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昼休みの音楽室

昼休み。


いつもの食堂で、

食事を終えた。


エマが、

ナプキンを置いて言う。



「音楽室に行かない?」



私は、

うなずいた。


廊下は、

静かだった。


みんな、

まだ食堂か、

教室にいる。


音楽室の扉を開けると、

ピアノがあった。


グランドピアノ。


大きくて、

黒くて、

光っている。


エマは、

迷わず

椅子に座る。


鍵盤に、

手を置く。


音が、

流れ始めた。


きれいな音。


エマの指が、

軽く動く。


私は、

窓際に立って

聞いていた。


外は、

明るい。


冬の日差しが、

校庭を照らしている。


エマの演奏が、

止まった。



「ねえ、キキ」



振り向くと、

エマが

こっちを見ていた。



「一緒に歌ってくれる?」



私は、

少し考えてから

うなずいた。


ピアノの横に立つ。


エマが、

また弾き始める。


聞いたことのある曲。


お父さんと、

おじいちゃんと、

一緒に歌った。


ホームスクールの時。


三人で、

何度も歌った。


この国の子どもたちが、

みんな知っている

童謡。


息を吸って、

声を出す。


自分の声が、

部屋に広がる。


窓に当たって、

返ってくる。


エマのピアノが、

少しずつ

小さくなった。


そして、

止まった。


私も、

歌うのをやめる。



「……ごめんなさい」



エマが、

静かに言う。



「続けて」



私は、

もう一度

息を吸った。


エマが、

また弾き始める。


最後まで歌うと、

部屋が静かになった。


エマは、

何も言わない。


しばらくして、



「……素晴らしいわ」



落ち着いた声。



「どこで習ったの?」



「習ってないよ」



エマが、

少し驚いたような顔をする。



「お父さんが

ギター弾けるから、

それで

たまに歌ったり」



少し間を置いて、



「自分で

ピアノを弾きながら

歌ったり」



「そうなの」



エマが、

静かにうなずく。



「歌うことが、

好きなのね」



私は、

少し考えた。


好き?


どうだろう。


お父さんが、

笑ってくれる。


おじいちゃんも、

嬉しそうにしてくれる。


それが、

嬉しい。



「……うん」



エマは、

静かに微笑んだ。



「もっと聞かせて」



「いいよ」



エマが、

また鍵盤に向かう。


音が、

流れ始める。


私は、

また歌った。


窓から差し込む

冬の光が、

ピアノを照らす。


エマのピアノと、

私の声が、

音楽室に響く。


誰も、

入ってこなかった。


昼休みが、

終わりに近づく。


エマが、

最後の音を鳴らして

手を止めた。



「キキは、

歌手になれると思う」



私は、

何も答えなかった。


歌手。


考えたことは、

ない。


でも、

歌手になれば。


お父さんと、

ずっと一緒に

いられるのかな。



「……どうかな」



エマは、

少し不思議そうな顔をした。


でも、

それ以上は

聞かなかった。


チャイムが、

遠くで鳴った。

このエピソードでのキキとエマの会話は、作中では日本語で表現していますが、実際には英語で行われています。


転校当初は、短い単語や断片的な受け答えしかできなかったキキですが、学校生活に慣れ、エマと打ち解けていく中で、少しずつ英語でのコミュニケーションがスムーズになってきました。


言葉の壁が薄くなっていく感覚を、会話の「読みやすさ」で感じてもらえたら嬉しいです。


今後のエピソードでも、こうした形での表現が増えていく予定です。

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