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『大熱地獄』


時間も無いことだし、大宝珠に秘められた極大魔術式をサクっと起動した。


どうせなら真打ち宜しく、魔術式のアレコレをバカヒサに自慢してから披露したかったが、

敵の元気玉が完成する前に大慌てで起動してしまったよ。

走馬灯のように浮かぶ開発に苦労したアレやコレやらを面白おかしく聞かせたかったな~。


カズヒサ達は、視界全てを覆う炎と、肌を焦がさんとする熱量を前に言葉も無い。

上空の精霊力からの感じでは、どうやら元気玉は炎に飲まれて消え去ったようだ。






ノースアイゼン砦に攻め寄せた敵は、いまや天へと届くほどの巨大な炎の壁に飲み込まれ

ている。炎の壁そのものは砦から数百メートル以上離れてるものの、圧倒的な熱量がここ

まで伝わってくる。


『大熱地獄』は、燃える炎より上層に存在する水を、水素と酸素に分解しながら、それを

糧に燃え続ける魔術式だ。

この魔術式の恐るべき点は炎を消火するために、新たに水が撒かれても、その水全て燃や

してしまう点にある。この世界では、消火法と言えば水を掛ける程度の知識しか無いので

対処法を逆手にとって被害をさらに広める極悪な魔術式なのだ。


もちろんセーフティも備えている。術が発動した地表より下の水は燃やさない。

じゃないと川や海の水まで燃やしちゃうからね。

触媒である所のわたしの服に、魔力が十分蓄えられているならば『雨天』という条件付き

となるが、一つの国全体を焦土とすることも可能とする危険な魔術式である。


敵の足元の水は直接は燃えてないものの、先ほど水が流された際に付着した上半身やらの

水滴からは猛火が吹き上がっている。気体化した水素と酸素が燃えてるので逃げ場は無い。

厳密に言えば水の中に潜ればセーフティが働いて火は消えるのだが……魚でも無い限りは

やがて呼吸のために水から顔を出さなければならない。

その時、大量の水を浴びて濡れたまま顔をのぞかせたことを後悔するだろう。


『エルヴンデビニッシュチュニック』

わたしの身体から発散される余剰魔力を溜め込み、24時間、365日間着続けることで

一国の国土全てを焼き払う国家殲滅級の魔力触媒として完成する、ハズだったのだが……




「それって、計画倒れじゃないの?」


はぅ。

オーリスから突っ込み来た……


「だってファリナってば、服がちょっとでも汚れると着替えてたでしょ?

一緒に旅してた時だって、一日に2度、ううん、夜着も数えれば3度は着替えてたよね?

お洗濯を魔法で出来ちゃう人ってそういうトコロが贅沢だなぁ。って見てたのよ。

そんな服の使われ方で魔力が十分に貯まるには何年掛かるの?」


ざっくり計算すると、4日に一回、8時間着たとして……12年。


「12年ねぇ? ……あたしなんて、おととしの服ですら、もう着てないよ」


ふんっだ。本気で国を滅ぼしたい訳じゃないから、これで良いのだ。

それを、真面目に計算するほうが負けなのよっ!!






