4ページ目
4ページ目
わたしの名はリアファリナ、里を飛び出して冒険者として生活しだしたトゲエルフよ。
ここまで色々と悩んだのだけど、
「デレのないツンデレエルフです って言うよりトゲエルフの方がぴったり来るよね?」
という心の決着にたどり着きました。
近況だけど、例の10件で市民権ならぬ正式登録だけど、いま9件まで達成出来ましたv
全ての依頼で依頼主の期待以上の成果で達成したから、"よろず紹介所"のおやじさんのみ
ならず、そこの常連達にも、近頃声を掛けてもらえたりと、結構存在感を出して来ている
ところなの。
わたしのエルフスマイルも地味に効いてるよねv
そして、ここ最近は安いけど宿屋に泊まっているのよ。
あ、誤解が無いように言うけど、わたしは普段も水霊操りで体を綺麗にしてるんだからねっ
野宿してたからって体臭が臭くなったり、口臭を臭わせてたりしないんだからっっ
さて記念?すべき10件目の依頼はと言うと、
幻と言われた銀しぶ鯛とか言う魚を使った料理を出さなきゃお店を潰すぞと、街のグルメ
成金のハーマン氏から脅しを掛けられたとかで、その料理屋から依頼の鯛釣りだった。
そんなの、、、、そんなの、、、、漁師に言え~~っっっっ!!!
はい、漁師が受けられない理由もしっかりありました。
銀しぶ鯛を釣るためには、浅瀬と岩場が入り組んだかな~り複雑な地形の場所に行く必要
があるとかで、釣り船は必然的に小型船にならざるを得ない訳なんだけど、最近その辺り
は小型船ばかりを狙った海賊が出るとかで誰も行きたがらないんだそうだ。
かといって大型船ではその場所へ行けないし、中型以上では海賊は姿を見せないんだって。
小型船は船頭さんと釣り人さんが乗るともうあと一人二人しか乗せるスペースが無いとの
ことで、冒険者達も少数では海賊に対抗出来ないからって受け手が見つからず。
帝国騎士団や保安部隊は数回退治を試みたが姿を見せないので、根競べに負けてお手上げ。
依頼は表向き魚釣りだけど、裏事情が海賊との戦闘なので、わたしがこの依頼を受けるに
あたっては"よろず紹介所"でかなり反対された。
件の海賊退治に駆り出された冒険者もいて、その人達からも危険だから止めるようにとは
説得されました。
でも、わたしとしてはようやく冒険者らしい仕事だったので反対を押し切って受けました。
まぁ、相手見て敵わないと思ったらすぐに逃げろよ、とか散々言われたけどね。
「う~みよ~おれのう~みよ~♪」
わたしはだいぶリラックスしてるんだけど、なんなんでしょ?この暗い雰囲気は。
「だ・大丈夫だからお嬢さん、か・海賊が出たって、に・にげっ切ッテ見セるカラよ!」
船頭さん、そんなに硬くならないで。ほらちゃんと前見る!そのセリフもう20回目だよ?
「お嬢さんが海賊に捕まるくらいならお店なんてどうでも良い。俺と二人で逃げよう!」
なんか歳若い料理人さんが、わたしの顔を見ながら変な決意を固めたみたい。
「最近の海賊は素人さんにまで迷惑をかけて、いけねぇよ。俺が若い頃は・・ぶつぶつ。」
と釣師さん、あと30年若ければ海賊を蹴散らしてくれたのね。でもそのドス錆びてない?
