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教室の中の色

九月。


朝は、

少しだけ

冷えていた。


制服は、

新しい。


まだ、

体に馴染んでいない。


「緊張してる?」


お父さんが

聞く。


「……ちょっと」


「まあ、そりゃそうだよな」


そう言って、

それ以上

何も言わない。


車を降りる。


校舎は、

思っていたより

低かった。


石の建物。


色が、

落ち着いている。


人が、

たくさんいる。


でも、

視線は

刺さらない。


ただ、

流れていく。


教室に入ると、

先生が

笑った。


「Welcome」


ゆっくり。


名前を呼ばれる。


「Kiki」


「Yes」


それだけで、

胸が

少し鳴る。


席に座る。


周りの子たちは、

普通に

話している。


速い。


半分も

分からない。


でも、

怖くはなかった。


先生が言う。


「If you don't understand, it's okay」


分からなくても

いい。


その言葉が、

ちゃんと

分かった。


黒板に、

色のついた

チョーク。


先生が、

色を使うように

ジェスチャーで示す。


私は、

ペンケースを

開けて、

止まる。


色が、

足りない。


隣の子が、

それに

気づいた。


黙って、

一本、

差し出してくる。


色鉛筆。


「You can use this」


「……Thank you」


発音は、

たぶん

変。


でも、

通じた。


休み時間。


一人で

座っていると、

女の子が

近づいてくる。


「Your hair」


止まる。


一瞬、

身構える。


「It's beautiful」


そう言って、

笑った。


胸の奥が、

少しだけ

ほどける。


「……Thanks」


昼。


食堂は、

広い。


匂いが、

強い。


何を言ってるか、

分からない。


でも、

トレーを持って

並ぶ。


迷っていると、

後ろの子が

指をさす。


「This one is good」


「Okay」


それで、

十分だった。


午後。


授業は、

全部は

分からない。


でも、

板書は

写せる。


先生の

ジェスチャーで

意味が分かる。


それだけで、

一日が

終わった。


帰り。


校門で、

お父さんが

待っている。


「どうだった?」


少し考えてから

答える。


「……分からないこと、

多い」


「うん」


「でも」


言葉を

探す。


「……一人じゃなかった」


お父さんは、

それを聞いて

うなずいた。


「それなら

十分」


家に帰る。


制服を脱ぐ。


鏡に映る

自分を見る。


白い髪。

白い肌。

赤い目。


教室の中で、

浮かなかった。


それだけで、

今日は

十分だった。

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