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34ページ目 地の底へフェードアウト


34ページ目 地の底へフェードアウト




「プニ神の立て札? あぁ、アレを見にいらっしゃったのですか。

アレは有名ですからなぁ。もっとも地元の人間は見に行かないんですがね。

いつでも見に行けると思ってると逆に行かないもんなんですわなぁ」


エルロッド氏は腹黒い所もあったが、話好きのオジサンで愉快な人だった。

わたし達はキャラバンでの4日間ですっかりグランザールの見所を教えて貰っていた。




4日目、商人エルロッドと、お調子者ランサーと別れ、その足でまずは現場の下見に行く。

グランザールは巨大な「コ」の字型の奥まった場所に滝があり、その滝壺へと圧倒的な水

が落ち込むところが雄大に見下ろせられる形で歓楽街が広がっている。

大自然の中に滝があるかと思いきや、歓楽街に囲まれて滝があるのは本場のナイアガラと

一緒なのね。


プニ神の立て札がある祠は、流れが滝へと落ち込む手前、中洲に建っていた。

中州を経由して両岸へ橋が架かっており、滝の流れ落ちる所を上から眺めるスポットとも

なっている。 まだ昼間なので、この中州にも大勢の観光客が訪れていた。

時々、滝の上に虹が掛かる時があり、祠からその虹を見たカップルは幸せになれるという

噂だった、すっごく眉唾な話だけれど、この祠を訪れている若いカップルは多い。


わたしにそれを語って聞かせたのはランサーだ。


「リアちゃん、一緒に行か「それより、アンタこの後どうするの? 街に戻るわけ?」

くは~厳しいな、でもそのSッぷりがイイ。 あー、まだエルロッドの旦那にはここでの

仕事が残ってるからな、それが終ったらアイゼリアに戻るさっ まだ数日は居るぜー」


正直どうでも良いが彼は情報通だ。先のノースアイゼン砦への出兵の話もランサーが掴ん

で来た情報らしい。性格はおちゃらけてるが、その情報が正確なのは自他共に認める所。






その日は宿屋に泊まり、次の日、朝食を食べ終えて太陽が十分昇った時刻の頃、祠の洞窟

へと入った。

観光客が見物している「この先危険」という立て札を、わたし達は無視して奥へと進む。


「お、おい。 やめとけって。あぶないぞっ!!」


親切な観光客には「ありがと~」と言ってエルフ・スマイルをサービスしといた。

「ありがと~がと~と~」と残響音が響く中を、わたし達は奥へと歩む。




洞窟は程なく下り坂となり少し進むと10mほどの亀裂が在った。

その上に吊橋が掛かっているが、橋の向こうに蠢く影が見える。

見た目は普通の人に見える、が、動きはゾンビのそれだった。

『影視』を掛けているのでこちらからは向こう岸が丸見えだ。

向こうからは見えないハズだが相手が死霊ならば暗くても視界は関係無いだろう。


先頭を歩くウインが右手で指を5本立て、すぐ2本にした。7体居るという合図だ。

横を歩くジルへ目で合図を送り、一緒に橋の手前まで移動する。

事前の話し合いで『ヘイスト』は敵が少なければ掛けないことに決めてあった。

身体への負担が大きいからだ。なのでここは『パーティーセット』頼みとなる。




緒戦では敵の強さを調べるのが第一の目的。

レティが対岸の一番手前に居るゾンビに矢を撃つ。

風系魔法は使わない。強力過ぎて大きな反響音が響くから。

死霊がどこまで賢いか判らない今は、緒戦から大きな音を立てるのは得策では無い。

それでもダークミスリル弓の一撃は強烈だ。一体目は胸を射られて上半身が吹き飛んだの

が見えた。

洞窟の中ではあるが、風の宝玉も光の宝玉もあるので、精霊を呼び出す事への制約は無い。

ゾンビ達はこちらの攻撃に気付き、わらわらと寄って来るが橋は横にギリギリ2体並べる

