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ホームスクール

九月の入学までは、

家で過ごすことになっていた。


父と祖父は、

それを

「ホームスクール」

と呼んだ。


でも、

時間割も、

教科書も、

なかった。


机の上に、

カードが

裏返しに

並んでいる。


トランプじゃない。


祖父が、

ルールを

身振りで

教えてくれる。


二枚、

めくる。


同じ文字で

始まる単語なら、

もらえる。


神経衰弱みたいなもの。


祖父は

手をこする。


「Okay」


楽しそう。


一枚目を

めくる。


「Apple」


二枚目。


「Zoo」


違う。


AとZ。


祖父は

肩をすくめる。


「Oh well」


笑う。


カードを

また

裏返す。


私の番。


一枚目を

めくる。


知らない

単語。


私は

祖父を見る。


「Academy」


明るい声。


「Repeat

after me」


「……アカデミー」


私は

まねる。


祖父は

うれしそうに

うなずく。


「Nice」


二枚目を

めくる。


「Ball」


「ボール」


違う。


AとB。


カードを

戻す。


次は

祖父。


一枚目。


「Book」


二枚目。


「Cat」


また

違う。


「Nope」


笑う。


私は

少し

早く

めくる。


一枚目。


「Arrow」


祖父が

先に

言う。


「アロー」


私は

二枚目を

めくる。


外れる。


でも、

祖父は

楽しそう。


「Again」


何度か

続いて、

やっと。


一枚目。


「Ball」


「ボール」


二枚目。


「Book」


「ブック」


祖父は

手を叩く。


「B!B!」


声が

明るい。


カードを

私の前に

すっと

寄せる。


「You win!」


私は

よく分からないけど、

ちょっと

うれしい。


祖父が

先生で、

私は

生徒。


お父さんも、

仕事していない時は

一緒に

教えてくれた。


祖父は

ほとんど

外に行かない。


毎日、

ここにいる。


ある日、

聞いてみた。


「……仕事、

行かなくて

いいの?」


祖父は

首を傾げた。


「仕事?」


少し考えて。


「これ、

仕事」


カードを

指さす。


「キキ、

教える。

これ、

今の

仕事」


そう言って、

笑った。


この時間は、

九月まで、

毎日

続いた。

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