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8ページ目


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わたしの名はリアファリナ、真面目にやるのは次回からよ!と誓うトゲエルフさね。




さて、女の子に囲まれた勇者様。

いったいこの世界の何を救うつもりなのか知らないし興味も無い。

でも待って! これは無い、あり得ない。

世の為、人の為、わたしの為。このトゲエルフが今回ズバっと言うわよっ







北門で皇女様パーティーと合流したわたしは、王家マークの馬車に揺られて

ピネの村へと出発しました。

女騎士ルーシニティが自慢するには、この馬車は普通の馬車よりずっと早くて、

7日で着くのだそうだ。

揺れも少なくてとても快適!らしいのよね。


馬車は一日150kmとして、ピネの村まで約1000km?

『飛翔』でも約1.5時間も掛かるのかぁ。

アイゼンワード帝国の外れもはずれなんだねー

御者は女偵察オーリス。ときどき女騎士ルーシニティにかわる予定なんだって。

それ以外のメンバーは豪華な馬車の中で親睦会かねて談笑中なの。






「そっかー、あんたも大変だねー。ニア?

そういう理由でこの馬車に護衛がついてないのかぁ。」


「まったくよ。そりゃルーもシャイアもオーリスも強いけどさ。

仮にも勇者に何の護衛もつけないなんてっ。

そりゃ~わたくしも悪かったわよっ。売り言葉に買い言葉だったのっっ

う~左大臣め~。」


もうだいぶ皇女様ニアとも打ち解けました。言葉がくだけてます。


「ね~?ニアっていつもこうなの?」


と、わたしはコソっと隣の女騎士ルーシニティに聞く。

あーもう、フルネームはメンドクサイから以下略称ですっv







「ああ、これでもまだ格好付けてるんだよ?」


と、いたずらっぽくルーの目線が動く。


「ニアって、あたしたちに話しかける時とは声の高さすら違うものねっ。」


こちらはシャイア、もちろん目線はルーと一緒。


「だーよねー。ラブラブ光線出てるもんね。」


わたしがそう言うと、そこへ、カズヒサが割り込む。


「なぁ?ファリナ?」


「ブフーッ、ちょっ カズヒサはくふっ は・ははっ話掛けないでっ、

せっ、かく笑いが収まったの、にっひっひ、あははははっ。く・くるしっ アハハハ。」


だめーーーっ カズヒサ超おもしろい。

わたしはカズヒサを見てオオウケしている。なんでかって?






あれは馬車に乗ってすぐのこと、


カズヒサがある程度話をしてくれるようになって、わたしは新たに気付いた事がある。


「ね、ね、ね?カズヒサは異世界の言葉を話してるんでしょ?