幅はあるのに、ゾンビ達はそれほど賢く無かったようだ。

まとまって来ずにバラバラのタイミングで橋を渡り、こちらに飛び掛って来る。


ウインとジルはそれぞれ一体ずつを余裕で受け持ち、さほど時間掛からずに倒しきった。


「思ったほど強くないけど、それにしても汚いなぁ」


わたしは手持ち無沙汰で暇だったこともあり、以前から研究中の魔術式を試してみた。

なんというか、ゾンビ系の色々と飛び散った物を踏みたく無いって気持ちも強いのもある。


『リニア』


この魔術式は『飛翔』の力場を利用して、周囲の障害物と力場の間に生まれる斥力を使い、

周囲の物体に接触しないでオートパイロットの様に飛べる術だ。

まだまだ改良の点が多く、のろのろした速度でしか飛べない事もあり名前負けしているが、

この場で使うにはうってつけなのだっv






「そうだね、だけど、敵は物量で押してくるみたいだよ」ジルはさらに奥を見てそう返す。


橋を渡ったT字路の右奥と左奥の両方からゆっくりと複数の影が近づいて来ている。


「全部で10かな?」ジルは数を数えてわたし達後衛へ伝える為にそう言った。




「ここの死霊は何か変です。 次は、わたしに『鎮魂』を試させて下さい」


何かに気付いたリアラは皆にそう伝えて前に出る。


ボロボロの服を着たガイコツが両奥からリアラへと迫ってくる。


「ミラー神よ、不浄なる死したる者達に沈黙の掟を下したまえ『ターン・アンデット』」


しかし……何も起こらなかった。 


「司祭様の『鎮魂』が効かないガイコツ。 へー? ずいぶん気合入った死霊なのね??」


わたしはフヨフヨと浮いた状態でプチ高みの見物モードだ。


「いえ、違います。ここに居るのは正確にはアンデットではありませんっ」


わたしと違ってリアラはどこまでも真剣だ。


「この人達は『カースド・エターリア』、神の罰を受けてこの地に縛られ、神の御許しが

無い限り永遠に開放されない呪われた罪人達です。彼等に『鎮魂』は効きませんっ」






「ふ~、ファリナのスタミナ回復があるから今は疲れ知らずで良いけど、これ、ファリナ

が居なかったら相当厳しかったんじゃないかな?」


わたし達は橋を渡ったT字路をとりあえず右側を選んで進み、現われる新手を倒しながら

さらに奥へと移動した所で、ジルがそう感想を言う。


「言えてるな。まださほど奥に来てないのに、既に僕達の10倍近い敵と戦っている」


ウインが返事を返し、「でも、ようやく次の段階に来たかな?」


わたし達の目の前には地下遺跡の様な石造りの通路が在る。

今までは自然の洞窟を利用していた作りだったのと好対照だ。

どうやら、ここからが本番らしい。




敵も激しさを増すと考えられる。

そこで、洞窟に入ってからは働きっぱなしだったウインとジルへの助けになる壁役を召喚

させて、前面に押し立てる戦法を取ることにした。

洞窟という地形ならうってつけだろう。『スイショウキ』を召喚する。

精霊語で呼びかけると、透明なクリスタルで出来た30cmくらいの女の子が現れる。

以前聞いた所では、わたしを模して作った人型らしい。これ見るたびに複雑な気分になる。


「あ~ら? あたしを呼び出すなんて久々ねー。 お久しぶりっv、リアファリナ」


うん。ここまでで『萌え~v』とか思った人がもし居たら、ゴメンナサイって先に言わせ

て貰うわね?

言葉の最後に、カッコだみ声カッコ閉じる、を書き忘れたわ。


コイツは自称『水晶姫』、本名『水晶亀』という大地の精霊界の上位存在だ。

手っ取り早く言えば、亀のオカマである。

この姿は精霊力で作った別身(エイリアス)なのだ。


「折角呼び出してくれたのに悪いけどさぁ。あたしはここでは役立たずなのよぉ。

ここって大地の精霊力が著しく制限されちゃっててね。神の神殿が傍にあるでしょ?

