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わたしの名はリアファリナ、冒険者として華麗に生きるトゲエルフよ。


「もう、いいんだ。。。。トゲエルフで。。。。」


迷いは晴れたヨ。

わたしはこの先もトゲエルフであり続けることを再確認したヨ。

善意で他人を助けたのに。。。わたしはまたもや悲劇に巻き込まれたのだ。






先日、銀しぶ鯛を見事ゲットしたわたし達が港に戻ると、ちょっとした騒ぎがあった。




「あれ~?なんか人が妙な方向に一斉に走ってるわねぇ? 事件かしらっv」


わたしがそう言うと、船頭さんも


「あっちは、2番桟橋の方だなぁ?」


と同意してくれてる。






「危険が潜んでいる可能性があります。船を急いで桟橋に着けてっ。

出来るだけその2番桟橋から遠いところへ。

料理人さんはすぐに港を離れてお店に向かうこと。いいわね?

わたしは偵察と状況確認のためにあそこへ向かいますv

あとで、お店で合流しようねぇぇぇぇぇ・・・・・・」




言い終わらないうちに飛んで現場へ向かうわたし。顔が押さえ切れずニマニマしてる。






「なぁ、あれ絶対興味本位だよな?」と船頭さん


「素敵だv」「また、お店で逢いましょうねーーーーっ」と大声で叫ぶ若い料理人さん。


「白か、ばぁさんの若い頃を思いだすのぉ。ひょひょひょ。」と釣師さん。


エルフは聴力も優れているのだけれど、すでに興味ある方向へと意識を向けてたわたしは、

彼らの声を聞いてなかった。

もし聞いてたら、のちの大きな、おおきな悲劇を防げたのかも知れない。

この時のわたしはそれを全く気付きもしなかったのだ。







騒ぎの中心、それはすぐに判った。なぜ騒いでいるのかも。




「でで・デケェ なんて大きさの鮫だぁ。」


「ウソだろ? この船よりデカイぞ。」




港の中を悠々と泳ぐ巨大ザメ。

その大きさは水の中だろうことを差っぴいても全長20mは有りそうだ。


「へぇ?この世界のサメって大きいのねぇ。」


わたしはすっかりノンビリモードに戻って、人の目もあるので『飛翔』は解除して近くの

桟橋から高みの見物に入ってた。




「いくらデカイと言っても所詮サメだしねぇ? わたしが出る幕じゃないなぁ。

あとはあそこの漁師さん達やら冒険者さん達がどれだけ頑張るかダケかぁ。」


わたしはポシェットからカコの実を取り出し、口の中で噛み砕きながら成り行き見物。




「ちっ、そっち行ったぞー。待てー、大人しく斬られろっ。」


「なっ泳ぐのが早いっ、魔法を唱え終わる前に距離が届かなくなるわ。」


「くそっ、弓がはじかれるっ。」


「うゎっ、こっちクルナー。」




「頑張れサメー、ぃやっほぉー、バリバリと喰っちめーー。」


「なんだよ、あの冒険者ども全っ然、役に立ってねーぜ?」


「がはは、あの銛構えてんの、xxxんとこの息子だろ?なんだあのへっぴり腰は。」


「もっとバシっと決められねーのか? おぃおぃ、サメにバカにされてんぞー?」




一生懸命だけど空回りしてるようにしか見えない冒険者達と、好き勝手言ってる野次馬達。


「それにしても、すごい人出ね? みんなよっぽど暇だったのねぇ。」


そうなのだ、この辺りの桟橋は人・ヒト・ひと、凄い込みようでまるでお祭り。

こうしてる間もサメ退治に向かう人、何かを期待した顔でサメを応援してる人がどんどん

増えてきている。 と、そこへ




「大変よっ! みんなっ! サメを追い払いに行くわよっっ!」




なんだろう?

若い女性の声なんだけど、声の質というか、妙に通りが良い声が聞こえて来た。

そちらへ顔を向けると、後姿しか見えないけれど、サメの方、桟橋の先へと集団が駆けて

行くのが見えた。どうやら先ほどの声はあの中の一人だったようだ。

遠目にも小奇麗な衣装・装備を身に付けて、ひのふの・・・5人。男が一人で女が4人?




