24ページ目 エルフ揃い踏み
24ページ目 エルフ揃い踏み。
草木も眠る丑三つ時。
「まてぃ今はまだ零時を少し廻った所よ。雰囲気出したい気持ちは判るけど間違ってるわ。」
失礼。
真夜中のトゲエルフは真っ暗な宿のベッドに腰掛けて薄ぼんやりしたサッカーボール大の
宝珠を手に持ち、顔の下から宝珠に照らされニタ~リと不気味に声も無く笑って居た。
「ウフフフフフ。出来たわ、出来てしまったわ。」
何が?どうでも良いけど声も無く笑ってたんじゃなかった?ナレーション間違ってるよ。
「うっさいわね。おほん。
これで世界の平和はわたしの手の平の上に在るも同然。
どうしようとわたしの、自由!! アハハハハハハ。」
ナンカ知りませんがアネゴ、そんなスゴイ物を創ってどうしようと言うんでゲスか?
「ずいぶん卑屈になったわね。それが正解よ。
そうね、創ったら使う、当たり前じゃない。そう言う訳で行くわよっ
今夜を境に、安眠出来る夜はもう二度と来ないと知れっ!!」
パタン。
アネゴ、アネゴ、何そんなに静かにドアを開け閉めしてるんでゲスか?小心者デスね。
「うるさいだまれっ(小声)、独り言いってるの見られたら恥ずかしいでしょ。」
躁状態での、脳内ナレーションはこれにて終了----
ここはこの街に最初に来た時に野宿?した、『周りから誰にも見られない屋根の上』。
この時の為に用意した小さい樽を目の前にどっこらしょと置く。
この樽の中には『赤ネアンの実』と『タラチの種』を粉末状にした物をそれぞれ袋に入れ、
樽いっぱいに詰め込んでいるのよ。
『赤ネアンの実』も『タラチの種』もここ港街アイゼリアの特産品とも言える物なの。
どちらもこの地で取れた物ではないけど、海路でこの街に運び込まれここを経由して各地
に広まって売買される品物で、手っ取り早く言えば『赤唐辛子』と『黒胡椒』よ。
おっと、樽の底板を最終チェックよ。外れやすくしとかないとね。
そして、運悪く、底板がなぜか外れた際に、あら不思議、袋にしまわれているはずの、
『赤ネアンの粉』と『タラチの粉』がちょっといえ多少いえ結構ブチまけられちゃったり
しても、それは事故よね。
わたしは四次元ポシェットから先ほどのサッカーボール大の宝珠を取り出して準備する。
この大宝珠には、わたしがこれまでに危険物認定した魔術式が数多く詰まっているのだ。
そんな危険な物、形にしておくなって?
ごもっとも。でも苦情は受け付けない。だって、
「趣味なんだも~~~ん。『ボイスコマンド、CIC起動』。」
『声紋認証OK、オーラ認証OK、魔力波認証OK、リアファリナ確認しました。
パスワードを入力して下さい。』
わたしだって趣味とは言え、別に世界を滅ぼしたいわけじゃない。
危ない魔術式はそう易々とは起動できないよう、厳重にセキュリティーを掛けている。
パスワードは、わたしが好きな言葉を"日本語"で音声入力しなければならない。
ハイテクとローテクの組み合わせなだけにこの世界でこのセキュリティーを破れる者は
まず居ないだろう。
『故に善く兵を用うる者は、人の兵を屈するも、戦うにあらざるなり。
人の城を抜くも、攻むるにあらざるなり。人の国を毀るも、久しきにあらざるなり。
必ず全きを以って天下に争う。故に兵頓れずして、利全かるべし。
これ謀攻の法なり。』
『パスワード確認。Combat Information Center起動します。』
正直、わたしはこれまで世界征服が出来る魔術式はそれなりの数と質を創っていたのだ。
だが、現実それらの危険な魔術式を使えるか?というと実は最後の決め手が足りなかった
のである。その決め手となる魔術式が今夜完成したのだ。
それは何かというと、
今、わたしの周りに広がっているコレだっ!!