そういうとこってさぁ、神力で精霊力が制限されちゃうのよね(野太い声)」


「アンタを呼び出したのは前で戦ってもらいたいからなのよ。だから剣で戦って頂戴」


「気が進まないけど、せっかく久しぶりに呼ばれたんだものね、それくらいなら良いわよ」


水晶姫は、わたしと同じサイズまで大きくなると右手に水晶で出来た両手剣を生み出す。






遺跡の中はそれまでの人型と違い、獣の集団が巣食っていた。

カースド・エターリアって言いにくいから見た目そのままで、獣ゾンビと言うわね。

獣だけあって戦闘力が比例して上がっている。

水晶姫が壁役として最初に集団の中へと飛び込み、十分注意を引き付けてウインとジルが

切り込んで倒す戦法で、危なげ無く倒しながら先へと進む。

水晶姫は見た目と異なりかなり堅く、自己修復も出来るし、精霊力で作った別身が壊れて

も本体には何の影響も出ないし、壊れても次の瞬間には別の身体を再構築して戦いに復帰

出来る。


これで召喚の魔力コストがもう少し安ければ言うことないのになぁ。

大地の上位存在を呼び出して、現世に留める魔力は半端無いものが要求されるのだ。




そうして、遺跡の中でちょっとした広場のような所に出た。

そこから通路がさらに枝分かれしている。

わたし達はここを基点に探索しようかと話し合い、見える範囲の敵を掃除し終えた頃に、

それは聞こえて来ました。




『チリ~~ン…………チリ~~ン……』


物悲しい鈴の音が小さく響いて、そして、その音は徐々に近づいて来る。


レティが音も立てずに音が鳴る方へと移動し様子を探りに行く、が、

通路の曲がり角からそっと向こうを覗くと、少ししてこちらに急ぎ足で戻って来た。


「なんかヤバそうな集団が来るよっ、明らかにボス級」


こういう時、ウインの決断は早い。


「どんなヤツらなのか解らない以上、いったんやり過して様子見したいな」


ウインはそう言いつつ、周りをキョロキョロと見回し、


「よしっ、あそこに隠れよう!!」


と指差した。その場所は広場の隅、壁が崩れた場所でちょっとした窪みになっている。

広場の中心からはその窪みは崩れた壁の残骸が視線を妨げ、見えない位置になっていた。


その窪みに身を潜め、わたしは『宿泊セット』と『隠密』を、リアラは『結界』を唱えた。

これで精霊術による気配隠蔽と、神聖術による邪な存在からの隠蔽はほぼ完璧だ。






『チリ~~ン…………チリ~~ン……』


それは異様な集団だった。


首に鈴の音を付けた、けれども頭が無い馬。『ヘッドレス・ホース』というヤツだろう。

その馬に引かれる『チャリオット』、その御者はこれまた頭の無い騎士『デュラハン』だ。

デュラハンの両脇を固めるのは、禍々しく赤い透明な身体を持ち宙を飛ぶ霊体だった。

あれは……『スペクター』の一種だろう。

デュラハンの戦車に続いて、真っ黒な騎士が2体。おそらくは『シャドー・ナイト』。

その後ろから現われたのは、手の中に何か光る物体を持ったスケルトンだった。

さらにその後ろからヨタヨタと歩いている巨体は、腐った体を持つゴーレムだった。




その集団が広場に現われると、さきほど倒したハズの獣達が、次々と起き上がる。

あの光る物体!! あの光を浴びると倒した敵が復活するようだ。

この集団は洞窟の中をたえず巡回し、あの光で仲間を復活させて廻っているのだろう。