『 バッ 』


唐突に、炎の壁が不自然な形で消え失せた。

炎が燃えて居ただろう敵が居た辺りには、白い靄がかかっている。


……ふん、そう来たか。




『想いを現実に換える術だな。術者の想念を核とし、大勢の想いを束ねて、ただの夢想に

過ぎなかった幻を現実の世界へと具現化せしめている。

これはその応用で『ザタン・ファントム・ミストフォートレス』という術。

本来個人のみが得られる邪神の加護だが、軍団全てを加護下に置いている。

さっきの『マナシェア・エナジーボール』も同じような理屈だ』




わざわざプニ神が説明してくれるまでも無い。

見ただけで霧の術が普通の魔力で構成された術では無いことが解る。

精神の上位精霊を利用して魔王軍全体で一つの魔法陣を構成している。

これだけ強力で、かつ、細やか術式は術者一人の力では成り立たない。


魔将軍がどれだけ軍団員の信頼と協力を得られているのか、この術式を診ただけで容易く

推察出来る。正直、こうして敵味方に別れてなければ話をしてみたい相手だ。


だけど、




「むっかつくー。無駄にしちゃったわたしの服カエセーっ!」


わたしは魔力炉を取り出して水晶姫に渡し、


「アレやるわよっ。炎で死んどきゃ良かった!!って後悔させてやるっ!!」


すると水晶姫はカズヒサに手を伸ばし、のたまった。


「ちょっと、そこの勇者。世界平和のために魔王倒すより先にコレ倒しなさいよっ!!」


「おだまりっ ほらほら。チャチャっと準備なさいっ」


もとより無駄な抵抗を長々するつもりも無かったようだ。

水晶姫の頭の上に芽のような物が生えて来たと思うと、あれよあれよと言う間に茎が伸び、

その先に向日葵のような花が咲いた。

さらに水晶姫は後ろ手に魔力炉を抱えて、


「ほら、これで良いでしょ?」


先日、対リッチ用に外注しといた邪神の加護を打ち破る兵器の形態へと水晶姫は変化する。

だけど、わたしがイメージしてた物とだいぶ違うし……なによりカッコ悪い。


「もう少し、茎を伸ばして、花を前方に移動させて頂戴」


とりあえず多少注文をつけ、微調整で誤魔化すことにした。


「これって、花ガッp「あ~~っ! 聞こえないっ!!」はいはい」


はーはー、バカヒサの突っ込みは遮ってやったわよっv






魔力炉を左に動かすと向日葵は右を向き、魔力炉を右に動かすと向日葵は左に向く。

そんな風に向日葵の向きをこちらの意思通りに動かせることを確認してから、

とりあえず砦に一番近い場所、敵が隠れているだろう突出した霧の辺りに狙いを定める。

敵は霧にまぎれて徐々に砦へと押し寄せつつある。


魔力を魔力炉に注ぎ込むと、一瞬『キーーン』と音が聞こえたが、直ぐに何も聞こえなく

なった。しばらく待っても何も変化しない。むろん、敵の霧も変わらず。


「何してるんだ? ファリナ?」


カズヒサの問いには答えず、というか、答えづらい。

炎の壁は言わばスイッチ一つで自分の見えない場所で勝手に敵が死んで行くようなゲーム

感覚に近い。比べると、この兵器は明確にわたし自身の意思で操っており大量の敵の命を

こうしている間も奪い続けているのだから。

イザという時に備えてニアにも魔力炉の操作を覚えてもらったが、実際にやってみると、

彼女を巻き込まず、自分独りが手を汚せば済ませられそうなのは心の救いだ。




わたしは向日葵の向きを敵が隠れている霧に沿って横一線に動かす。右から左へ。

霧の端まで動かすと、今度は少しズラして左から右へ。

そしてまた端まで来ると、また少しズラして右から左へ。


最初に気付いたのはレティだ。


「変だよ!? 敵の霧が近付いて来なくなった……というより薄れて来てる!?」


そこから先の変化は劇的だった。あっという間に霧が晴れていく。

そして、そこにあったものは……


「なんだ?敵が倒れているぞ??」


敵を覆う霧は、敵軍団の先頭、砦に近い所からどんどん薄れて消えて行く。

同時に、霧が晴れて行く部分では、そこに居たハズの敵は全て倒れて伏し、それどころか、

敵兵が逃げ出している所すら見える。


霧が薄れた場所で敵兵がまだ立っている所に向日葵を向けると、立っていた者達から赤い

霧状のものが噴出し、そして倒れるのが此処からでも見えた。

さながら白い霧が晴れ、赤い霧が戦場を覆っていくかのように……


「まだ死んでないけど、体内の精霊力が目茶目茶になってる。アレじゃ、もう助からない」


レティが敵の精霊力を"視て"皆へ教える。


そうして、数十回、向日葵を往復させると敵軍団で目に付くところで立ってる者は居なく

なった。


「何をしたんだ? ファリナ」


皆はもう、わたしから質問の答えを聞いても、内容が理解出来ないと思ってるからだろう、

質問はカズヒサの役目になっている。


「水晶姫の身体はその名の通り水晶で出来てるのよ。ここに電気は無いけれど、その代り

魔力炉から供給した熱を大地の精霊が力に変換することで代用してるの、だから……」


「水晶発振? レーザーか!?」


「ちょっと違う。電磁波はこの世界には無い物だからレーザー兵器は敵邪神の加護で遮ら

れちゃうわね。だから、周波数をもっと下げてる代わりに出力をトンデモ無いレベルまで

上げてるワケ。この魔力炉はこう見えても小型の太陽並みの出力があるのよ」


「……メーザー兵器?」


「当たり。邪神の加護はただの音は遮らないから、超高周波で超出力の音をぶつけたの。

白い霧は、いわば邪神の加護に対する軍団兵の絶対の信頼で成り立ってる術だからね。

邪神の加護をもっても素通ししてしまう謎の攻撃を前にすれば動揺しないワケが無い。

結果は見ての通り。文字通り霧散したわ」


わたしは魔力炉を操作するのを止め、皆を振り返り、


「さぁ!! これから敵集団のど真ん中に突撃して、敵魔将軍を討ち取るよ!!

準備は良いわね!?」






ほぼ無人の野のごとく戦場のど真ん中まで皆を連れて移動する。

ここまでに、わたし達の行動を邪魔するような者は斃れ伏せており、存在してなかった。


「リアラ、『結界』を張って」


「はい。

善を司るミラー神よ。全能なるその御力で邪な力を断ち我等を御守り下さい、護りの壁を

築き、内なる我等に安寧をお与え下さるよう『セイクリッド・プラッズ』」


「ジル、やっておしまい!!」


「判った。ジェラルディ・エリザベス・リム・リーベフェルマの名において命じる。

魔剣に秘められし力を解放する。心の奥底に潜む世界を現世に具現し暴虐の祭りを開け!!