半ドーム状の全天スクリーン。本来足元を含めた球状スクリーンが展開されているが、
ここは屋根の上なので足元は見えない。
わたしを中心とした360度に港町アイゼリアの風景がスクリーンに映っている。
わたしは東を向いておもむろに両手を前方へ突き出す。
すると全天スクリーンはそのカメラ位置を東へ移動させる。
もちろん全天スクリーンそのものはわたしを中心としたままだ。
カメラ位置だけが移動しているのだ。
この全天スクリーンは、わたし以外にもこの場に人が居れば見せることが可能だ。
ただし、わたしが許可した人間にのみ。わたしの傍に居れば無条件に見れるという物では
ない。なぜならこのスクリーンは、物理的に存在するスクリーンでは無いからだ。
光の精霊がカメラ位置で捉えた光学情報をわたしの視覚に映し出し、わたしが見た映像を
わざわざ精神の精霊でわたしの傍に居る人間にも同じ映像を見せるようにしている。
この仕組みはこの映像をわたし一人で楽しむなら無用の物だ。
だけど、わたしはこの魔術式を戦略的位置付けとして創っている。
大人数で見れない戦略級魔術式に何の意味があるものか!?
この魔術式は他人に見せるつもりは無い。おそらく一生そんな機会は無いだろう。
意味の無いこだわりではあるけれど、こだわりってそういう物でしょ?
さて、カメラ位置はもの凄い速度でここから東へ遠ざかっている。
スクリーンに映る景色は、慣れない人間が見たらそのあまりの対地速度で気絶するくらい
のスピードで移動中だ。光の精霊だけに物理的に飛んでいく速度とは桁が違う。
東のラクト山脈を越え、さらに東へ。
前方に突き出した腕を納め、わたしはスクリーンに映っているものを見て笑った。
「こんな夜中に空から眺めて地形が判るかーーーっ。」
しばしカメラが迷子になったのは、ひ・み・つ☆
「ふぅ。やっと辿り着いた。」
今、スクリーンには闇の中にほのかに白く浮き上がる不思議な色彩をしたエルフが映って
いる。顔は女性に見えても男には見えない。歳は20台半ばに見える。
この美貌の主はティルト村の長老で、村で唯一人の廃エルフ、もとい、ハイエルフである。
名をアサーシオン・ルシル・ネイヴァン。
『始めの光』という精霊名を持っている1万歳とも言われる年齢不詳のクソジジィである。
ここまで来ればこの全天スクリーンがどんな役目を果たすか判ってもらえただろう。
遠く離れた、具体的にティルト村まで約2000kmの距離でも、光の精霊経由で鮮明に
映し出す事が出来るのだ。
そして魔術式は目に映って居る物であれば、それを目標として攻撃する事が可能。
そう、この魔術式『CIC』は超長距離攻撃の文字通り"目"なのだ。
これが無いと、どんな強力な魔術式でも大した距離を狙えないので自爆術になってしまう。
「ターゲット、ロックオン。目標クソジジィの枕元の柱。」
特にそんな事を口に出す必要は無いけれど、わざわざ口に出して言うのが楽しいのよっ
い~や!気合を入れないとこのクソジジィの魔法障壁は破れないっ。
魔法障壁が防ぐのは魔力と魔術式なので、宙を飛んでいく樽のような質量を伴った物体は
素通しとは行くまいが、質量による慣性で魔法障壁に遮られず越えていく。
そしてトドメは『赤ネアンの粉』と『タラチの粉』だ。
「死ねっ(ほど苦しめっ)、クソジジィ!! 大陸間弾道弾『エアミサイル』。」
樽がバビュ~~ンと音を立てて飛んで行きました。あっという間に見えなくなる。
『エアミサイル』は風霊の力を借りて目標に必ず命中する魔法の矢を飛ばす魔術式だけど
今は矢の代わりに樽を飛ばしたのよ。
ミサイル系統魔術は多い、『フレイムアロー』『アイシクルランス』『アースジャベリン』
