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43ページ目 守護者ユミカの観察記その10万飛んで①

ここまで間をあけてしまって申し訳ありませんでした。

小説書くのって、わたしに取っては究極の癒しとなりました。

ほんわかエルフを待っててくださった方も、そうでない方にも、読んで楽しんで

頂ければ嬉しいです。

必ず終らせる決意で、毎日コツコツやってきますね。


43ページ目 守護者ユミカの観察記その10万飛んで①



……トゲエルフが地面に倒れ伏している。


斃したハズの魔将軍が突如として目の前に現れ、一瞬でリアファリナを倒したのだ。

リアファリナは……身体の左胸から腰にかけてが吹き飛び、左腕も千切れてしまっている。

こうしている間も彼女の周りには、見る見るうちに血溜まりが出来上がった。


誰がどう見ても即死。


……ある意味驚いた。

あの火竜に勝ったヤツがこの程度で死ぬの??






この観察記を初めて見た者は、あたしが誰なのか知らないだろうから自己紹介しよう。

あたしは人間だった頃、カミーユ・ライヴァッハと呼ばれていた。

ブリューグフト大陸のはるか東に浮かぶスーザファト大陸の、とある小国の出身だ。


両親は割と裕福だったので、あたしが子供の頃は家庭教師を雇っていた。

その人は魔術師だった。

その事が、あたしの一生を決めたのかも知れない。


やがて冒険者となり、あたしは魔術師としてあちこちの国を渡り歩いた。

同じパーティーの神官を夫とし、子が出来たことで冒険者を引退した。

夫との結婚式の日に、夫の信仰するプニ神が祝福の為に降臨した事で、プニと知り合った。


夫が亡くなった後もプニは定期的にあたしを訪れて、寂しさを紛らわせてくれていた。

やがてあたしは歳をとり、死の病を患う。

好き勝手に行動し魔術を極め、世界を巡り知識を広げたあたしだったが、一つだけ心残り

が在ったのだと、その時になって気付いた。


『あたしはプニの事を何一つ知らない』


とはいえ、死の淵でその事に気付いても後の祭りというものだろう。

あまりに時間が足りない、まだまだ生きたい。

なんだろうね? 自分がこんなに往生際が悪かったとは知らなかったよ。


プニは神だ。人の寿命に関与したことは、あたしが知る限りそれまで一度も無い。

だが、寿命を延ばさなくとも永遠を望む方法が、この世界には存在する。


アンデット。

禁忌と呼ばれるソレは、過去に大いなる災厄を世にもたらした最悪の存在として忌み嫌わ

れてた。それでもプニと一緒に存在し続けるには、それだけがあたしの知る唯一つの方法。


無事に? あたしはバンパイアとして転生した。契約神はプニ。

寿命を延ばしはしないが、自己責任で人生を選択しようとする信者の願いは叶えてくれた。


気付けば、年老いたあたしの身体はいつの間にか若返ってた。

禁忌とされるアンデットとなったからには人としての名前は忘れよう。

これを機に、名前を逆さにしてユミカと名乗ることにした。






バンパイアとして、プニの神殿守護者として何年が過ぎ去ったことだろう?

思い返せば一瞬だったようにも思える、充実した毎日。


そうしたある日のこと。

勇者が召喚されたことは、神殿へ時折訪れるニブルヘル出身の子達から噂で聞いた。

ノースアイゼン砦に滞在する勇者が危険に晒された時には、魔法でプニと話したけれど、

あのシニカルなプニにしては珍しく、積極的に勇者を助けているなぁ? と思ったものだ。

過去にも何度か勇者が召喚されたことはあったが、直接介入したのはこれが始めてじゃ?