『ブラッディ・カーニバル』」


それは、魔剣に蓄積された使い手幾世代分の命で贖われた魔法陣を、現世に解き放つ呪文。

そして、今頃になってイライザは略称だったのだと判った。




世界が影に呑まれて行く……




召喚された夢幻界がこの現実の世界に重なる。その範囲は戦場フィールド全てを覆う規模。

物理法則が異なる夢幻界が重なれば、現世の者では行動すらままならなくなる。


だが、召喚者であるジルはもちろん平気だし、プニ神から贈られたお守りを持つウインと

レティ、スニージーは「如何なる状態異常からも護られる」ので半現世と化したこの戦場

でも動きを妨げられることが無い。


リアラの結界内は善神バルミラー神の加護が働いているので、カズヒサやニア達はこの中

から援護を飛ばすことになっている。


戦場にまだ生き残っている魔王軍の軍団兵は、次々と襲って来る夢幻界の怪物に襲われ、

さらに数を減らしている。

夢幻界の怪物達にはわたし達も襲われるが、カズヒサやウイン達が素早く片付ける。


魔王軍はすでに壊滅状態だったが、『ブラッディ・カーニバル』が止めを刺した。






「……来たわね」


狂乱の元がここである事は精霊の力を感じ取れればすぐに判る。

そうして待つことしばし、向こうから一見すると女性に見えなくもない青年が歩いて来た。

腰まで伸ばした髪、とても丁寧な顔の造り、体は痩身だがひ弱な感じは受けない。

二十歳そこそこに見える青年だが、人間とは全く異なる存在、皮膚が緑色だ。

植物の怪物、ウッド・マンなどと呼ばれる種族なのだろう。

右手に短槍を持っている。その穂先は紫色に眩く輝き、強力な魔力が付与されている。


植物はドライアードやアルラウネといった精神系の精霊・魔物と関わりが深い。

なるほど、イケメン魔神はそれなりの高位精霊。接触が難しい精神の精霊の中でもさらに

関わりを持つには難しい存在と、如何にして契約出来たのか謎だったが、植物ならば垣根

も低かろうと腑に落ちた。


青年は、少年のようなボーイソプラノの声で、


「やってくれたじゃ……ふん、手癖の悪い人間どもめ」


青年が話し始めると同時にレティが矢を放ったのだが、余裕の紙一重でかわして見せた。

矢が纏った精霊術は、身に付けたワインレッドの鎧から放たれた力で消し去られている。


「アンタが魔将軍ね? 今更細かいことを言うつもりは無い。ここで死んでもらうわ」


「是、お前達を皆殺しにして喪われた同胞への手向けとしよう」


わたしは双剣に魔力と霊力を通し、構える。

青年……魔将軍が魔法の槍を構えるのと、ウインが飛び出すのは同時だった。


カズヒサが光る刃を飛ばし、レティとオーリスが矢を放ち、ウインが縦横に剣を振るう。

なのに、魔将軍はそれら全てを最小の動きで避け、弾き、ウインへ反撃してくる。

マジックミサイルは必ず命中する術だが、ニアやスニージーが放つそれらの術は悉く鎧が

持つ加護によって阻まれてしまう。


「私も」


ジルが接近戦に参加するが、あろうことか魔剣の剣筋を見切り、刃が振り下ろされる途中

で弾かれ、弾かれたジルの刃がウインの黒剣を邪魔する形となった。

かろうじてウインがジルの体に体当たりし、ジル目掛けて走った魔槍の軸線から外した。

魔将軍の動きは明らかにこちらの動作の一歩先取りをしている。


……行動が読まれてる!?