魔力の塊を飛ばす『マジックミサイル』、広い意味では『ファイアーボール』も含まれる。
その中でも、物を飛ばすのに秀でているのが『エアミサイル』というわけ。
樽には姿勢安定板を兼ねた羽が当然航空力学を考えた形状で取り付けられている。
風霊は樽の姿勢と速度さえ維持してくれれば、樽は空力で飛ぶため重量を支える魔力消費
を最小限に押さえられる、のでおおよそ2000km先まででも飛ばせるのだ。
さすがに羽が無いと樽を超長距離飛ばすのは無理だ。
そして『エアミサイル』魔術式の構造的特徴は、魔力を"ツケ"に出来ることだ。
だいたいこんなモンという大雑把な量の魔力を最初に風霊に与え、後は仕事が終ったらね、
という出来高払い式なのだ。
もちろん普通はこんな事は出来ない。
わたしの『風の宝珠』に棲んでいる風霊だからこそ許された芸当だ。
出来高払いじゃないと正確な距離を掴んでいる訳でもない超長距離攻撃の魔力はドンブリ
勘定になってしまうので、必要量以上を消費してしまう。
そして。。。。。CICには相変わらずグースカピーと寝ているクソジジィが映っていた。
「え~~っと。時速500kmとして・・・・到達は4時間後くらい?明け方か。」
とりあえず寝よっと。こんな時に睡眠を取らなきゃならないのって残念だわ~~。
クソジジィの苦しむ顔が見れないなんて。ニヒヒ。
そしてわたしは明日の朝が楽しみだ、と思いつつ宿に戻り眠りに付いた。
さすがに超長距離の『エアミサイル』は一発で相当な魔力を使ったようです。
ばしゃっ
「はぶわっ、ぶへっ、ゲほっ、ぶわっげほげほっ ぺっぺっゲホゲホッ
な・何?何なの!? あぐっやだっペッペッ。くち、口に入った。ペッペ」
寝ている所に何か液体がぶっ掛けられたようです。
一体何があったの???
「もう、何なの!? ってか、何これっ!?」
ベッドは辺り中、真っ黒です。
シーツも真っ黒、やだっパジャマも真っ黒。
あ、顔っ!?
「やだー、何よ、これ、顔も真っ黒じゃないっ!?」
というか、もう全身真っ黒け。顔を拭いた手も最初から黒いのか顔が黒かったのか区別が
付きませんっ
と、そこへ天井からひらひらと白いものが降って来ました。
紙?とっさにそれを指で挟んで取る。そこにはなにやら文字が書かれていました。
『残念賞』
「クッ、クソジジィぃぃぃいいいいいいい。」
というか、わたしの"生きた鎧"にも反応させず、精霊達の護りの中どうやってこの黒いの
をわたしにぶっ掛けたの!?
精霊達はこぞって「わかんない。」って言ってるし。。。
というか、どうやってわたしが居るこの場所突き止めたの!?
というか、まだ太陽が昇って間がないじゃない。
わたしの樽攻撃が届いて直ぐにこれなの?反撃してくるにしても超速過ぎっ。。。。。
バシャバシャバシャ、グルングルン。
朝焼けの光の中を『全自動』でパジャマとシーツその他を洗っているわたしって(涙
あの黒いのは墨汁でした。わたしの部屋の隅に置いてある机の上に在ったヤツだ。
墨汁を水球に混ぜて増量し、寝てるわたしにぶっ掛けたのだ。
そこまで判明すればクソジジィの共犯者も判りました。
水霊です。
わたしに害は無いからとクソジジィに説得され、ここしばらくお酒のせいで鬱憤を溜めて
いた水霊はクソジジィの悪戯に加担し。。。。
未だに、どうやってここを突き止めて、さらに不審者に即座に反応する"生きた鎧"を反応
させなかったのかまでは判明してませんが、やはりクソジジィは侮れない。
そんな事を考えていたときに、
「あら?リア早起きね、何してるの?」
そう声を掛けて来たのは宿屋の看板娘、エレノアでした。
「え?シーツ洗ってんの?やだ言ってくれればあたしが洗った。。の。。。に。。。」
どうしたの?
