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39ページ目 新たな試練と勇者の危機


39ページ目 新たな試練と勇者の危機




「「 神殿上級守護兵!? 」」


スニージーは驚きの顔で、レティは何の事やら?な顔でハモる。


「知ってるのか? スニージー?」


ウインがスニージーに尋ねると、彼は珍しく厳しい顔でユミカに詰め寄った。


「その話は本当なのですか!? プニ神殿の上級守護兵と言えば、かつて、250年ほど

前の魔王軍が攻め寄せた際に、通り道にあったプニ神殿が攻め込まれて、その時に魔王軍

2万を返り討ちにしたってのは有名な伝説ですよっ!!」


「うん、そうみたいね? 第四神殿だったかな?

たしか、それが元で魔王軍は勢力激減して撤退せざるを得なくなったのよねー。

なにしろ祝福された液状の真銀で創られた身体は魔法を一切受け付けないし、斬られても、

叩かれても直ぐに復元して決して倒れないっていう、神の尖兵だから当然の結果よね」


「いくら試練とは言え、これは度を越えていますっ!!」


「度が越えてるのはそこのトゲエルフも一緒よ~。 とにかく! 異議は受け付けません」






「わたしが居たらダメなら、わたしだけダンジョンから出てってみようか?」


そう提案してみると、ユミカは、


「ふふん、一度反応した上級守護兵は10日は出っぱなしだからね。それにレティアラは

ダークエルフだし、その武器ってダークミスリルでしょ? 本来なら反応しないそれらも、

一度反応しちゃったからアンタ達も敵だって記憶されてるからね。トゲエルフがここから

居なくなったダケじゃ無駄なのよ~」


などと憎ったらしいことを言う。




「あの、突破するだけなら私の『ディバイン・アーマー』で攻撃を無効化して、ファリナ

の足が早くなるあの魔法があれば行けると思うのですが?

ディバイン・アーマーがプニ神の神聖術を無効化出来るのは、昨日のバインド・トラップ

の拘束を受けなかった事でも証明されてますし」


「それで突破出来るのはリアラだけ、って事になるし、あの先でさらに何かあった時には

対処出来ないからマゴ付いてる間に効果時間が切れちゃって、ナマス切りにされちゃうよ。

それは最後の最後の手段だし、今の段階で選択するにはリスクが大きすぎるわね」


リアラの提案にわたしが答える。


「ま、最悪一ヶ月もあれば、焼けた肌も元に戻るだろうし、染み付いた邪神の力も抜ける

だろうからね。とはいえ、そこで得意そうな顔してる誰かさんをギャフンと言わせたいし、

どれ、いっちょヤ「ね、リアファリナ。あたしにもう一度挑戦させてくれない?」うえ?」


身体を復元させた水晶姫がそう言って進み出てくる。


「あたしもさ、いっくら神の尖兵相手でも、ああもあっさり真っ二つにされちゃったのに

このままやられっぱなし、ってのは大地の上位精霊として矜持に関わるのよね。

やるだけやって見たいワケ。そういうことで、リベンジに協力してちょうだい」


「良いけど。何か策があるわけ?」


「アンタ、足が早くなるヤツと動きが早くなる魔法を一度に最高何体まで掛けられる?

あたしの別身(エイリアス)は、能動的に動かせるのが4体と、ただ突っ込ませるだけならもう16体は

同時に出せるのよね、それ全部に掛けられる?」


「合計20体か。……支援魔法を全部オフにすればイケルかな?

