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「はぁ、知識欲の命じるままにアレコレ調べものが出来る毎日。しあわせ~。」

読書中のトゲエルフのゆる顔は、研究室と図書館の来客数を増やすのに役立ったとか。






あれから魔法研究室と図書館を行き来する毎日です。

魔法研究室は魔術に関する本は豊富なんだけど、著者についてはよほど有名じゃなければ

書かれた本は置かれてないので、これは!と思った著者については図書館で著者関連書籍

を探して読んでいる。


それから、図書館では『ラージャと魔法の宝玉』をほぼ毎日読んで居ます。

本に書かれているストーリーは、違う行動を取ると内容が変わるマルチエンディング形式

になっていることも解りました。

大抵はラージャがストーリーに関係ない所でそれなりに過ごしました。となるのだけど、

時々は凄い展開になる場合があります。

どういう時にあらかじめ用意されたエンディングへ繋がる分岐なのかの規則性についても、

著者のリーゼン・マローについて調べた結果、ある程度見えて来ましたし。




まだ少ないですが、わたしが見つけたエンディングにどんなのがあるかと言うと、


本を開いて中に入りほぼ同じ道筋を通りますが、腕輪の魔神に、魔法使いの城へ辿り着く

長い道は可能な限り直線で、避けられるトラブルを全て避け最短で辿り着くようにと告げ

ると、元々のストーリーよりも短時間で魔法使いの城まで辿り着けます。

ラージャ(わたし)がこんなに早く城に辿り着くとは思って無かったのでしょう。

そこでは驚くべきことに、王女は魔法使いと良い仲になっており、いえむしろ王女の方が

積極的に魔法使いへ迫っており、さらには魔法使いの子供まで懐妊してました。

わたしが城に辿り着いたと見るやしおらしく助けに来たのを嬉しがり、邪魔になった魔法

使いをわたしに殺させ、その後は魔法使いの子供をそ知らぬ顔して生み、結婚生活を満喫

しつつ悠々自適の生涯を送るという悪女エンド。




また別な時に本を開き、今度は魔法使いの城で王女の不実な行為を突きつけ、意味不明な

言い訳をした挙句、逆切れした王女を先に殺してから魔法使いと対峙すると、魔法使いは

自分こそが被害者で、王女は実は古の魔女だったと語る。

その時、殺したはずの王女は息を吹き返し宝玉を奪って自分の国へと逃げ帰る。

さらに、わたしこそ事件の真犯人であり、魔法使いと結託して王女を殺そうとした凶悪犯

であると国中にお触れを出した。

賞金首となったわたしは、やがてレジスタンスのリーダーとなり最後は強力な悪魔の力を

使って残酷で非道な女王となった元王女を城の最上階で討ち取って物語が終る魔女エンド。




別な日にまた本を開いて中に入り、王女と最初に会った時に斬り殺そうとすると、王女は

悪魔の姿を現し、呪詛と呪いの言葉でこの国を汚染する。

悪魔の言霊で汚染されたこの国は既に存在そのものが悪魔の国と化し、また同時に死者の

国でもあった。城は悪魔とゾンビで溢れ、わたしは数人の仲間を探し出し、城の地下深く、

冥界の近くへと探求し、魔王と化した元王女を倒したが、直後、仲間の一人が悲鳴を上げ

て倒れ、だが、直ぐに起き上がったと思うと、たった今倒したばかりの魔王に変化した。

魔王はわたしに何度倒しても生き返るぞと言うが、その姿の向こうに魔王の玉座が見える。

玉座の後ろに"あの宝玉"があるのを見てとったわたしは力を振り絞って宝玉を打ち壊した。

力の源泉を失った魔王は最後の醜いあがきをするも最後はわたしに討ち取られ物語は終る

という魔王エンドもあった。




そんな風に研究室と図書館と宿を往復しながら数日が過ぎ、たまには気分転換も兼ねて、

よろず紹介所へも顔を出して簡単なお仕事でも請けようかな、と行ってみたら、さっそく

おやじさんから仕事を依頼されました。


「リア、おまえさんにどうしても引き受けて欲しい仕事があってな。」


「お仕事の内容にも寄るわよ?あまり長期間拘束される仕事は今は受けたくないわ。」


「それならある意味ちょうど良いかもな。期限が切られている訳じゃないんだが、ちっと

面倒事になりそうな仕事なんだわ。いわゆる恋話ってヤツでよ。

依頼人は女の相談者を求めているんだが、その依頼人ってのが魔術師で、若いんだが割と

偏屈で通ってるヤツなんだよ。

そうなると、ウチの店に来てる女達の中じゃ、魔術師の理屈っぽい話をキレ無いで聞ける

ような、あー頭脳派は、おまえさんしか居なくてな。」


「わたしに恋話を持ち込んでいる時点で人選ミスの気がするけどなぁ。

相談に乗れば良いの?解決できる自信は全然無いけど、それでも良いなら引き受けるわよ。」


「ああ、それで良い。元々おまえさんに無理なら他のヤツにも任せられないからな。

じゃ、頼むぜ、依頼人の家で詳しい話を聞いてくれ。場所は・・・・・・」






そしてここは依頼人ことゲイリー・フォン・メイローが住まう、メイロー子爵家。

ゲイリーはここのドラ息子なんだそうな。御歳26才。御家は結構裕福。

顔は普通、まー悪くは無い。割と身長も高い方ね。


「なるほど。話をまとめると、貴方に好意を持ってたお嬢さん、キャリー・レーンさんを

騙している悪い男が居るので、その男の悪行を調べる。 そしてキャリーさんに目を覚ま

して欲しい、ということで依頼内容は良いかしら?」


「持っていた、じゃないよ!今でも持ってるんだから。キャリーは今ちょっとだけ変な夢

を見てるだけなんだよ。」


「あら、それはゴメンなさいね。貴方に好意を持っているキャリーさんの目を覚まさせる。

これで良いかしら?」


「ああ、それで良い、2-3日で出来るか?」


「その前に確認なんだけど?もしキャリーさんが目を覚ます必要など無いとおっしゃった

場合なんだけど。その場合はどうして欲しい?