「我が魔術の奥義は、敵の心の奥底から湧き出る思考を読み取り、先の先を取る事に有る。

お前たちの技なぞ当たらんよ」


そういうことか!! ならば、


「わたしがやるわ、皆は手出ししないで」






向こうは短槍、こちらは刃の短い双剣、間合いは向こうが有利だが……


右・左・また右、単純な突きではない、相手の穂先を巻くように螺旋の動きを加え、槍の

動きを片剣で抑え、あるいは弾きながらもう片剣でその隙を狙って突きを放つ。

敵も小円の動きで槍が封じられないよう、逆にこちらの剣を封じるよう動く。

己の間合い……制空圏の取り合い。だが、魔将軍の方がやはり動きの先手を取って来る。


左の剣で槍を強振すると同時に右剣を斜め右下から左上へ切り上げ、魔将軍の体を掠めた。


「なにっ!?」


さらに一歩踏み込み切り上げた右剣で槍の柄を捉えて戻せないよう壁を作り、左剣で敵の

胴体を薙ぐが、右手首を中心に槍を回転させ、石突側の柄を用いて刃を防がれてしまった。


「な……んだと!? 攻撃の機先が読めないだと?」


精神の上位精霊を使い、相手の手の内を読んで、攻撃タイミングと剣筋を見切る彼の術は、

わたしには通用しない。


「つまんない術ね、もう見切ったわ。次で終らせる」




双剣を腰に戻し、背中の火竜の剣を抜く。


『幻影』


わたしが動いた跡に、わたしそっくりな幻が浮かび、幻像はわたしが動く度に増えて行く。

さらに、摺り足で小さく円を描くような歩法を描きながら、敵魔将軍の周りを移動する。

単純な横移動ではない素早い小円の歩法は敵から見てふわふわと微妙に遠近感を狂わせる。


そして、


「ムーンウォーク?」


カズヒサが気付いて声を上げる。

そう、摺り足での移動に見せかけた『リニア』を使った浮遊術による移動法は、体捌きが

右移動でも左に動いたり、一歩の歩幅で数歩分移動したり、逆に全く移動しなかったりと、

予測がつかない。身体の動きでの先読みは不可能。


魔将軍は槍を半身に構え、わたしの動きを注視していたが、


「ふっ。術におぼれたなっ……ハッ!!」


魔将軍の魔槍が繰り出され、わたしの胸が貫かれた。

口と胸から血を噴出しながら、全ての幻影と共に仰向けに倒れる……




「「「「「「「「 ファリナ!! 」」」」」」」」




皆から悲鳴の声を上がり、

魔将軍は得意げに語る、


「お前のその幻の分身術は、一瞬だが地面に影が映る時がある。

ようはその瞬間を狙って本体を捉えれば良……グハッ」


魔将軍の身体を後ろから貫く刃。




「ぎ……キサマ……」


「わたしの幻影術の綻びを見つけて勝った気になったようだけど、ワザと隙を見せつけて

相手の行動を自分の思う通りに誘導する、これはそういう技術。

精神の精霊を使役し、敵の手の内を読む事に慣れてしまったアンタは、地面へ影が映ると

いう初歩的なミスを疑いもせず飛びついてしまった。精霊に頼り過ぎたのが敗因ね、って、

もう聞こえないか」


火竜の剣で身体の内側から焼かれているのだ。異世界に逃げ込んでももはや助からない。

息が在ったとしても、もうじき死ぬ。


召喚されてた夢幻界が薄れ消えて行く。『ブラッディ・カーニバル』の効果が切れたのだ。

もはや魔王軍は軍団の体を為して居らず、統率する魔将軍も斃れた。

