第4話 私なりの戦闘巡洋艦の評価-1
そうした一方で、ヒトラー政権がドイツで成立したことから、ドイツは再軍備を進めることになり、シャルンホルスト級巡洋戦艦等の建造を始めることになります。
又、この頃のソ連も海軍の再建を、スターリン政権下で精力的に進めていましたが、シャルンホルスト級巡洋戦艦がドイツで建造されだしたとの情報を得たことから、イタリア等から協力を得て、クロンシュタット級重巡洋艦の建造を開始することになります。
そんな感じで、英国以外の国々で、こういった戦闘巡洋艦が建造されたのですが。
こういった戦闘巡洋艦は、どう評価されるでしょうか。
私なりに冷たく言わせて貰うと、隙間がある、と考えて作られたけど、結果的に隙間は無く、コストパフォーマンスの悪い軍艦だった、というのが私の評価です。
それこそ英海軍が志向したように、戦艦と駆逐艦、更には駆逐隊の旗艦等を務める軽巡洋艦の建造を、第二次世界大戦の頃は進めるのが、後知恵入りなのは認めますが、正解だったと私は考えるのです。
そう考える根拠ですが、それこそ魚雷(もう少し後になれば、ミサイル)の進歩があります。
水上艦同士の戦いを前提で考えますが、大型艦と言えど、駆逐艦等の発射する魚雷の脅威を無視できない時代に、第二次世界大戦の頃には、完全に入っていました。
そうしたことから考えると、中途半端な軍艦を建造するくらいならば、それこそ大和級のような超大型戦艦と、軽巡洋艦と駆逐艦の組み合わせで、艦隊を編成するという方向に奔る方が、建造後の運用コスト等までも考えるならば、合理的では無いでしょうか。
実際、第二次世界大戦後、旧式化した戦艦、重巡洋艦の多くは、第二次世界大戦で支出された戦費償還の必要があったのが大きいですが、各国で速やかに予備艦になり、更には解体処分等にまで至る例が起きています。
そういったことを考える程に、運用コストが悪い軍艦だったのでは、と戦闘巡洋艦について、私は考えてしまいます。
(それこそアラスカ級大型巡洋艦が、史実における好例です)
さて、何故に其処まで冷たい考え方を、私が考えるのか、というと。
戦闘巡洋艦の多くが主砲としている11インチ、12インチといった主砲は、戦艦相手には非力である一方、重巡洋艦相手には、そう有力でないのが、史実の複数の海戦の結果から推論されるからです。
例えば、ドイツのシャルンホルストは、北岬沖海戦で英国の戦艦のデューク・オブ・ヨークを小破させるのが、精一杯だったのです。
又、三式弾のせいだ、と言われますが、14インチ主砲を積んでいた戦艦「比叡」や「霧島」でさえ、第三次ソロモン海戦において、数に勝る米重巡洋艦艦隊に苦戦を強いられています。
又、ラプラタ沖海戦で、ドイツの装甲艦「グラーフ・シュペー」が、英国の重巡洋艦「エグゼター」等を圧倒できなかった史実があります。
そうしたことからすれば、戦闘巡洋艦の11インチ、12インチ主砲の威力について、私は懐疑的に成らざるを得ません。
勿論、重巡洋艦の8インチ主砲に比べれば、遥かに戦闘巡洋艦の11インチ、12インチ主砲は有力ですが、重巡洋艦を一撃で沈めるだけの大威力が、戦闘巡洋艦の11インチ、12インチ主砲には無いのも、史実からして自明のことでは無いでしょうか。
そうしたことからすれば、戦闘巡洋艦を空母機動部隊の護衛、水上艦の艦隊の襲撃に対応するために、積極的に建造、活用すべきだった、とよく言われますが。
建造に必要な資材の量等から考えても、戦闘巡洋艦1隻を建造するよりも、雷装がある軽巡洋艦複数を建造した方が、水上艦隊対策としては有効なのではないのか、と私としては、どうにも考えざるを得ないのです。
少し補足します。
話の中で出て来る軽巡洋艦ですが、私が想定しているのは、英海軍のタウン級軽巡洋艦です。
日本海軍で言えば、最上級(重)軽巡洋艦になります。
何故に、この辺りが妥当と考えるのかは、補遺の話で説明します。
(何しろ軽巡洋艦にしても、史実では多士済々、と言って良いのが現実で、本当に日本海軍にしても、夕張型から最上型まで、軽巡洋艦として一括りにするのには躊躇う程に多種多様なのが現実です)
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