んじゃ、ソレやってみましょうか。 ……ちょっと待ってね」


わたしはそこら辺に落ちてる石ころを拾うと、『簡易儀式』を起動する。


『クリエイト・ストーンゴーレム』


魔力の関係で永続魔法は籠められないものの、故郷の村に置いてきたヤツと同じタイプの

ストーンゴーレムを生み出すと、その体表に『強化』を掛ける。

これで、あの小型銀色ゴーレムの攻撃が魔法属性を帯びて無い通常攻撃なら、ゴーレムで

突破出来る……かも知れない。 気分はもうやれる事は全部やる、だ。期待はして無いが。


そうして、わたしは支援魔法で魔力関係以外は全てオフにし、魔力が再度溜まるのを待つ。






「それじゃ、行くわよ!?」


「こっちも準備はいつでも良いわ」


目の前に居る、水晶姫20体それとゴーレムに『加速』『ヘイストⅤ』を掛ける。


「Go!!」


支援魔法が切れる前に飛び込んで行く水晶姫x20体、プラス、ゴーレム。

ここからピラミッドの入口まで30m足らず。だから勝負は一瞬で着くだろう。

わたし達は通路出口から少し引っ込んだ場所からそっと顔を覗かせて勝負の行方を見守る。


小型銀色ゴーレムは、細い一本足を軸に物凄い勢いで回転し出した。その次の瞬間、

全ての水晶姫とゴーレムがいくつものパーツに輪切りにされてしまったのが見えた。


「あっちゃ~」


「もう、何なのよー、あの卑怯な攻撃力は!!」


元に戻った水晶姫がぶつくさと文句を言う。


「次の策行くしかないか、ちょっと魔力が溜まるまで待ってね」






「次はどうするの? ファリナ」


ジルがわたしに問いかけるので、魔力を回復しながら答える。


「ん~、以前逢ったこと有るヤツは魔力の制御球か、魔力供給炉を壊せば倒せたんだよね。

そこの小型銀色のも、似たような構造かも?」


「おや? その話振りじゃ、リアファリナは下級守護兵と出遭ったことがあるわけ?」


今度の問いはユミカから。


「ここからちょうど東へ五日ほど行った村で、そのゴーレムが壊れたことで事件が起きた

のよ。依頼でそのゴーレムを撤去したんだけど、その時に戦ったのよね」


「あらま。そりゃ迷惑掛けたね。何十年かに一度だけどさ、ゴーレム達って神殿の守護を

入れ替わるために次の神殿へ赴くんだよ。ここの次は東にある第二神殿になるんだけど、

アンタが出遭ったヤツはその赴任途中で、壊れちまったヤツだったんだろうね。

ゴーレム達は入れ替わり、入れ替わりすることで、ある神殿で得た戦闘やその他の情報を、

他の神殿へも伝えて情報共有する役目を兼ねてるのさ」


「その村では、村人が水銀に侵されて大変な目に遭ってたけどね」


「……村人って、子供もかい? ……もしかして、アンタがその子達を助けたの?」


「成り行きでね」


そう答えると、ユミカは真剣な顔で考え込み、


「……ふ~ん。今までアンタはウイン達に誘われてこの試練に巻き込まれたんだとばかり

思ってたよ。リアファリナ? でも、そうじゃ無かったみたいだね。

下級守護兵が子供を傷つけたんならプニが気付かないワケが無い。

それが放ったらかしにされてたのなら、それには何か意味が在ったと考えるベキ」


「何ソレ? 子供達の苦しみようは酷かったわよ? 意味があろうと無かろうと、それが

神のやることなの!?」


「……神さまの考える事はあたしには判らないわね。それにプニはこうも言ってるよ。

歴史上もっとも人を殺しているのは神だって、人が生まれたら必ず死ぬのは神がそのよう

に創ったせいだからだと。 プニが人を助けても殺した数からすれば極々一握りに過ぎず、

しょせん自己満足でしかないんだとさ。 で?リアファリナちゃんは子供を苦しめたプニ

に怒ってるわけだ? それはそれは……プニに気に入られるわけだわ」


「……気に入られなくて良いわよ。 ま、子供の話はもう良いわ。

もともと、わたしは飛行機が欲しくてここまで来たんだから」


「飛行機? あぁ、アレか。ときどきプニが乗ってるヤツだ」


「やっぱり有るの!? よ~~し!! 俄然ヤル気が出てきたっ!!」






『プヨ探知改』を詠唱起動して、物陰から小型銀色ゴーレムの魔力を探ってみると、期待

していた魔力供給炉の反応が無いことに気付いた。


「……あれ? 魔力炉が見当たらない?」


「ふっふっふ。下級守護兵と同じじゃ無いわよ~v 上級守護兵はそういった弱点を改良

してあるんだからね。 『ブレスドアクアミスリル』っていう、神力と魔力を融合させて

生み出した、それ自体が制御と魔力供給炉を兼ねてる神魔素材製で、どれだけ細かく砕か

