第2話 そもそもの発端と言えるドイッチュラント級装甲艦
色々と軍艦について詳しい方から、多大な主張が為されそうで、中途半端な知識しか持たない私では、どうにも対処不可能な事態が起きそうですが。
どうか、平にお願いしますが、熱くならないようにお願いします。
第一次世界大戦のユトランド沖海戦等の結果として、世界の主要国海軍上層部においては、艦隊決戦によって制海権確保を目指すべきだ、という主張が主流になりました。
(最も現実には、潜水艦や航空母艦(細かいことを言えば、航空母艦に搭載された艦上機部隊)が発達することにより、徐々に艦隊決戦主義は廃れていくことになり、史実の第二次世界大戦においては、艦隊決戦主義が、ほぼ成り立たなかった、と言われても過言ではない事態が起きますが)
ですが、そういった主張に波紋を投じる事態が起きました。
それがヴェルサイユ条約に基づいて、ドイツが建造したドイッチュラント級装甲艦です。
このドイッチュラント級装甲艦については、それこそ20世紀の頃は、対英戦が起きた場合に備えて、通商破壊作戦を、ドイツ海軍が展開するのを主目的として建造された等の主張が主に為されていた、と私は理解していますが。
昨今では、そういった主張は廃れていて、主にバルト海の制海権確保の為に、これまでドイツ海軍が保有していた旧式の前ド級戦艦の代替艦として、様々な軍艦の設計等が為された末に、ドイッチュラント級装甲艦が建造されたというのが通説化している、と私は考えます。
それこそドイッチュラント級装甲艦の建造が計画された当時、ドイツにとって北海、バルト海沿岸地域を防衛するのに、最大の懸念事項となっていたのは、フランス海軍とポーランド海軍の存在でした。
更に言えば、ポーランド海軍は「東方の高速部隊」を志向していたのに対し、フランス海軍は「西方の低速重装甲艦隊」を志向しており、ドイツ海軍は、この双方の脅威に対応可能な艦隊、軍艦整備を図らねばならない、という状況に陥っていたのです。
そうしたことから、ドイツ海軍は様々な軍艦の建造を計画しますが、最終的にドイッチュラント級装甲艦の建造が至当である、として3隻を建造します。
そして、ドイッチュラント級装甲艦は、欧州諸国を中心とする各国の海軍上層部に感銘を与えます。
ドイッチュラント級装甲艦は、表面上は「巡洋艦を圧倒できる砲力、戦艦との交戦を回避して離脱できる速力、長大な航続力で通商破壊作戦も可能」な軍艦に、各国の海軍上層部からは見えたのです。
最もドイツ海軍上層部にしてみれば、「弩級戦艦に砲力で、巡洋艦に速力で劣る艦」として不満が残る代物にならざるを得ませんでした。
(これはヴェルサイユ条約による様々な制限の下での軍艦を、ドイツ海軍が建造せざるを得ない以上は、止むを得ない事態でした)
ともかく、ドイッチュラント級装甲艦に対抗せねばならないとして、フランス海軍は様々な案を検討した末に、ダンケルク級戦艦の建造を行なうことになります。
更に、フランス海軍を長年に亘って仮想敵国海軍としてきたイタリア海軍は、コンテ・ディ・カブール級戦艦とカイオ・ドゥイリオ級戦艦について、魔改造といっても過言ではない程の大改装を断行して、フランス海軍に対抗しようとする事態が引きこされることになりました。
ともかく、といっては語弊がありますが。こういった事情から、独仏伊各国の海軍軍拡が引き起こされることになったのですが、そうは言っても、独仏伊各国の海軍にしても、それこそ英海軍と正面切って戦う気は皆無でした。
それこそ独仏伊海軍それぞれが、お互いの海軍を見合った末に、それに対応できる軍艦、艦隊戦力の整備に奔走しているのが、当時の現実だったのです。
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