そうしてやって来たノースアイゼン砦で勇者の男の子は、プニの別身(エイリアス)を借用中のあたしの

ことをやけにジロジロ見た挙句、唖然として声には出さず、口は『シ-タ』と動いた。


シータ、思い起こされるのは、創生神シータ。


この世界には、プニのことを創生神バルシータと呼ぶ人が少なからず居る。

また、プニがこの世界『ネイワース』を創ったのだと主張する人々も居る。

いまだに解けてない、プニの謎の一つ。


勇者を観察することで……あたしは今まで謎だったプニとシータの関係、ついでに勇者と

プニの関係にも、近付けるかも知れない。






……勇者の名はカズヒサと言うらしい。

情報源は女エルフ。

自称がトゲエルフだというこの女エルフは、出会った時からとにかく常識を外れていた。


試練のダンジョンでは、雲霞の様に押し寄せる『永遠の罪人達』を蹴散らし、ただ一人で

神殿まで走破してのけた。


あたしがダンジョン内に放っている密偵代わりのバンパイア・バットからの連絡によれば、

邪神ザタンと契約してアンデット化したライトワンと途中で遭遇し、これも独りで退け、

迷宮を巡回するゴーレム達を正面から単独突破し、あまつさえ、このあたしの魔法障壁を

も破ってみせた。どれだけ高い魔力を保有しているのだろう?


さらには、その夜遅く火竜を打ち倒されたと緊急連絡も入った。

おそらくは火竜を倒した時のものだろう衝撃は、神殿にも伝わって来ていた。


その衝撃でテーブルに置いた寝酒のコップが、目の前で床へ落ち割れてしまった、しかし、

その次の瞬間、割れたハズのコップは、まるで時間を逆に回したかのように破片が一つに

集まり、元通りのコップを形成し、浮き上がり、テーブルの上へ……元の位置へと戻った。

まるで夢でも見ていたかのように寝酒が入ったコップは、揺れひとつない。


摩訶不思議な現象を突き止めるべく、あたしが出向いた先では在り得ない光景が広がって

いた。


火竜が吐いたブレス攻撃によって超々高熱の嵐渦巻く部屋の中では、『七色に輝く闇』と

しか言いようが無い、"何か"を纏って火竜を威圧するリアファリナが立っていた。

彼女の前には角を一本圧し折られて、大地に叩き付けられた火竜がいる。




……もうひとつ謎がある、コップを元に戻したのは誰がやったのか?


あとで判った事だが、不思議なことにこの時の衝撃による地震は誰一人覚えてなかった。

いや、ダンジョンの中は睡眠要らずで活動し続ける者達で一杯だ。

誰も地震に気付かないなどと言うことがあるわけ無い。

なのに、ニブルヘルの街でも誰もが口を揃えて言う、「あの夜に地震など無かった」と。


あたしの錯覚では無い、衝撃による地震は確かに起きたのだ。

割れたコップが元通りになったのも幻では無いのだ。


ならば答えは唯一つ、無かった事にされたのだ。時間が巻き戻されたのだ。

誰に? あたしには解ってる、プニだ。

たまたまこのプニの別身(エイリアス)に乗り移ってたから、プニが行使する力の外に居られたのだろう。

巻き戻される時間の流れから取り残されたのだと思う。


結局そのリアファリナには、ライトワンとライハーラのアンデット二人組でも負けた。

あの調子では、あたしが本来の自分自身、バンパイアたる身体に戻ってアンデット三人組

で戦ったとしても勝てなかったに違いない。

いっそ、神の別身(エイリアス)であるこのチートな身体で戦っても良かったかも知れない。


規格外には規格外をと考え、ある意味嫌がらせと言える神殿上級守護兵をぶつけてみたら、

あたしの悪足掻きをリアファリナは軽くかわして見せた。

あそこでネヴィアシータの宝玉が出て来たのは予想外だったけど、それも彼女の運と実力

のうちと考えるべきなのだろうか?






いま、そのリアファリナは地面に倒れている。


「「「「「「「「「「 ファリナっ!? 」」」」」」」」」」


ファリナに駆け寄ろうとするウインゾフィーやカズヒサたち。

しかし、いつの間にか其処に居た、リアファリナそっくりな、でも、どこか違う赤い女が

手を横に上げ、駆け寄ろうとする皆を押さえながら警告する。


「危ないから近寄ってはダメよ」


って言うか、アンタ誰よっ!?