「・・・・・・ねぇ?リア、もしかして・・・世界地図?」
なっ、ばっ
「ち、ちがっ/////」
「やだぁ、あはははは、リアったら。可愛い!!誰かに見つかる前にお洗濯してるのね。」
「ち、ちがっ/////」
「うんうん、だ~いじょ~ぶ、誰にも言わないから。あははは。」
「ちょ、まっ・・・・て。。」
あぁ行っちゃった。。。。くぅ、クソジジィめーーーーーーーっ/////
ところ変わってここはティルト村。
「おはようございます長老。リアファリナから便りが届いたとか聞きましたが?」
「ああ、みなさん来ましたね。ええ、リアファリナが香辛料を送って寄越したので、
みなさんに配ろうかと思ってお呼びしたのですよー。」
「あの娘の事だからまた何か悪戯しませんでしたか?」
「あははは、ええ、ちょっと危なかったですねー。
でも、ここまで荷物運びに酷使されたあの娘の風霊さんにいつもの様に協力してもらって
居場所を突き止めましたー。あの娘は今、大陸の西側にある街に住んでいるようですよー」
「大陸の西。。。そりゃずいぶん遠くに。」
「そうですねー、風の精霊界を通ってあの娘の傍へ行きましたけど、いつもの様に守護者
があの娘を護って居たので、風の精霊界から水の精霊界へ渡って、あの娘の水霊に協力を
お願いして悪戯やり返しときましたー、あの娘の守護者は良く出来てるけど、精霊界まで
は目が行き届かないみたいですねー。あの娘の枕元に立っても界を隔ててれば反応しない
のは学習済みですー。それにあの娘の結界内に元々あった物で致命傷にならない物ならば
悪戯し返しても平気なのですよー。あははは。」
「はぁ、でもそんな事が出来るのは長老くらいですよ。」
「うーん、そろそろ私も本気で危ない気がするので、もし私が不審な死に方していたら、
犯人は間違いなくあの娘ですからー、その時はあの娘に責任取って貰って、長老役を押し
付けちゃって下さいねー。あははは、これ遺言ですよー。あの娘にも伝えて下さいねー。」
笑い話じゃないでしょうに。
ここに集まった村人はみんなそう思った。
と、そこで一番歳が若そうな若者が発言した。
「長老、リアファリナの居場所が判ったのなら、ここへ帰るよう説得して頂けませんか?」
「おやおや?あの娘がここを出て行ったのは、あなた方が弄り過ぎたからでしょう?」
別な、見るからに年配のエルフが口を挟んだ。
「長老、冗談ごとではありませんぞ。リアファリナはここ20年で唯一人生まれた娘だし、
あの娘以外はみな男子。今はまだ目立ってませんが、100年後には嫁不足は深刻になり
ますぞ。というか、リアファリナを弄り回してた筆頭は長老じゃないですかっ!!」
さらに別な者も口を出す。
「そうです、それで無くとも、リアファリナはこの村一の器量良しオルフィーナの娘で、
息子の嫁にと狙って居た者も多く居るでしょう。一刻も早く呼び戻すべきです。」
先の若者が後を引き継いで発言する。
「若いヤツ等はみんな呆然としてましたよ、リアファリナが出て行ったときは。
長老が出来ないなら、俺が行って連れ戻して来ますよ。詳しい居場所を教えて下さい。」
「そもそも、ランドールんとこの小倅だろ?『対精霊空間』と言ったか?あの程度の結界
でワタフタしよって情けない。自分の修行不足を棚にあげてリアファリナを責めるとは。」
「そうとも、精霊祭ん時の炎の精霊ダンスや、雪祭りでの除雪魔術式とか、しょせんは、
子供の可愛いイタズラじゃないか!!あれごときで若いヤツは愚痴言い過ぎだっての。
ほれ、洪水の時に水龍を呼び出して川の流れを変えた時なんざ、ラフィーザのとこの息子
が化け物呼ばわりしただろ。村を救ってくれたのにあれじゃ、リアファリナじゃなくても
嫌気がさすわな。」
「まーまー、みなさん、雪祭りでは雪が無くなっちゃって皆困ったじゃないですかー、
炎の精霊を呼び出して花火で楽しんでた所までは可愛いかったけれど、挙句暴走させて、
村人総出で一晩中炎の精霊を宥めて廻ったりもそう。
あの娘の悪戯には実際困ったものでしたよねー。あははは。」