れようが、それら一つ一つでも独立して動けるっていう画期的素材なのよっv

もっとも、魔法を受け付けないからそもそも砕けたりしないけどねっ」


「だからかっ!? モノワイヤーなんて物騒な武器を振り回せば、自分自身だって傷付く

ハズなのに一向に気にした風じゃないのは。 斬られた瞬間に修復してるからなのね。

……そんな物はもう、力技でなんとかなるレベルを越えてるわよ。

『強化』したゴーレムすら一瞬で切り裂くなんて。魔道学の常識外というか。

こんな物を試練に持ち出すなんて、大人気ないと言うか」


イヤミの一つも言ってやらんと。

当のユミカは、イヤミを聞こえない振りしている。


「ほほほ、あのワイヤーは目に見えないだけじゃなくて、『マジック・イレーサー』付き

だからね!! 防御魔法なんて突き破るわよ!! 邪神の鎧だろうが何だろうがあの攻撃

に耐えられるモノなんてこの世には存在しないのよ~っv」






「どうする? これじゃ引き返して一ヶ月待つしか無いのか?」


ウインは目的地を目の前にして悔しそうだ。


「そうね? 足し算してダメになってるなら、引き算はどうかしら?」


「はぁん?」


ユミカはもう勝った気で居るらしい、余裕の笑顔だ。みてろよ~っ!!




わたしの黒い焼けた肌。ダークエルフのレティ、ダークミスリル武器。

これらが積み重なってあの上級守護兵が反応しているというのなら、その逆の要因を用意

してやれば、反応しなくなる……かも知れない。


「よっと」


わたしはポシェットから取り出した物をゴーレムから見える位置に掲げてみせた。

すると、


小型銀色ゴーレムは一瞬光ったかと思うと、次の瞬間にはその場から消えうせて居た。

そして、ピラミッド入口の銀色の床が盛り上がり、ゴーレム……下級守護兵二体へと変化

する。下級守護兵はわたし達に反応せず、静かに入口を護って立っていた。




「えぇっ!?」


驚くユミカの隣で、


「さっ、これで神殿に入れるようになったみたいよっv」


今度、満面の笑顔になったのはわたしだ。


「ちょっと! 何をしたワケ? それいったい何よ!?」


「これ? これはネヴィアシータが創った宝玉よ。下級守護兵の製作者でもあったから、

もしかしたら?って思ってね」


わたしの手の中には、以前ジルの魔法剣のコアとなっていた赤い宝玉が在る。

なんでも取っとくものよねっ!!


「初代さまの? 何でそんな物を持ってるワケ? ……って言うかズルイ!!」


「ズルく無い!! アンタのあの物騒な上級守護兵こそズルイでしょうが!!

そんで、こっちのリアラとジルはネヴィアシータの子孫なのよ、この宝玉は代々伝わって

きた家宝の一部なんだってさ」


「……リーベフェルマ家の者なの!? 聞いてないよっ う~今回は情報不足極まれりね。

あぁ~あ。 ま、こうなったら仕方ないわね。試練突破オメデトウ!!!!」


ユミカは幾分ヤケクソ気味に言い放つ。






神殿内部はこざっぱりしており、特に何か御神体と言えるような物も無かった。


「何かビンボ臭くない?」


ロマンチック街道のヴィース教会とまでは言わないけど、もう少し華美さが欲しいわねぇ?


「神殿に派手派手しさは不要よ、プニ神が訪れる場所だってだけで十分でしょ?

さぁ、ウインゾフィー、スニージー、レティアラの試練達成のご褒美を渡さなきゃね」


本来の自分の身体に着替えた(?) ユミカは奥の棚から何かを取り出す。宝石箱のようだ。

宝石箱を開け、その中から……銀色のネックレスを取り出し、レティアラの首に掛ける。


「おめでとう、これは第一神殿の試練を終えた証でもあるの」


そう言い、スニージーとウインの首へも同じデザインのネックレスを掛けた。


「このネックレスはプニの祝福が掛かってるから、これを掛けてる限りあらゆる状態異常

を防ぐ効果があるよ」


……あらゆる状態異常? 何それ?アクセサリーが持つ付与効果にしては強力過ぎない?

ほ……欲しい……かも。


「さて、貴方達三人には次なる試練を受ける機会が与えられるわ。もちろん、受ける受け

ないは貴方達の自由よ。では言うわね?


次の試練が行われる場所はプニ第二神殿となります。

そこは精霊宮と呼ばれる場所で、この世界のどこでもない異界に存在するの。

精霊宮の入口は誰にも知られることの無いよう秘匿された場所に在り、創世の光を宿した

真白きエルフが守護しているわ。 その場所を運良く見つけることが出来たなら、プニ神

の御心へさらに近付くことが出来るでしょう」




ん? んん??




「ねぇねぇ? それって、もしかして……ハイエルフだったりするわけ?