「でもっ でもっ ファリナがっ!!」


サフィニア皇女は錯乱状態だ。

それでも見知らぬ赤い女に阻まれ近寄ることが出来ない。




「ヒトは滅び、光は闇に喰われ、希望は全て絶望に変わるがいい!」


魔将軍が空を仰いでナニやら吼えている。うわ、調子に乗ってるよ、こいつってば。


「なんだ? なぜコイツが生きている?」


カズヒサが問いかけると、


『融合だよ。死の間際に精神の上位精霊と融合した。さらに、想いを現実とするその力で

己に残された全てを振り絞り、自らの身体へとザタンの降臨を願ったのさ。今のそいつは

邪神ザタンと上位精霊の力を併せ持っている』


プニが答えた。

あたしの前には魔将軍、その向こう側にプニとカズヒサ達が居る配置となっていた。


「此処に居る者どもに、死しても永劫に続く苦しみを与えよう!!」


魔将軍はあたし目掛けて巨大な、今のあたしから"視て"も尋常では無い魔力を拳に纏わせ

殴りかかって来る。踏み込みの力強さは地面を穿ち、圧倒的な力で繰り出される拳の周り

は景色が歪んでいる。


ヤバッ、かわせない……




『バシッ』


拳があたしに届く直前。

光のカーテンが降りてあたしと魔将軍を分け、拳はカーテンを叩いただけに終った。


「なんだとっ!?」


驚く魔将軍。

続けて殴りかかってくるが、その拳は全て光のカーテンに遮られ、どれ一つとしてあたし

には届かなかった。

ま、まぁ、プニが目の前に居るのに、あたしに危害が届くわけは無いと信じてたけどねっ。


『ザタンは創生神シータの従属神に過ぎない。シータの別身(エイリアス)であるその身体を傷付ける

ことなど出来ないのさ』


この身体が創生神シータの? どういう意味? この身体はプニの別身じゃなかったの!?

困惑しつつも、プニの傍へと移動するあたし。




「くそっ 何だ今のは!? キサマか、キサマがやったのか!!」


そう言って魔将軍は、今度はプニへと殴りかかる。

圧倒的な魔力を籠め、そのコブシ一つで山をも吹き飛ばしそうな破壊力を秘めたその拳は、

プニの顔に吸い込まれるように当たる、だが、赤ん坊がじゃれているかの様な可愛らしい

音しか立てなかった。


『ぺたっ』


プニは微笑みを浮かべ……顔をしかめることすらもしない。

魔将軍が何度殴ろうと、プニへダメージは伝わらない。


『ぴとっ』

『ぷにょ』


「なんだ……なんなんだ!? これは」


邪神の力も併せ持ったという、魔将軍が繰り出す拳の一つ一つは砦を破壊し、踏み込みの

力強さは局地的な地震さえも生み出すことが可能なのだろう、本来ならば。


なのに、


プニは何もしていない。

拳を防いでもいない

魔力を放射してもいない。

何の力も見せていない。


だのに、何もして無いし、そこには何も無いのに、魔将軍の力はプニへ届かないのだ。

巨大で圧倒的な魔将軍の力は、プニに届く前にその全てが霧散していた。




「おのれ……おのれ~~!!」


魔将軍は宙へ手を伸ばすと、どこからとも無く魔法の短槍が手の中に現われる。

魔将軍はそれをプニの胸に突き立てた。と、同時に槍の穂先が眩く紫色に輝き、何かの術

を用いてプニへと攻撃したようだった。


「ふふ、ふははははは。どうだ!? 神殺しの術を喰らわしてやったぞ!!

いつかミラー神を倒すために創っておいた、ゼロ距離での無詠唱の術。

ザタンの破壊の力を持って為され、滅びの術を受けし者の魂は砕け散る!!