「皆リアファリナに精霊術で負けたから悔しかったんですよ。狙ってたヤツ等は特に。
セフィーもあれからゴーレム相手に修行を続けて『対精霊空間』の中でもなんとか精霊を
呼べるようになりましたしね。ラスターも水龍とまでは行きませんが水の高位精霊を呼び
だせるまでもう一息ですよ。皆帰って来て欲しいんです。」
「まー、その件は、折りを見てリアファリナに話しかけてみますねー。
それはそれとして、もうすぐ生まれるネリッサの子ですが、女の子ですよー。」
「「「「 なんですって!! 」」」」
「どうやらリアファリナが、ネリッサに男女の産み分け法と言うのを教えてあげたみたい
ですねー。なんでも女の子や、男の子が生まれる確立を高める方法があるのだとかー。
ネリッサは恥ずかしがって教えてくれませんでしたけどねー。
その方法が広まれば、やがては村の娘も数が増えて行きますよー。」
「そいつはメデタイ。おっとメデタイと言えば・・・・」
村人の話がリアファリナから外れて世間話に移っていく、
それを横で聞き流しながら長老は、
「この村ではあの娘は大事にされ過ぎて腫れ物扱いですからねー、それをやっかむ者も
居るし。先日の夢の中では、あの娘が『眠れぬ大樹の王』に喧嘩売ってた姿が見えた件も
気になりますしねー。夢幻界で何やってたのやら。大事にならなければ良いですが。
やはり、もうしばらくは様子見しましょうかねー。」
何より、あの娘は頑固だし。と、先ほど見たまだあどけない寝顔を思い浮かべた。
あの娘の精霊には、あの娘の次くらいには好かれている自信が有るので、もうしばらくは
悪戯合戦でも優位を保てるかしらー?、などと考えながら。
そして我等がトゲエルフは今日もよろず紹介所へと顔を出したところです。
「おはよー、おやじさん。。。おっと、お客様なのね。」
「おっ、良い所に来たなリア、ちょっと待っててくれ。」
「はいなー。」
おやじさんと話をしているのは女の子二人組みだ。
片方は。。。エルフ?いえハーフエルフね。
もう一人も若い。16-7歳かしら??
わたしは、なんか良い物件は無いかと壁に貼られた依頼書を見て時間をつぶすことにした。
「待たせたな、リアちょっとこっち来てくれ。」
そして、おやじさんは女の子二人組みに向かって話し出す。
「今来てもらった女性は、うちのピカイチの精霊術士でリアファリナ。
リアファリナ、実はお前さんにこの二人と組んで欲しいんだよ。どうだい頼めないか?」
あら?この物言いは。。。訳有りみたいね。
「そうね、まずは一度組んで仕事を一緒にしてみてから決めましょうよ。
相性とか色々あるでしょ?その辺を多少感じてから決めた方がお互い良い結果になるわ。」
「こんにちは、ウェンリアラと申します。見ての通りハーフエルフの神官ですわ。」
「初めまして、リアファリナよ。」
「初めまして、ジェラルディ・イライザ・・・です。よろしく。」
イライザが家名の訳ないし、あからさまに家名を隠したわねぇ。
エルフ・スマイルを送ってから、
「よろしくね。」
と言っておいた。
明日の日の出とともに、ここから南へ3日の距離に出現しているというゴブリンを退治に
出かける仕事を請け負った。ジェラルディが剣士で、まずは修行をさせたいのだそうだ。
わたしとウェンリアラ、そして、ジェラルディは幾つか約束し、今日はそれで別れた。
明日の日の出前に南門集合だ。
二人が店から出て行ったのを確認し、おやじさんに話しかける。
「で、今度はどんな厄介事なの?」
「それについては、私から説明させてもらうよ。」
おやじさん達、お店関係者以外立ち入り禁止の店の奥の方から渋い声が掛かった。
出てきた男性は。。。。ナイスミドルv
「また貴族絡みなんだ。」
「わはは、まぁそう言うな。お前さんじゃなければならない理由もあってな。」
「そればっかりね。とりあえず話を聞こうかしら。」
内緒話なのだろう、店の奥にある小部屋に移動する。
「座ってくれ。」
おやじさんが声を掛けて、みんなが着座する。
「つまり、娘の護衛をして欲しい。ということね。」
