。楽にしてちょうだい」


 私は中央の席に座り、隣には宰相が座っている。今まで人の上に立つなんて考えもしなかった。


 緊張して手が震える。


 これはきっと武者震いだと自分に言い聞かせ、口を開いた。


「今回、招集した理由は、皆さまお分かりだと存じますが、陛下が()に倒れたこと。マルティディア様も負傷し、まだ意識は戻っておりません。そして現在我が国を取り巻く状況はフローラの行動により悪化の一途を辿っています。


 フローラを利用し、国家転覆を図る者が王宮に入り込んでいる。陛下は療養に入られた。王妃マルティディア様も動けない今、私、側妃シャリアが陣頭に立ち国家転覆を図る一派の排除の為に動く。拒否する者は今この場で起立を」


 私が固い口調で言うと、皆真剣な表情のまま動くことはなかった。どうやら賛同を得たようだ。


「ありがとう。現状では陛下に後継ぎはいない。もちろんマルティディア様も私にも懐妊の兆しはない。フローラにもです。陛下の()が改善しなかった場合、元第二王子であったジゴット公爵が国王陛下になる。


 ジゴッド公爵、急な話で申し訳ない。しばらくそのつもりで王宮に留まり、私の補佐をお願いします」


「シャリア様の意見に反対する者は今この場で挙手を願います」


 宰相の言葉に誰もが頷き静かに状況を見守っていた。大臣たちもフローラに思うところがあったのだろう。むしろ政務の邪魔しかしない者と考えていたに違いない。


「畏まりました。補佐の任、喜んで承ります」


 ジゴッド公爵は一礼し、補佐になることを受け入れてくれた。


 私にどれだけのことができるだろうか。

 今は自分に出来ることを精一杯するだけだ。


 宰相が現在の国の状況を説明している。どうやらフローラが連れてきた者たちのせいで一部国家機密が漏れたらしい。


 その中には隣国との境にある軍の施設の情報もあったようだ。そして海を挟んだ交易国のイシュティア国の情報も流出していたとのこと。


 私はフローラを捕まえたことを話し、騎士団にはフローラが連れてきた全ての者の捕縛を命じた。


 そして各大臣には情報が漏れていないかどうかの確認を取ると共に、彼女のせいでどのような影響が出ているのかの調査を行うように命令を出して会議はようやく解散となった。


「シャリア様、ありがとうございます」

「宰相、しばらくは忙しくなるけれど、頼むわ」

「シャリア様、大変なことになってしまいましたね」


「……ジゴット公爵、突然お呼びして申し訳ありませんでした」

「いや、最近兄上の行動が日に日におかしくなっているのに気づいて心配していたんだ。こちらこそシャリア様には申し訳なかった。父上が健在であったならこんなことにならなかったのに」


 前陛下は流行り病で亡くなり、王妃様もそれからすぐに後を追うように亡くなられている。そのためキルディッド陛下は二十歳という若さで即位することになったのだ。


 二つ下のジゴッド公爵は現在二十五歳だ。彼は私と同じ歳で元クラスメイトだったため、彼の人となりはキルディッド陛下より知っている。


 私は彼が王に相応しい、いや、彼こそ王になるべき人だと昔から考えていたほど素晴らしい人物だ。


 私と宰相、ジゴッド公爵は陛下の執務室へ戻り、今後の話をすることになった。


「宰相、兄上の具合はどうなんだ?」

「薬物接種による末期の症状を呈している状況です」

「……そうか」


「ジゴット公爵、ギルディッド陛下に会いますか?」

「いや、今は止めておく。シャリア様からはどう見えた?」

「残念ながらあそこまで酷くなれば政務には復帰できないでしょうね」


「シャリア様、大変だろう? 陛下の体調を考慮して一日も早く私が王になった方がいいのではないか?」


 ジゴット公爵は真剣な表情でそう私に聞いてきた。彼が私のことを心配してくれているのがよくわかる。


「ジゴット公爵、いえ、エリオット様。今、この混乱に乗じて簒奪を狙う輩がいるとも限りません。


 フローラが招き入れた輩を一掃するまでは矢面には私が立ちます。それに今、夫人は出産間近なのでしょう? 私は政務に携わってこなかった。どうか私の補佐という名目で政務の方をお願いします」


「相変わらず君は強いな」

「褒めていただきありがとうございます」


 こうして私たちは動き出した。


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