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父に告げられた夜から、

二日。


日本にいられるのは、

あと一週間。


それは、

最初から決まっていたこと。


長く関われるわけじゃない。

劇的な何かが、

始まるわけでもない。


サキに、

会いたい気持ちが

ないと言えば、

嘘になる。


似た顔。

同じ年。

知らなかった、

もう一人。


興味が、

まったく湧かないほど、

無感情ではない。


でも。


それが、

理由かと聞かれたら、

違う。


キキは、

自分の中を

静かに分けた。


これは、

好奇心。


これは、

戸惑い。


これは、

義務感。


そして、

最後に残ったもの。


お父さんの気持ち。


お父さんは、

何も言わない。


言わない代わりに、

準備はしている。


どんな結果でも、

引き受ける覚悟。


混乱も、

後悔も、

責任も。


お父さんは、

最初から

その全部を

背負うつもりでいる。


だからこそ、

伝わってしまう。


その奥にある、

たった一つの気持ち。


――サキに、

会ってやってほしい。


それは、

頼みでも

命令でもない。


ただ、

漏れているだけの

本音。


自分が応えなくとも、

誰も責めない。


お父さんも、

決して口にしない。


それでも、

知らなかったふりは

できなかった。


朝。


キッチンには、

いつもの音があった。


コーヒーが落ちる音。

カップを置く音。


お父さんは、

新聞を開いている。


読んでいるふりを

しているのは、

分かっていた。


キキは、

その横を通り過ぎて、

一度だけ

立ち止まる。


「……会う」


それだけ。


理由は、

言わない。


「まだ、

考えてもいい」


お父さんが言う。


声は、

慎重だった。


「ううん」


短く。


「会うって、

決めた」


それ以上、

付け足さない。


会いたいとか。

怖いとか。

気持ちとか。


どれも、

言葉にしなかった。


お父さんは、

しばらく黙っていた。


新聞を閉じる。


それから、

ゆっくり言った。


「……分かった」


その一言に、

全部が入っていた。


感謝も、

安堵も、

覚悟も。


キキは、

それには

気づかなかった

ふりをする。


「準備、

いる?」


話題を、

ずらす。


「いや。

何もいらない」


「そっか」


それで、

終わり。


キキは、

リビングを出る。


背中越しに、

空気が

少しだけ

柔らぐのを感じた。


振り返らない。


言わなくていいことは、

言わない。


選んだのは、

自分だ。


サキ。


双子らしく

私と似た名前。


そんなことが、

頭に残った。

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