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エマ

その子と話したのは、偶然だった。



ランチタイム。

私は、いつも通り食堂の窓際の席に座っていた。


外は、曇り。

イギリスの空は、だいたい、こんな色。



「May I sit down?」



英語。

少しだけ、ゆっくり。


顔を上げると、女の子が立っていた。


金色の髪を三つ編みにしている。

碧い目。


日に当たると、少し赤くなりそうな肌の色。



「……Yes」



声は、小さくなった。


女の子は、気にしない。



「I'm Emma」


「Kiki」


「I know you」



エマは、少しだけ口元をゆるめた。



「Same class」


「Oh… I see. Sorry…」


「Doesn't matter. It's okay」



それだけで、会話は止まる。


でも、女の子はそのまま座っていた。


何も、話さない。

でも、離れない。


それが、ありがたかった。



――その日。



放課後。

校門の前で、お父さんの車が待っている。


助手席に座り、シートベルトを閉める。


まだ、胸の奥が少しだけざわついている。



「今日、どうだった?」



少し、考える。



「……名前、呼ばれた」


「誰に?」


「エマ」



それ以上、聞かれなかった。


でも、隣に感じる気配が柔らかくなったのが分かった。



家に着いて、制服を脱ぐ。


鏡を見る。


今日は、学校で名前を呼ばれた。



次の日も。

その次の日も。


エマは、同じ席に来る。


話すのは、短い言葉だけ。



「This class, hard」


「……Yes」


「Mr. Smith is funny.」


「……a little」



それで、笑う。



ある日。



体育の授業で、ペアを作る。


屋内の、広いホール。


私は、少し遅れる。


すると、エマが手を上げた。



「With her」



先生は、うなずく。


それだけ。


大きく動くのは、得意じゃない。

でも、急がされない。



「It's okay」



エマは、そう言った。



放課後。


荷物を片付けていると、エマが聞いた。



「Your hair」



一瞬、体が固まる。


でも、声は続いた。



「Does the sun hurt you?」



その言い方は、知りたい、というより

確かめるみたいだった。



「……Yes. A little」


「Sorry」


すぐに。



「No, it's okay」



自分でも、驚くくらいすぐ言えた。


エマは、少し考えてから言う。



「You're brave」



意味は、分かる。



「……I'm not」


「You are」



言い切り。


それ以上、何も言わない。



夜、ベッドに入る。


暗闇の中で、考える。



明日はエマと何を話そうか

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