目の前のナイスミドルは、ローランド・フォン・リーベフェルマ伯爵と名乗り、家出娘の
ジェラルディの父だそうだ。娘が冒険者に成りたくて家出して、困った伯爵は昔一緒に旅
をした仲間のおやじさんを頼ってこのよろず紹介所に来た。そこへひょっこり娘さんまで
やって来た訳ですね。うんうんテンプレ通り。
そんな訳あるか!と怒鳴ったら、ウェンリアラというハーフエルフが父娘の橋渡しをして
いるそうで、この店に寄ったのも伯爵とこの店の関係を知って居たからであり、伯爵側も
冒険者で生活するならよろず紹介所、という訳でこの店に事前に連絡を入れていたそうだ。
二人の特徴を伝え、店を訪れたなら連絡して欲しい。と。
また、娘の冒険者家業を頭ごなしに反対するわけでもなく、優れた護衛を雇って、二人と
一緒に行動してもらえるよう頼んでいたそうだ。
「でも、ずいぶん大げさね。娘さんの護衛だけにしては用意周到さを感じるけど?」
「理由は幾つかあるんだよ。我がリーベフェルマ家は、この帝国でも大きな権勢を誇って
いる。表向きには家督を継ぐのはジェラルディ唯一人なのでね。」
「表向きには?」
「ああ、ハーフエルフのウェンリアラも私の娘だ。詳しい話は聞かんでくれたまえ。」
庶子では家督は継げないしね。
ハーフエルフは20歳くらいに見えましたと言うことは実年齢は25歳くらい?
エルフもハーフエルフも20台半ばくらいまで育つと、外見は死ぬまで老いなくなる。
「娘には好きな事をして欲しい気持ちがあるが。。そうも言ってられない事情もあってね。
せめて私が元気な間くらいは黙認してあげたいのさ。
そして二人とも私の可愛い娘だ。なるべく怪我なんてして欲しくないと考えるのは親馬鹿
だろうかね?」
「はいはい、それで貴方のお家が権力持ってて、ジェラルディがあととり娘だと何が都合
悪いわけ?親族がジェラルディを亡き者にしようとしてるの?」
「そういう可能性があるというだけだよ。今のところはそんな動きは無い。
それに、君が娘の護衛に付いてくれれば、それだけで抑止力になる。
君の事は、サフィニア姫様との武勇伝を通して私も聞いているよ。
姫様の通行証で魔法研究室に出入りしているそうじゃないか。
幸か不幸か君に手を出す事はサフィニア姫様、ひいては皇家に弓引くことと一緒なのだよ。
それに先だってはメイロー子爵家の嫡男を助けたそうじゃないか。
子爵家もこの帝国内で相当な権勢を持っている。
その子爵家と懇意にしている者に敢えて手を出そうなどと考える者は限られてくる。
どうだろう?我が二人の娘の事もぜひ頼みたい。」
「返事は既にあの二人にしてるしね。ま、やってみましょうか。」
話はまとまり、わたしも明日からの遠出の準備をしますかね。
そうして、よろず紹介所を出て宿に帰ろうとした時に、
「またなリア、今夜は寝ショベンするなよ(笑 」
「なななっ///// どこでその話をっ??」
「どこって、どこでもさ。かなり話し広まってたぜ?ランサーが市場でエレノアに聞いた
とかであちこちで吹聴していたなー。」
「違うー、違うのよーーー。」
そんなことを言ってた時でした、
『ふぃぃぃぃぃいいいい』
!!!ジャミング!!!
『フレイムアロー』などのミサイル系統は目標位置に対し、誘導するための式を貼り付け、
攻撃魔術がその式を目標に飛んでいくわけです。
わたしの"生きた鎧"はこの目標誘導式が、わたしを含む周囲10m以内に発生すると、
誘導式を妨害する対抗魔術式を自動生成します。それがこのジャミング機能。
『ズガーーーーーン』
向かって左手、20mほどの通りを挟んだ建物の屋根の上で誤爆してますっ!!
目標の誘導式が不自然に消えた事でミサイル系統魔術式が誤作動したようですねっ
どうやら『ファイアーボール』のようです。
『飛翔』
わたしが急ぎ屋根の上に上ると、そこで見えたのは、
焼け焦げて倒れている男と、
一瞬だけ姿を捉えることが出来た、屋根の上から飛び降りようとしている小柄で肌が黒い、
「ダークエルフ??」
でした。