名付けて『ソウル・ブラスト』よ」




……プニは、

自分の胸の前で光り輝くナニかを、埃でも払い除けるように『パッパッ』と叩くと、

紫色の光は燃え尽きた線香花火のように、地面へ落ちる前に消えた。


『気持ちは判るが、こうあからさまに胸の先を狙うのはどうかと思うぞ?』


呆れたようなプニの口調。

と、そこへ声が掛かる。


「やるだけ無駄ね。神とそれ以外が戦えば、必ず神が勝つ」


リアファリナそっくりの、赤い謎の女が、静かな口調で説明する。


「神を越える圧倒的な戦闘力を相手が持ち、例え神の勝ち目が完全にゼロだったとしても、

そこから状況を引っくり返し圧倒的に勝つ。それが『無から有を生み出す』神という存在」


勝ち目が完全なゼロでも勝てる? それが本当なら神に勝てる者はこの世に存在しない。


赤い女の説明はさらに続く……


「超必殺技だの、無限の魔力だの、神殺しの武器だのという勝つ為に条件を必要とする者

では神に勝つことは出来ない。そこの魔将軍もいま勝てねばこの先何年経っても勝てない。


なぜなら、力が無くても、経験が無くても、身体が虚弱でも、武器が無くても、勝ち目が

完全にゼロでも、それでも勝てなければ神には永遠に届かない」


赤い女は、首を横に振りながら言う。


「ゼロ距離での無詠唱?『無から有を生み出す』神相手に、それはどんな意味があるって

言うのかな?」




最後にプニが補足する。


『神は(ことわり)を創りだす者、お前達は理に支配される者。

行動の全てが神技(かみわざ)たる神は、冗談でも比喩でもなく、ため息一つでお前達の心臓を止める

ことが出来る。剣を持って無双するなんて夢を持ってた時代が俺にもあったよ。現実には

勝とうと思った瞬間に、戦わずして相手は勝手に全滅してしまうがな』




魔将軍はブルブルと震えながら、


「ゆ、ゆるさん、我より強いヤツなど認めないっ」


『主神と従属神の違いを知るべきだと思うが。それではもう一度だけチャンスをやろう』


プニが言うより早く、魔将軍は手の平をプニへと向け……


「我に宿りし『夢幻の魔神』と『邪神ザタン』の怒りを借りて、いま!!必殺の!!

奈落破壊光(アビス・アタック)』」


しかし、プニは術が発動する一瞬前に魔将軍の右側に回り込むと、


『トンッ』


と魔将軍の手を押し、まさに発射されようとしていた破壊の光を逸らしてしまった。

そうしてその光は、倒れていたリアファリナへと直撃……は、しなかった。


光はリアファリナに当たるかどうかと言うところで、不自然に消え失せる。

いや……別なナニかの力で掻き消されてしまったのだ。

光が消えたその場所には、いつか見た『七色に輝く闇』が取り巻いている。





プニは、魔将軍の首根っこを引っつかむと、ぽぃっ、と無造作に片手で投げた。

魔将軍は『なにっ ぬのぉぉぉぉおおお……』と声を上げ、空のかなたへと消えて行った。


『ご苦労、ちょうどいい時間だ。 さて、スリーピング・ビューティーのお目覚めだぞ』


プニの異国風の言葉は、耳に入ったとたん『眠れる迷惑娘スリーピング・ビューティー』と聞こえた。

魔将軍、殺さないんだ? あっけなかった退場にしばしポカンとしていたら、


『これから忙しくなるんでね、御退場してもらったのさ』


どういう意味? とプニへ尋ねようとしたところで気付いた。

ふと気付けば、いつの間に立ち上がったのか?