隠れたのは正解だった。何の準備も無くあの集団に襲い掛かったとしても、倒した傍から

あの光がある限り復活され続けただろう。

あの集団が巡回する限り、ダンジョンの探索は難易度がグッと高まったことになる。




集団が通り過ぎ、静けさが戻った頃にわたし達は再度広場を掃除してまず安全を確保した。


「あの光る玉を見ましたか!?、あれからは神宝の力を感じました。

この地にカースド・エターリア達を縛りつけている力の源なのでは無いでしょうか?」


リアラが真っ先に思いつくところを話す。


「あいつ等、見た目は死霊だけど大地の奥底を流れる霊脈から完全に分離している存在よ。

デュラハンもスペクターもシャドーナイトも、死霊のそれとは見た目同じでも中身が全然

違うわね。 あたし達地霊の浄化術が効かない存在だってことは確かよ(だみ声)」


水晶姫もそう補足する。


「あの光る玉、すごく欲しい所だけど、ここは優先順位を考えるべきじゃないかしら?」


わたしがそう発言すると、ウインも同意する。


「僕もそう思う。 僕達はプニ神の地下神殿を探しに来たのであって、ここに居る死霊達、

あえてそう呼ばせてもらうけど、彼等を解放しに来た訳じゃないし、神宝を強奪しに来た

訳でも無い。ボスのような強力な存在との戦いは避けられるなら避けるべきだ」


「それで良いと思う」


ジルとリアラも頷く。


「僕達もここで死んだら、あの玉で連中の仲間入りになりそうだしね。そんなのまっぴら

ごめんだよ」


スニージーも危ない橋は渡りたくないようだ。


「勝てるか勝てないかで言えば勝てそうだけどね。 あたしはウインの判断に従うよ」


「ここが屋外だったら、わたしも戦う方に賛成するんだけどな。

スニージーの言うように、こうはなりたくないしね~」


わたしは手を広げて、周りの散乱した獣ゾンビ達をぐるりと一瞥した。






「決まりだな。それじゃっ、ここからどうする? 道は4つの方角へ分かれているんだが?

さっきの集団が向かった方向は論外だろうし、一つは入口へ逆戻りだ。

そこの階段を下りるか、そっちの分岐をあの集団が来た方向へまっすぐ行くかの2択だね」


ウインが選択肢を提示する。


「私としては階段を下りてみたいかな? 根拠は特に無いけれど」


ジルがまっさきにそう意見を言った。

言ってから、でしゃばりだと思ったのか微妙に頬が紅い。


「ジル~? もしかしてダンジョンが好きなの? 冒険モノの物語に出てきそうだものね?」


「えっ!?//// いえ、あの……あぅ////」


やっぱり! 妙に張り切ってるな、と思ったらそういう事だったか。




「他に意見が無ければ、それで行こうか。 それと各自で帰り道は覚えてくれよ?

万が一、逃げなければならない場合は、最後に頼りになるのは自分の記憶だけだからね」


ウインがダンジョンのイロハを今頃になって言う。


「水晶姫が居るから大丈夫だと思うけどね、わたしに何かあっても出口に着くまでくらい

なら魔力が保つだろうから。そんなのでも大地の精霊。ダンジョンで迷ったりしないわよ」


「そんなの、ってアンタ…… それよりも、さっきから気になってるんだけどさぁ?

リアファリナ、その魔術って尖った物体をはじく魔法じゃない? アンタとあたしの間に

もうずっと反発力を感じるんですけどぉ? それってあたしに対する挑戦?(だみ声)」


うわちゃ、そうだったのか!?