そんでもって、生命の木のウロが精霊宮の入口だったりしちゃうんだ?」


わたしがそう言うと、ユミカはギョっとした顔で向き直り、そして笑いかけて来た。


「うふふふふふふふ」


ユミカが不気味だ! でもここで引いてなるものか! なのでわたしも笑い返す。


「ふふふふふ」


「アッハッハッハッハ、そうか、またか! またお前が試練をぶち壊すんだな!!」


「いや、だって、ソコってわたしの生まれ故郷だしっ!!」


わたしは身の危険を感じ、ユミカから逃げる。


「まてコラ!!」


「キャーーーーっv」






ひとしきり、はしゃいで逃げ回ってから真面目さを取り戻し、ユミカに尋ねる。


「ね、ところで飛行機は?」


「工房だよ。隣の書斎から階段を下りた場所だね」


わたしは言われた通り、隣へ通じる扉を開け……


そこはお宝の山だった!!

そこに置かれてある全ての本・魔道書から力の波動を感じる。

思わず手が伸びると、


「はい、はーい、ここの本は禁書で~っすv。お手を触れないようお願いしま~っすv」


ユミカに注意される。

ちぇっ ケチねっ!!




階段を下りると、そこはちょっと広めのスペースで、如何にも工房だった。

様々な、ちょっと見ただけではなんだかよく判らない工作機械が部屋の一画を占めている。

おそらくそれらも魔道具で宝具なのだろう。

そして肝心の飛行機は……無かった。アレ?


いや、よく見れば部屋の隅っこのほうに……ソレは置いてあった。

ぱっと見で、『メッサーシュミットMe262』かと思った……が、よく見るとジェット

エンジンでは無い、プロペラエンジンが二基取り付けられている。

これ……これってマサカっ!?




護鷹ゴオウ




そう、その飛行機はかつてそう呼ばれた機種だ。世界に唯一つだけの戦闘機。


日本がドイツから世界初ジェット戦闘機メッサーシュミットMe262の設計図を入手し、

純国産ジェット戦闘機「橘花」が生み出されたことは有名だが、その影で作られた機体に

ついてはあまり知られて居ない。

皇紀2605年、つまり、西暦1945年、設計図からデットコピーでMe262を一機

だけ製作している。

この、ある意味日本製Me262には肝心のジェットエンジンが存在してなかった。

ドイツからの設計図には心臓部のジェットエンジン部が書かれて無かったためだ。

そのため、当時最新型の高性能レシプロエンジンを無理やりくっ付けてキ-127局地型

戦闘機「護鷹」として生み出された、世界に一機のみ存在していた試作戦闘機。


全体的フォルムはメッサーシュミットMe262であり、主翼下の本来ジェットエンジン

が取り付けられるべき所にはプロペラ発動機ハ45Ⅲ型が二基取り付けられている。

計4200馬力を得たこの機体は、皇紀2604年のキ-84四式戦闘機「疾風」が持つ

ハ45型2000馬力で叩き出した記録高度6600mで660km/hを大きく上回り、

実に840km/hを記録したとある。

本家メッサーシュミットMe262が高度6000mで870km/hだったことを考え

れば護鷹の速度が驚異的だったことが解る資料だろう。




ハァハァ、興奮のあまり思わずオタク女の顔を覗かせてしまったわ。

そう、ここに置かれているのは護鷹……の1/10スケールモデルだ。


って、フザケンナーっ!!

騙された!? ゴルァ~! プニ出て来ーーーーーーい!!




「ちょっと、何吼えてるの?」


「どういう事よ!? これじゃ乗れないじゃないのーーーっ!!」


「あれ? プニはそれ大きくして乗ってたよ? たしか笛吹いて。その辺に落ちてない?」


笛? その辺? どこだどこだ?