リアファリナが立っている。




「「「「「「「「「「 ファリナっ!? 」」」」」」」」」」


全員が先ほどと同じ言葉を叫ぶ。

しかし、今度のは困惑を秘めた声で。


彼女のトレードマークとなっている眼鏡は、どこかに吹き飛んでしまったのか、無い。

邪神の力に触れて変色した黒い肌は、初めて出逢った時のように白く輝いている。

千切れたはずの左腕は、どうやったのか元通りになっていた。

服は破れているが胸の傷は見えない。すでに治っているのだろうか? 血の跡すらも無い。


だが、その瞳には何も映って居なかった。

その顔には何の表情も浮かんで居なかった。

ただ能面のように、光が消えた瞳で静かに佇んでいた。




彼女が、ただそこに立って居るだけで、あたしの本能が逃げろと叫んでいる。

目に映る姿は人のソレでも、バンパイアの超感覚がアレは異質なモノだと告げている。

そのあまりの異質さに肌が粟立ち、胃から何かがこみ上げ、吐きそうになる。

そうして空間が、世界が、悲鳴を上げているような気がした。


誰もが一瞬で悟っただろう。其処に居るのは……

ボ~っとしてる時ですら表情豊かで、常に百面相してるリアファリナとは別物だと。

赤い娘が危険だから近付くなと言ったその相手は、魔将軍なんかじゃぁ、ない。


そこに立っているリアファリナ……ヒトの姿を模した『何か(・・)』をだ。





「ファリナっ!?」 カズヒサが叫ぶ。

「ちょっと!?どうしたの?」 レティアラが怪訝の声を上げる。

「いったいファリナはどうしたと言うの!?」 皇女が赤い女に尋ねる。




「単純に言えば、意識を無くしてる状態ね」


赤い女は、リアファリナの僅かな動きすら見逃さないよう厳しい目で見据えながら、


「その娘は7歳の時に何でも出来る力を厭って、その力を捨てた。

その事は以前話したわよね。 捨てられたその力が"わたし"を形取ったとも。

何でも出来る力を捨て、でも、捨てたその時に、力を全て失っても何とかするコツを身に

付けたのよ。すなわち『無から有を生み出す』コツを。神の(わざ)をね」


『リアファリナは、気絶して心を無にした状態の時だけ『無から有を生み出す』技を使う

ことが出来る。理性が働かないから主に破壊の力としてな。まったくハタ迷惑な娘だよ』


プニは、やれやれと首を振っている。




『それと、今、俺はこれ以上リアファリナにもエルファリナにも利する行動を取れない。

だからピンク(カズヒサ)。こそっとお前だけに教えてやるが、たった今しがた、アイゼンワード皇帝、

および、帝国神祇団は、バルザック砦へ派遣した帝国軍4万が敗走したとの知らせを受け、

魔王軍との交戦続行を断念し、和平交渉へ舵を切ることを決定した』


「え?」


エルファリナと呼ばれたリアファリナ似の赤い女は、ギョっとしたように皇女を見て瞳を

大きく見開き、驚きの表情を浮かべた……


「しまった!! 『勇者召喚の儀』がっっ」


『その通り。 和平交渉に先立って、魔王との交渉の障害となる勇者を始末するために、

『勇者召喚の儀』の契約解除を宣言した。それにより勇者をこの世界に留めていた術式は

効力を失い無効となった。 あと4分47秒後にピンク(カズヒサ)はこの世界から放逐される』


「「「「 えぇっ!? 」」」」


勇者パーティーの女性組みはプニのその説明に驚愕する。


「まずいっっ カズヒサっ 急いでリアファリナを叩き起こすわよっっ

このままだとニアはあと2分38秒後に命の炎が消えてしまう!! さらに2分後にその

存在は完全に消去されちゃうのよっ」


「「「「 え? 」」」」


皇女を除く勇者パーティー全員が再度驚く、皇女は泣きそうな顔になっていた。


「な、なんで?」


カズヒサが信じられない、という顔つきだ。


「勇者サマをこの世界へと召喚するにあたって、神と契約をしたのです。事が全て終った

ならば、この命を差し出します、と」


皇女は、大粒の涙を目に浮かべ、そう返事を返した。


「で、でも、まさか、それが今だなんて……」


『創生神シータとの契約だ、つまり、今では俺との契約だがな。 神とかわした約定を、

恩恵を受けるだけ受けて、支払いの段になってからまさかイヤとは言うまいな?』


「そんな……プニ神、なんとかして、くださいっ 何すればニアを救ってくれ、ますか?」


カズヒサが一縷の望みを掛けてプニに詰め寄る。

あたしは見てられなくて顔を背けた。

きっとプニだって見捨てたいワケじゃないはずだ。

でも……あたしは神であるプニの答えを、もう知っている。




「カズヒサ、プニもあたしも、神が決めた事柄を人間に守らせる側なのよ」


エルファリナはそう言うが、それで納得出来る人間はここには居まい。


「なら、俺がニアに掛けられた契約とやらを斬ってやる。この剣なら切れるハズだな!?」


『その剣の必ず当てる事が出来る魔力では、無い物を斬ることは出来ない。皇女の運命は

契約を交わしたその時に既に決した。未来が消滅した人間の運命に関与することは不可能。

命の炎が消えるまで3分間を与えたのは、知人との別れの挨拶に使うための温情だ』


「そんなっ!?」


打ちひしがれるカズヒサへエルファリナは、


「まだよっ、まだ間に合うっ カズヒサ、プニもあたしもニアの運命を今更変えることは

やらない(・・・・)けどっ プニでもあたしでもない誰かが『無から有を生み出す』力を使って

創生神シータの契約に介入するのは構わない。それが出来るのはリアファリナだけよっ!!」




カズヒサは、顔を上げると、


「そうか。 なら、さっさとファリナを起こして、頼むとするか」


そう宣言したその顔は、ちょっと見とれるくらい男らしいイイ顔だった。

あらやだ、あたしとしたことが。



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