どうやってこっちの言葉に変換してるの?」


「え?それも解るのか?」 とカズヒサ。


「もちろんよ、光と風と時の精霊がカズヒサの言葉を弄っているのが見えるもの。

時の精霊を操る術式は喪われたハズよね。それが『勇者召喚の儀』の効果なの?」


「まぁ、ファリナは優秀な精霊使いなのですね。その通りです、

『勇者召喚の儀』は他にも様々な恩恵を勇者に与える、神より授かったわざなのです。」


「他にどんなのが出来るの?」


とわたしが言うと、カズヒサが答える。


「ああ、判ってる事では身体能力がかなり向上してる。それと剣で結構な威力の技が

使えるようになった。技は一度使うと次に使えるようになるまでおよそ100数える

くらい待たないとダメだけどな。それがナゼなのかはよく判ってない。」


「ふ~ん?たぶんわたしが見れば判ると思うけど。後で見せてね。」


「ほんとか!?ナゾのまま残しておくのってなんか落ち着かないからさ、助かったよ。」







「プッ」そこまでカズヒサの話を聞いてたわたしは突然吹き出した。


「え?なんで笑うのさ? 俺の顔に何かついてる?」


「あははははっ カズヒサ面白い事になってるわよっ、自分で気付いてないの?」


「な・何?何が面白いの?」


カズヒサを笑ってるせいか、ニアの声がちょっと堅い。


「あ、あのね。」


それでは、涙を拭きながら判ってないカズヒサに教えてあげるとしましょう。






「カズヒサのね、口の動きとね、言葉の音がズレてるの。

ちょっと待ってね、モノマネして実演してあげるからっ。」


そういって、わたしは伊達メガネを通して見える仮想キーボードのショートカットに、

『音声遅延』それと『音声遅延解除』の2つを設定する。

さすがにこの作業はパソコンで設定するように、『ポチっとな』では済まない。


ショートカットはあくまで"見える"だけであり、実際に詠唱を短縮実行しているのは

わたしの頭の中なのだ。

ショートカットキーは、『力有る言葉を実行する際の決め事=シーケンス』に過ぎない。

詠唱してこの世界に魔法の効果を現すのは、どこまでもわたしの意思力なのだ。


そのため、『ポチっとな』では設定できず、わたしの頭の中のショートカットキーと

一対一で対応している記憶野に徹底的に覚えこませる必要があるのだ。


なっが~~~い詠唱のオコトバを暗記するダケとも言えるけどね。

具体的な長さを具体例にすれば魔術式によるけど、寿限無と同等~100倍程度かな。

ねー?誰か簡単に覚える方法見つけたら教えてね?絶対よ!






さて、準備完了!


みなさんには判り易く、文字で説明しまーーーーっす。

上の段が唇の動き=クチパク『口パ』と表記するね。○は唇を開いて-が閉じるだからね。

下の段はカズヒサの声で『音声』と表記するね。

文字がズレたら脳内変換してくださーい。え?誰にいってんの?




口パ:○-、○-○--、○-○--

音声:では、はじまり-、はじまりー


『音声遅延』を起動する。


口パ:○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-

音声:        むか-し、むかし、あるところに勇者様がおられたそうな。


『音声遅延解除』でキャンセル。


口パ:○-○-○-○-○-○-○

音声:ずいぶんテンプレな昔話ねぇ?


『音声遅延』再度起動。


口パ:○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-

音声:        魔法でこの世界の言葉を話せるようになった勇者様ですが、


口パ:○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-

音声:        実はその魔法はギャグだったのです、なんて不幸な勇者様。


口パ:○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-

音声:        でもでも本人気付いてなかったので問題ありませんでした。


口パ:○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-

音声:        そこへ、一人の親切なトゲエルフがやって来て言いました。


『音声遅延解除』でキャンセル。


口パ:○-○-○-○-○-○-○-○-○

音声:ずいぶんマヌケな事になってるよ、と。







「さぁっ、判ってくれたかな?? 唇の動きと声に微妙なズレがあるのーwwwww」


と解説をおわると同時に笑い転げるわたし。もうだめーーーーーーーーーっ!!!


( ただいま音声が乱れているので少々お待ちください。 )






「まさか、そんな風に見えて聞こえるとは。。。」


あ、カズヒサが落ち込んでる。


「ダイジョブよ、ぷっ、ちょっ ぐふっ した ふふっ ふくゎっ あはっ じゅちゅ

だからっv あはははっ。 (大丈夫よ、ちょっとした腹話術だから)」


「それのどこが面白いのよ。

たしかに唇と声はズレてるけど、気になるほどじゃないわよ。」


あ、ニアには全然ウケてないみたい。憮然としてる。


「確かに唇と音はズレてるが、そんなに面白いか?」とルー。


「神の術を笑うなんて不謹慎な。」シャイアは・・・あんた顔が緩んでるよ?