「ねぇ、向こうに見える船、海賊船かしら?」
わたしは魔術式で『探知』を展開してるので遠くから快速艇よろしく近づいてくる船をいち
早く見つける事が出来た。有る程度の距離まで来れば『望遠』でつぶさに見ることが出来る。
「どどど・どどっ ドコ?どコだ?見えねー。ふ、ふひっ来やがれってんだ!」
「船頭さん、すぐに逃げてっ」
「ブッコミのマサと恐れられたこのワシの、ドスの錆びにしてクレルワー」
なんか後ろの人達がアヤシイんだけど。。。
ふむ、やはり海賊船ね。
どうやら帆走も出来るし、オールで漕ぐことも出来るタイプなのね。
海賊船というより、海賊艇というべきか。
今は帆を畳んでオールを使って力強く漕いでどんどんこちらへ近づいて来ている。
船首の衝角で体当たりするつもりなのだろう。オールの数から漕ぎ手は20名ほどと見た。
でも、あれは?。。。。。わたしは目を細めてしばし考え込む。
それならっ
『幻影』『隠密』
この船の幻を作り出し適当な方向へ逃げ出し始めた。
こちらの本物の船には『識別妨害』を掛けて周りから見えなくしておく。
「さっ、今のうちにさっさと幻の魚ゲットするのよっv
わたしはあの海賊達とちょっと遊んで来るわね?」
『飛翔』
さすがに急ごしらえの幻影では思惑通りとは自動で動かせない。マニュアルなのだ(汗
海賊を殺すことも出来るけど。。。。殺傷用の魔術式も当然ある。
でも、わたしは、なるべく戦わず、そして、捕らえもせず終ろうかと考えている。
なぜなら、山賊と違って海賊は、漁村が丸々それを職業にしている事が多い。
なので目の前の海賊艇のように、いかにも少年といった者が混ざることがあるから。
「さすがにねぇ? 捕まれば縛り首だし、後味の悪いことはしたくないな。
依頼されてもないのに。」
幻影の船を海賊艇から距離を取りように適当に操る。
追いつかれそうになるとスイっと離れ、また追いつかれそうになると離れるを繰り返した。
そうして10分ほど引き回していると目に見えて速度が落ちて来た。
先の見えない頑張りなんて続かないものよね。
わたしは『風の護り』を起動すると、海賊艇に近づく。
「海賊なんて割りに合わないわよ?」
ほんとは、やり方しだいで海賊稼業は結構美味い思いできるみたいだけどね。
それは言わないのがお約束だろう。
『麻痺』で無効化するのはここでは止めた。横波で転覆したり座礁したら死に直結する。
『小型雷球』
この魔術式はショートカットキーに登録してない普段使わない式なので、わたしにしては
珍しく詠唱を行って起動する。
わたしの伊達メガネは魔法工芸品でもあり、このメガネを通して見ると仮想キーボードが
目の前に展開されているように見えるのだ。
もちろん仮想キーボードはわたしにしか見えない。
仮想キーボードにはショートカットキーが割当てられており、それぞれに魔術式やマクロ
を登録してあるため指一つで魔術式を高速に起動できるのだ。
他人から見ると指先一つで魔法を使っているようにしか見えない。
魔術式の詠唱短縮化を考えた際に"向こうの世界"で普及していた方法を応用したのだ。
この仮想キーボードは指で触れなくても、詠唱する意思を持ちつつ視線を固定すれば式を
起動可能なので、たとえ両手を拘束されようが問題無いように創ってある。
魔術式の言葉通り、小型の雷球は海賊艇を縦断するように飛ぶ。
避けられるかどうかは運次第といった所だが、当たっても痛くて涙が出るくらいですむ。
しかし、海賊達はどうやら魔法での攻撃を受けるのは慣れてないらしい。
ほぼ全員が雷球を受けて痺れるやら涙目になってるやら。
わたしはそれを確認して、次の魔術式を起動する。
『雷球』
こちらはショートカットキーに登録してあるので即座に起動出来る。
先ほどの非殺傷の術式と異なり、もろに当たれば骨も残らず蒸発する。
見た目も威圧感バッチリで、一目見ればでその恐るべき効果を誰もが予想出来る物だ。
『雷球』は投げずに、わたしは右手の上にとどめたままで、こう言った。
「判るでしょ?貴方たちを皆殺しにするのなんて簡単よ。」
海賊から反撃されることを考えて風の護りを掛けたわけだが、海賊達は呆けてるばかりで
全く攻撃を返してこない。
「でも、殺さないで居てあげる。いつかそのことの意味を考えて見てね。」
わたしは海賊の中でも男の子をじっと見ながらそう言った。
一度だけチャンスをあげる。自分の人生は自分で決めなさい!男の子。
「ねー?釣れたー?」
「大物が釣れたぞー、海賊はどうなったんだー?」
と若い料理人さんが返答してきた。
「ああ、諦めてどっか行っちゃった。」
わたしは結果だけを言った。
「あ、あの、お・おれ、この料理対決が終ったら、のれん分けしてもらう予定なんです、
それで、もし、お嬢さんさえ良かったら、お・おれの、嫁さんになっななっ。」
はいはい、立ち上がると横波で船が揺れるからアブナイわよー?
「ふぉふぉ、このワシに恐れおののいたか。お嬢さんワシに惚れひゃらはきゃんにょ。」
おじいちゃん、途中から入れ歯が。。。。
「俺っちの船を襲うなんてふてーやろう共だったぜ、次来たら海の藻屑にしてやんぜっ。」
うんうん、まずは腰がヌけてるのを治そうね?船頭さん。
こうして見事10件目を達成したわたしは"よろず紹介所"の正式登録メンバーとなった。
正式メンバーとなれば、世界中のどこの"よろず紹介所"でも利用出来るらしい。
そうそう。
元凶のグルメ成金ハーマン氏は、後で聞いた処によると、銀しぶ鯛勝負にて、さすらいの
神の舌を持つ"味眉のシン"とか名乗る人物にグルメ失格の烙印を押されたとかで、なんか
よくわからないけど、それなりの罰が降ったそうだ。