わたしは魔将軍に背中を向け皆の所へ戻る。




「ファリナ!!」


皆が駆け寄ってくる。


「どうやって行動を読まれなくしたんだ?」


ウインの疑問に対し、


「ん? わたしが着てる鎧がゴーレムだってこと、忘れてないよね?」


「あぁ?」


判って無いウインに代わって、カズヒサが答えを出す。


「つまり、あれか? 魔将軍はファリナの意思を正しく読み取っていたけど、ファリナの

意思とは無関係に動く二人羽織のゴーレムが、勝手に魔将軍を倒したワケか?」


「その通り!!」


わたしはニッカリと笑った。


「相手の技をつまんねーとか言ってたけど、それこそ、つまんねーオチだな!!」


ふんっ 技ってのはそういうのの積み重ねなのよっ






砦に帰って来たわたし達を出迎える帝国軍の面々と、ユミカとプニ神。


「魔王軍に勝っちゃったんだ!? 凄いじゃないのリアファリナ」


ユミカがわたしに、コノコノーとばかりにウリウリしながら言う。


『やはり、ボケエルフだったか。こうならない未来も少しだけあったんだがな』


プニ神がそう言った瞬間だった。


『ドンッ』


砦の中央部に宙から何かが飛んで来た。

地面に蜘蛛の巣状のひび割れが走り、その中央に膝を突いた男が……立ち上がる。


あれは……魔将軍!? 生きてたの!?


魔将軍がユラリと動いた、その次の瞬間、

突然、わたしは左側から衝撃を受け、生きた鎧の左胸から左腰部分が吹き飛ぶ。

わたし自身も吹き飛ばされながら、わたしの左腕が千切れているのが視界に映った。




……致命傷!?




『止めを刺さなかったのは慢心だったな』


最後にプニ神の声が聞こえた気がした。


わたしの身体は宙を回転しながら跳ね飛ばされ、地面に落ちるよりも前に意識は深い闇の

底へと落ちていった。




プニ

「魔王軍からピンクを救ってくれたのは嬉しいが、最後にこれではな。

問題は全問正解でも名前を書き忘れたに等しいチョンボだと思わんか?」


エルファリナ

「……」


プニ

「いつもならこっちで勝手に補完してやったが、前回からまだたったの4日だぞ?

抗議の意味も込めて記憶の補完はヤメだ。とりあえず記録取っとけエルファリナ」


エルファリナ

「なんでわたしがっ!?」


プニ

「ん? お前が世界を元通りにしてくれるって言うなら俺が記録係やるぞ?」


エルファリナ

「……出来ない……」


プニ

「ったく。せめて出来るようになってから口ごたえしろ。これだからユトリは」


エルファリナ

「ユトリ関係ないし……それは一種のパワハラですよ"竜王の君"」


プニ

「……変な名で呼ばんで欲しいね、それを言うならお前さんが"深紅の君"だろ?」


エルファリナ

「わたしはわたしよ。……この話題は止めましょうか」


プニ

「俺はそんなモンじゃないが否定しても自分の潔白を証明出来んしな。まぁ良い。

記録係は俺が見繕ってやろう。お前には仕事がある」


エルファリナ

「聞きたくなぁ~~~っい!! アレを抑えろって言うの!?無理っ!!

そもそも、なんで形の上では上司のわたしが仕事振られるの~~~っ!?」



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