カズヒサは目ざとくシャイアの顔に気付き、シャイアに近づいて両肩に手を置いた、


「シャイア、ホントの事を言っ「ブフー」」


あ、シャイア、床ドンしてる。

これって気にしないと全然OKなのに、一度気になっちゃうとダメなパターンなのよね。


あ~あ、カズヒサ、とうとう床にのの字を書いてるよ。。。。。。


それ以来、トゲエルフはカズヒサを見るたびに笑い転げましたとさ。どっとはらい。










そうして、しばらく笑い続けたわたし、まだ落ち込んでるカズヒサに言う、


「ま、ほんとは、言うほど唇と声はズレてないよ。とカズヒサをフォロー。」


ふー、やっと笑いを抑えられる程度には落ち着いたわっ。


「ね、カズヒサ、『あいつのあたまはあいうえお。』って言ってみて。」


「なんだそりゃ? あいつのあたまはあいうえお、これでいいのか?」


「ふむふむ、やっぱりね。『あいつのあたま』はこっちの言葉に変換されるのね、

唇と声がズレるわ。 『あいうえお』は意味の無い言葉だから異界の言葉のままね、

唇と声が一致してる。」


わたしはそんな風にカズヒサに掛かってる『勇者召喚の儀』の効果を一つずつ確かめて

退屈な馬車の旅を有意義に過ごしたのでした。







「さー、夕ご飯v 夕ご飯v」


馬車は野宿のために開けた場所に止まりました。

わたしはニコニコしながら誰よりも早く馬車から飛び降りて夕ご飯の準備をします。

だってぺこぺこなんだもの。

準備と言っても、携帯食だから、せめてスープを作るくらいだけどね。






「でも、その前にやらなきゃならない事が、言わなきゃならない事があるっっ。」


わたしはカズヒサに振り返ると、声色を変えた。


「脱げ。」 と学生服を着たままのカズヒサに迫るわたし。


「なんだあ?。」 やっぱり気付いてないのか、バカヒサが言う。


そもそも、女性が4人も居て、なんで誰も何も言わないのっ?


「あっ! あ、あの、その服はカズヒサの故郷の思い出が詰まってる服なのっ

わたし達なら平気だからっっ。」


シャイアはわたしが何を言いたいのか判ったらしい。バカヒサをかばう。


「ザケンナ、ヒトが親切にやんわりと服を脱ぐように言ったにも関わらず、よ?

わたしの猫の額より狭い心も、ここらが我慢の限界よっっ。」


「それ、我慢してないだ「してましたっ。だから脱げ!」」


今はわたしのターンだっ バカヒサにはしゃべらせません。

ここまで言えば、女性他3人も判ったらしい。


「その服はカズヒサのとても大切な物らしいのです。我慢して頂けませんか?」


「少しくらい汗臭くても構わないぞ。」


「・・・・・・。」


上からニア、ルー、オーリスの順よ。


「わたしには我慢で・き・ま・せ・ん。

やさしーく、季節柄冬服は脱いだら?と気を使ってあげたのに無にしおって!

トゲエルフの鼻の良さ、ナメンナッ

さー脱ぐのじゃぁバカヒサぁー。おりゃーーーーーっ。」


そう言ってわたしはバカヒサに飛びついて服を剥ぎはじめる。。。。。。。。


「きゃぁぁぁぁあああああっ。」 おまえは女の子かっ!






あんまり抵抗しなかったところを見ると、カズヒサも気にしては居たらしい。


指の先に持っただけで、むゎん、と来るその学生服を掲げ、わたしは魔術式を起動する。


『全自動』

わたしの目の前に、1mくらいの水球が浮かぶ。

そこへ、ポシェットから柑橘系の果物から作った香水を取り出し、少し混ぜてから

学生服をポイッと放り込むと、水球はグルグル回りだす。時々反対側にまわったり、

学生服をぽーーんと空中に放り投げたかと思うと、ばっしゃーんと落としたり。

それをリズミカルに繰り返している。

『全自動』はね、洗い、たたき、すすぎ、で脱水や乾燥も自動でするのよ。

水の精霊が乾燥してくれるからシワにならずにパリッと仕上がるスグレモノなのっv




わたしはそれらを確認してから、


『水球』

あらためて別に水を呼び出し、その水を使い手を洗ってからスープを作り始めた。


カズヒサとニアを含めた全員、それをポカーンと見てた。






そしたら、わたしがこのパーティーの洗濯係に決まってしまいましたぁ。え~ん。

あ、まだご飯食べてないっ 次回までおあずけなの!?




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