確かに尖った物に対して強い斥力が生じるように『リニア』のバランスを調整してあった。


「もう少し後ろに離れなさいよね、敵に向かって押されてるみたいで気分悪いわよっ」


うぐぐっ 言い返せない。

ええーい、アンタがトンガッテル水晶だから悪いのよっっっ






階段を下りて10mほど進むと


『足元危険』


また、プニ神の立て札が在った。ご丁寧にひとさし指が描かれ地面を指して居る。

その立て札から先にはこれまでの切り出した岩を並べただけの床と異なり、人工的な匂い

を感じさせる黒い床が続いている。

さらに日本庭園の飛び石の様に白く丸い飛び石が黒い床に等間隔で並んでいた。


「皆、止まって」


レティは全員を止め、自分ひとりで立て札の手前、黒い床の手前まで進む。

それからレティは、おもむろに洞窟の天井部分を見上げ、棒で天井部分を叩いて調べだす。


「プニってヤツはね、こういう立て札と如何にも何か意味ありげな黒い床や白い飛び石を

置いて足元に注意を払わせといて、上からトラップを落としたりするんだよ。

昔さんざん騙されたからね」


「ふふっ、懐かしい話ですね。僕達の中でレティが一番騙されてましたよね」


「そう言えば、賢者の日には毎回騙されてたよな、レティは」


スニージーとウインが内輪ネタをばらす。


「「「 賢者の日? 」」」


わたしとジル、リアラがハモった。




「毎月の月初めの日は、賢者の日と呼ばれているんだよ。プニ神殿では。

その日は公然と嘘……まぁ他愛無い物だけだけど……嘘を付いても良い日で、騙される人

が悪いって決められた日なんだ。 プニ神は『人の言うことを真に受けて失敗したら馬鹿』

だと常々言ってる神様なんだ。僕達信者は賢者の日を通じて真実を見抜く目を鍛えるって

建前があるんだ、本音はただ楽しいからなんだけど」


「レティはイの一番に皆の標的にされてたんだよね、昔はレティもスレて無くて、直ぐに

騙されてたからね」


「……もう、ゴチャゴチャ煩いなぁーっ ちょっとはダマっててよねっっ!!」


あ、レティが切れた。そりゃ真剣にトラップを探してる時に、昔の自分の至らなさを槍玉

に挙げらて、面白おかしく語られたら嫌だろう。


「ねぇ? さっきからプニ、プニ言ってるけど、それって創生神バルシータのこと?」


水晶姫がそうウインに尋ねる。


「は? いえ、違いますよ。 創生神?って初めて聞くけど。スニージー知ってるか?」


「創生神バルシータは、この世界を御創りになられたって神話に出てくる神様の名前だよ。

バルシータ神の下に、善神バルミラーと邪神バルザタンが居るって訳さ」


「創生神バルシータはお隠れになったと聞いてます。それ以後、この世界はミラー神と、

邪神バルザタンの2大神が秩序と混乱を司るようになったそうです」


リアラも解説してくれる。


「ねぇ? なんでバルミラー神と呼んだり、ミラー神と呼んだりするわけ?」


「そういえば、ナゼでしょう? ずっと子供の頃から神殿ではミラー神と呼ばれてました

から、言われて見れば神殿でバルミラー神という表現は使われて無かったですね」


「先日出逢ったダークエルフ達も邪神バルザタンの事を、ザタンと呼んでたよね……

それはそれとして、2大神ってことは、プニ神は入ってないんだ?」


プニ神って神々の中では亜流なのだろうか?


「ご、ごめんなさいっ、けっしてプニ神を侮った訳じゃなくてっ

そ、その、私はそう神殿で学んで来ただけで……」


リアラは慌てて言い訳する。


「バルミラー神と呼ばれたり、ミラー神と呼ばれたりするのはですねぇ」


スニージーだ。どうやら知識を披露したいようだ。


「かつてプニ神が『バルの名称を付けるのは禁止』だと神々相手に暴れたらしいですよ。

どうしてか、それで通ったみたいですね。以後バルを付けずに神の名が呼ばれるように

なったという話です」


「神々がそれで納得したんだ!?」 おっどろきー。


「プニ神ってのは知らないけど、この周りに広がる神力は、創生神バルシータの物よ。

さっきの光る玉からも同じ神力を感じた。 間違いないわ(だみ声)」


水晶姫はずっとそれが引っ掛かっていたらしい。

神力の違いが解るなんてさすがは上位精霊。


「あ~~~~~~っっっ もうっっっ、静かにしててっっ、それに近すぎるよ、もっと

あたしから離れ……あっ」


『『『 ガタンッ 』』』






わたしの目の前で、人工的な黒い床の手前部分、洞窟の床が突然開いた。落とし穴っ??

レティ、ウイン、スニージー、ジルとリアラ、それに水晶姫の6人? を飲み込み、穴は

すぐに元の床の状態に戻った。

一瞬の出来事だった。


わたしはさっき水晶姫に言われた通り、『リニア』の斥力が水晶姫に働かないよう離れて

いたので落とし穴に落ちず、一人取り残された。


レティが言った通り、意味ありげな飛び石も黒い床も、トラップに関係無かった。

落とし穴の仕掛けはそれらの手前に在ったのだから。

如何にもな場所と立て札を餌に、手前で立ち止まる事を想定して設置された罠だったのだ。




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