知っての通り、一人の個人の意思を捻じ曲げる訳には行かないからね。」


「そんな訳ないじゃないか!キャリーが好きなのは僕なんだから!」


「そうなの?でもね、世の中好きだって気持ちだけではどうにもならない法律と言うもの

があるのよね。キャリーさんの意思を無視してわたしがどうこう出来ないわよ?

う~ん、それじゃこうしない?

これからそのキャリーさんの所へわたしと一緒に行って、その場で説得するというのは?

もちろん直ぐにキャリーさんの悪夢が覚めるとは思えないけれど、何事も手順を踏む、

というのが女の子には必要よね。それに好きな人からの心配されて嬉しくない女は居ない

わよ。ああ、わたしこんなに愛されてるんだぁ~ってね。」


「そっかー、そう思うかい?よしっ一緒にキャリーを説得しに行こう!」




ふー、良かったー、うまく焚き付けられましたっ。

もう少し話の解りそうな人だったら、こっちも骨を折っても良いと思うけどさー?

話し始まって1分でどうでも良くなりましたよ。というかさっさと徹底的に振られるなり

させて、仕事を終らせてしまえ!と思ってます。前金は貰ってるしね。


キャリーの家に行くまでも、延々、いかにキャリーが清楚で可憐で優しくて素晴らしいか

を話し聞かされてもうケッコウ!デスって思えた所で、キャリーの家へ付きました。


あんぐり。

「あの、あなたがキャリーさんですか?」


「はい、そうです、あなたは?」

な・なんだってーっ!犯罪デスヨ!この娘、どうみても18歳未満。15-6歳?


「わたしはリアファリナと申します。こちらに居るゲイリーさ「キャリー、あの屑と別れ

てくれたかい?」 わたしは無視ですか、そうですか。」


おぼっちま君がそう言うと、キャリーは急に顔を険しくし、

「一体なんなんですか!?あなたは。最初に遭った時から変な事ばかり言って。

もう付き纏わないで下さいって何度もお願いしたじゃないですかっ。」


なるほどっ、もう見切ったよ。全てはこのおぼっちま君が悪いんだってね!

でもわたしもお仕事で来てる、前金分は働くわよっ


「待って下さい。感情的に話すのは良くない事ですよ。まずはお話させて下さい。」

わたしはキャリーが返事を返す前に、さらに言う、


「キャリーさん、こちらはメイロー子爵家のゲイリーさんです。

ゲイリーさんは、キャリーさん貴方が現在お付き合いしている男性が、

貴方に悪い影響を与えていると心配されているのです。」


「なっ///// なんでイーディスの事を知っているのっ。

それにあたし達、付き合ってなんか居ませんっ。

その・・・あたしが誰と付き合おうがこの人は何の関わりもないでしょ!」


「キャリー、キャリー、あの屑はダメだよ。君を幸せに出来るのは僕だけなんだから。」


「な・・な・なっ。」


あーあ、キャリーさんの顔が真っ赤で爆発寸前ですよー。


「キャリー?どうしたんだい?おや?お客様かい?」


おっと優しそうなイケメン登場!察するに屑呼ばわりされてるイーディス君かな?


「イーディス、この人があたしに付き纏ってる例の男よ。」


「なんだって?」そう言うとイーディス君はキャリーを引き寄せて、「失礼ですが、貴方

は誰ですか?」と尋ねる。いや、口調は穏やかだが、キャリーを引き寄せて見えない位置

からニヤニヤとゲイリーを見下した嘲笑をしている。

ゲイリーじゃないけど、わたしもこの男を嫌いになったね。


その後しばらく、ゲイリーとイーディスは口論していたが、キャリーが味方をしている

イーディスにはそもそも勝てるはずもない。






メイロー家への帰路でわたしはゲイリー君に尋ねる。

「キャリーさんが考えを曲げない間は、何度説得しても無駄ね。

どうする?イーディスの悪行を調査して、その結果を持ってキャリーさんを再度説得に

行くのが良いとは思うけどね。」


「くそ、くそ、ふざけるな屑め。 あ?あぁ、いや良い。僕に考えがあるんだ。

君の仕事はここまでで良い。ご苦労だったね。」


そう言ってゲイリー君は足早に家へと帰って行く。

「くそがっ覚えてろ、キャリーが誰の物なのか解らせてやる。ぶつぶつ・・・・」


耳が良いわたしにはそんなゲイリーの呟きが聞こえて来る・・・・

わたしは仕事が完了となったので、ここからよろず紹介所のおやじさんに仕事の顛末を

報告しに戻る事にした。




「そんな訳でね、おやじさん、あのゲイリー君は何かをしでかす可能性が高い気がするの、

もし何かあったら声を掛けてね。乗りかかった船だから。」


「ふーむ。ああ、解った。頭の隅に置いておこう。」


それから数日経ってからのこと、おやじさんに緊急で呼び出しを受けた。




「ゲイリー君が意識不明?どう言う事?」


「はい、ゲイリー様が二日前、突然部屋の中でお倒れになったまま発見され、未だに意識

がお戻りになりません。部屋の中には魔方陣が描かれ、お傍にはこれが落ちていました。」


メイロー家の執事がそう言って取り出したのは、


リーゼン・マロー著『女の子の精神へダイレクトアクセス、気になるあの娘の心を鷲掴み』


魔法研究室で見た、あの魔法書だった。





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