「ふーん? これは期待出来るかな?」


なんとなくそんな気がして、駆けて行く後姿をじっと見ていると、

これまでと違ったざわめきとも悲鳴とも言えないものが突然右手側からあがった。

わたしの周りの人も、すわっ何かが起こったか!?と右を見ているが、あまりに人が多く、

わたしの位置からでは何があったのかちっとも見えない。

ざわめきだけはまだ聞こえているし、徐々に大きくなって・・・る?






「落ちたー。」


「人が海にっ。」


「女の子だーー。」






女の子が海に落ちた?

向こうのサメがあからさまに方向転換し、わたしから見て右手の桟橋方向へ泳ぎだしたの

が視界に映る。

カンだけど、野次馬のざわめきの具合とサメの進む方向からして、わたしから海に落ちた

女の子まで100mくらい?

サメから女の子まで200mといったところか!?






『水霊よ、抱きとめて』『水上歩行』

わたしはすぐさま海へとジャンプすると、結構な高さはあったが水は柔らかく受け止めて

くれる。そうして海の上に着地すると同時に、


『加速』

女の子がいるだろう方向へこれ以上ないほどの疾さで駆け出す。

この時点でサメとわたしの女の子までの距離はほぼ同じくらい。ややサメの方が近いっ!

女の子は波の狭間だろうか? ここからでは見えない。




『加速』状態のわたしは100mを5秒ほどで走ることが出来るが、サメも時速60km

以上で泳ぐはず。このままでは間に合わないっ

『飛翔』は走るよりも速いけど、女の子を助けるためのそのスピードで水に接触したらを

考えるとこの場面では使えない。

女の子まで残り半分。サメと距離は互角だっ わたしの方が少し速い。




女の子が・・・見えたっ




『魔力コストを増やして、距離増大、対象物を2つに』『水上歩行』

わたしはサメと女の子の両方に水上歩行を掛ける。海上に浮かび上がるサメと女の子。

しかし、サメの勢いは止まらない。海上を滑りながら女の子へと近づいて行く!!!

接触まであと1秒ほど。






『衝撃吸収』『加速』

女の子を対象にさらに魔術式を続けざまに重ねて起動し、走る勢いそのままで、わたしは

女の子に飛びつく。加速衝撃は魔術式が緩和してくれるはず!!

わたしの左手、巨大サメがその大きな口をさらに大きく開いているのが感じられる・・・

ふと、ジョーズのポスターが頭に浮かぶが、そんなのっ 怖くてそっち見れないわよっっ




まさにギリギリ。

この速度でこの距離でのニアミス。しかも相手の大きさはダンプカー並みっ

そしてさらに、わたしの先には左に曲がった桟橋があるっ

判ってた事だけど、ぶつかるっっっ

総毛立つのが自分でも解った。






『飛翔』

なんというか、高飛びの背面飛び?

そんな風に桟橋とその上の野次馬達をこれまたギリギリで跳び越す。

周りの音なんて一切聞こえない、そんな極度の緊張&集中だった。

空中に浮かび下を見ると、サメが桟橋にぶつかってたのが見えた。

その上に居た野次馬達もさぞビックリだったろう。

桟橋自体はなんらかの魔術式で強化されているらしくどこも壊れて無い。




サメは『水上歩行』が掛かっているので水に潜れない。

このまましばらくほっとけば溺れ?死ぬだろう。






わたしは何が起きたのか判ってない顔した女の子を抱きながら、空の上からそこまを状況

確認すると、桟橋の上、野次馬集団の空いてるところへと優しく移動してから、柔らかく

着地して女の子を開放した。

野次馬達のポカーンと口を開いたマヌケ顔と、泣きべそになりながらも礼を言う女の子が

印象に残った。






望んだ訳ではないが、この事件が元で、わたしの顔はこの街に広く知れ渡ってしまった。

ふふん、そりゃそうでしょ。見た目は可憐なトゲエルフの美少女が、華麗に人助けをして

のけたのだ。これで一躍アイドルよねっv


その後、街の皆は、わたしを見かけると挨拶してくれるようになりましたとさv






「よー、パンチラねぇちゃんじゃねーか、今日も白なのかー?」


わたしのトゲがレベルアップしたのは言うまでも無い。



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