13 学院での生活(ロイ視点)
「ロイ様、お昼を一緒にしませんか?」
「いや、僕は友人と食べているからいいよ」
「なら、友人もご一緒に……」
「なんだ平民男たちだらけの楽しい話に混ざりたいのか?」
「いえ、私たちはみんなで楽しく食事を、と思って……」
「みんなで? ロイとしゃべりたいだけじゃないのか?」
「……」
令嬢たちは図星を突かれたように目を泳がせている。
「みんなごめんね。僕は彼らと食事の約束をしているから。じゃあまたね」
僕はいつもの仲間と共に食堂で食事を受け取り、中庭の外れへとやってきた。
「ロイ、お前大丈夫か?」
心配した友人の一人が声を掛けてきた。
「ん? 何が?」
「ノール男爵令嬢と婚約したんだろう? 彼女の家は有名な金貸しだ。お前、売られたのか?」
「なんだ、そのことか。大丈夫だよ。フラン嬢はとても優しいし。僕のこと気に入ったって言ってたんだ。周りから聞けば変に聞こえるだろうけど、彼女を見た瞬間に彼女の強さを感じたんだよね。美人で優しくて――」
「おいおい、またロイののろけが始まったぞ。ロイはフラン嬢に一目惚れしたんだっけ?」
「ああ、僕は彼女を見た瞬間に『この人だ』って思ったんだ。彼女の意志の強さを秘めた美しい瞳。眉目秀麗っていう言葉は彼女のためだけに存在するんじゃないかな。僕の家の事情を知った上で婚約者になったんだ。凄いことだよ」
「そうだな。さっきの令嬢たちは今までロイに見向きもしなかったのにロイの身なりが良くなると掌を返したような態度。あれを目の前で見せられたらな。俺たちだって見ていて不快になったぞ」
「平民より貧しい身なりのロイに引かなかった令嬢が一人いたじゃないか」
「ああ、エフィン公爵令嬢かな」
「そうそう。あの令嬢って可愛いよな」
「俺も彼女とお知り合いになりたい! ロイっていいよな。フラン嬢も美人なんだろう? 男前は羨ましいぜ」
「そうだ、そうだ」
友人たちは好き放題話をしている。
僕としてはこの気軽さに救われている部分がある。貴族社会は厳しい。
噂一つで貴族社会から締め出されることもよくある。
僕は幼い頃に一度高位貴族が主催するお茶会へ行ったことはあるけれど、『借金まみれの伯爵家』と言われて馬鹿にされたのを今でも覚えている。
彼らにはあまり良い印象は持っていない。
友人たちが言っているエフィン公爵令嬢は確かに可愛い容姿をしている。
けれど彼女は僕のことをペットか何かだと思っているんじゃないかな。公爵にお世話になっていたからあまり酷いことは言えないけれど、僕はキャロライン嬢のことを好きにはなれないかな。
その点、フラン嬢は『ロイ様はそのままでいい』と言ってくれる。
手紙のやりとりをしていくうちに彼女の人となりも見えてきた。そして彼女自ら我が家の借金をどうにかしようと考えている。
こんな令嬢には会ったことがない。
僕を蔑んでいた令嬢ばかりだったせいか、彼女の芯のある言葉が新鮮に映った。僕は次の伯爵だ。
彼女は伯爵家のために頑張ろうとしてくれているのに僕は彼女に支えられるだけのなのか? 情けない男にはなりたくない。
彼女を支えられる男になりたい。
ノール男爵が一流の教師たちを紹介してくれ、勉強も分かり始めた。本当に感謝しかない。
「さて、午後からも授業を頑張ろう」
「ロイ、お前最近頑張っているな。嫁さんに良いところを見せたいのか?」
「ああそうだよ。フラン嬢に似合う男に一日でも早くなりたいんだ」
「おう! 頑張れよ!」
僕の言葉に友人たちは揶揄かうことなく応援してくれている。良い友人を持った。
僕は恩に報いるように頑張るよ。