見回すと、作業机の上に宝玉とインゴットが置かれてあるのを見つけた。

近づいてみると、それらからは物凄い魔力を感じた。

スターサファイアが二つ

スタールビーが二つ

ファイアーエメラルドが二つ

そして、大粒のアレキサンドライトキャッツアイが一つ

ひと抱えほど積まれたインゴットは、銀色に神々しく眩く輝いて居た。


「なっ 何これ……」


手を伸ばすと『ピカッ』と光り、宝石達は輝きに包まれて空に浮かび上がり……


『『『『『 ゴゴゴゴゴゴ 』』』』』


重い音が辺りに響き渡ると、部屋の一画の壁が大きく開いた。

そこは滝の裏側だった。壁が開くのと同時に、大量の滝の水も割れて行く……


輝きに包まれた宝玉達は開いた壁から外へ飛び出し、そのままどこかへ飛び去った。

後にはアレキサンドライト一つだけ残して。

唖然としていると、アレキサンドライトのキャッツアイ効果がキラリと輝き、壁が閉じた。




「……えっ?」


展開に着いて行けなかったわたしは、しばし呆然とした後、残されたアレキサンドライト

へ目を向けると、宝玉の下敷きにされてメモが置かれてあった。


「1/1スケール護鷹の召喚笛は俺が持っている。後で取りに来い。

それと、今見せたお宝は精霊宮の試練を突破出来たらくれてやろう。

このアレキサンドライトは手付けだ。好きに使うが良い。

                                      プニ」




あう。最初に良い物を見せて、それで釣ろうって魂胆なのね!?

でも、あのスターサファイアとスタールビーはぜひ欲しい……それにあのインゴット。

精霊宮が故郷の村に在るなら、置きっぱなしの魔道具を使って、あれで双剣を創れば……

むー、神の策略にハマッテル気がすれど、それでも抗いがたい魅力的な報酬だ。






ニブルヘルの街に戻ったわたし達6人と美少女戦士ユミカは、街人のお祭り騒ぎに出迎え

られた。


「試練が終ったら宴を行うのがここの伝統行事なのよ。気兼ねなく参加してちょうだい」


ユミカがそうわたし達へ言うと、世話役のランスが進み出てきて祭りの始まりを告げる。

わたし達、そして、街人達は山と振舞われた料理を食べ、山車や踊りを見て楽しむ。


街人の中には、ダンジョンで見かけた顔も幾つか見かけ、彼等は気軽に声を掛けてきたり

肩をすくめたりするも、斬られたことに対する恨み節は何も感じさせなかった。

そして、サーシャとその母親のレイシャとも顔をあわせたが、無邪気なサーシャの笑顔で

全てのわだかまりを取り払われた感じだった。

レイシャは夫がこの土地出身であり、結婚後直ぐに夫に先立たれ、お腹の中にサーシャが

居ることが判り、遺言に従ってこの街へとやって来たのだそうだ。

だが、重いお産で体力を失ったレイシャは危篤状態の時に、プニから罰という形の救いを

受け、死した後でもサーシャを育てられているのだと言う。


つらくないの? と聞くと、彼女は言う。


「心臓が動いて無いだけで、自分でも生きてる時と違いが判らないくらい、何も変わらず

同じように生活出来るんです。 それに……いつかこの子が年老いた時には、あたしの方

が必ず先に往けるハズなんです。プニ神は子供の骨を親に拾わせたりはしませんから。

それにこの街は、困った時は街ぐるみで助けてくれるんです」




「リアちゃ~ん、おめでとーーーっ!! さすが俺のリアちゃんだぜぃ」


「へ? あ、ランサー、アンタなんでここに!?」


「なんでって、俺ら、ここの出身なんだぜぃ!」


彼の目線の先には商人のエルロッド氏も居た。

心なしか、エルロッド氏は顔が青ざめて、何やら慌てているようだ。

世話役のランスと真剣な顔で何か話し合っている。


わたしがそっちを見ていることに気付いたランサーは、


「ま、リアちゃんには伝えておかないとな。 実は……昨日の朝、バルザック砦を攻めた

帝国軍4万が敗走したと、さっき連絡が入ったんだ。魔王軍はそのままノースアイゼン砦

に攻め込む勢いで迫って来てる。砦を護る帝国軍は戦力のほとんどを失ってるからヤバイ

らしい。勇者と皇女殿下が砦を護っているらしいが風前の灯だってね。俺っちもこの国の

傭兵としてこれから船で砦へ応援に向かわなきゃならない。

この辺りもきな臭くなりそうで、街のお偉いさん達は対応に追われるだろうよ」


わたしの後ろに居たジルとリアラ、それにウイン達が息を呑んだ音が聞こえた。


「……自信満々に攻め込んだ割りにあっけなかったわね。負けた理由も入ってきてる?」


「ああ、なんでも単純に魔王軍が帝国軍より数が多かったらしいのと、なんて字なのかは

判らんが、ソウゾウ魔術師とかいう精霊を使役する魔将軍が、毒を撒き散らす攻城兵器を

使ったんだと。その毒には神聖術の『解毒』も精霊術の『清浄』も効かなかったらしい」




『解毒』が効かない毒かぁ。

カズヒサとニアの手には負えない事態かな?




次話はクリスマスにはアップしたい。<自分へプレッシャー掛けとこう。

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