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2ページ目 

2ページ目


わたしの名はリアファリナ、精霊術と魔術を修め武者修行の旅に出たトゲエルフよ。


トゲエルフよ、トゲエルフよ、トゲエルフよ・・・・・


「トゲエルフよ。。。 ああぁぁぁ~ 恥ずかしい~~//////」


ナニがって?


「それって結局ツンデレエルフといっしょじゃないのーっ ///////」


そうなのだ、エルフの亜流を自他?共に認める わたしは新種族トゲエルフとなって世界

に一大旋風を巻き起こすハズだったのだ。

それがまだ2ページ目にしてはや理論の穴に気付いてしまった。


「ダメだ、いくら考えてもツンとトゲの違いを、素人さんに理解してもらえそうにない。」






時間は少しのぼる。

この街、アイゼリアにたどり着いた夜、わたしは泊まる場所を探していた。


「もちろん宿屋じゃないわよ? って誰に説明してるのかしら。」


そうなのだ。この世界にも通貨が存在しているが、生まれて初めて村の外に出たわたしに、

このアイゼンワード帝国内で流通する通貨など持っているハズもなく。

なので宿屋を探しても泊まれるハズもなく。最初から宿屋という選択肢は考えて居い。




わたしは空の上から地上を眺め、周りから見えない適度な高さにある建物の屋根を見つけ、

そこに人の気配が無い事を確認し着地する。

もう一度、人に見られない場所なのかをぐるっと見渡して確認すると、いそいそと野宿?

の準備をする。

寝袋でしょ、携帯食でしょ、パジャマは・・外で着替えるのは女の子としてどうなの?

最後に魔術式、『宿泊セット』を起動した。 魔術式の名前は創った時の気分だv




『宿泊セット』

これは一定範囲の内部からの気配遮断、外部からの識別妨害、気温湿度保持、暴風と雨滴

遮断と、その上にな・な・なんと体力回復と精神回復にボーナスまで付いちゃうという、

風と水と闇の精霊を使ったわたしの自慢の魔術式だ。




わたしは身に着けた防具一式を脱いで寝袋にもぐりこむと、


「それじゃ、朝まで見張り宜しくねv」


脱いだ防具にそう声を掛けた瞬間、鎧は音もなくゆら~りと宙に立ち上がる。

この鎧は"生きた鎧"である。

ある程度の自己判断力を持ち、眠ることもなく見張り番に最適なのよ。




本来、この世界の精霊使いにしても魔法使いにしても鎧を身に着けることは無い。

精霊は金属を嫌うし、魔法使いは魔術式を起動する際に身振り手振りを行う必要がある、

らしい。よく知らないが。

そのため鎧は魔法使いの繊細な動きを阻害するから着用出来ない、と聞いた。

この世界に広まっている魔術式と、わたしの魔術式は原理が全く異なるようで興味深い。




「まぁね、わたしの魔術式は独学だもの。」

そう言って立ったまま微動だにしない防具を見る。




わたしの"生きた鎧"は魔法生物だ。

わたしの意志を感じ取り、人より圧倒的に早いその反射速度でわたしの動きを妨げること

なく追従し、サポートしてくれる。

金属製ではなく、この世界に存在しないセラミック製のその鎧は強度はもちろんのこと、

熱に強く、酸に強く、毒無効で精神系魔術を受け付けない。

魔法生物ゆえに仮に傷ついたとしても自己復元してしまう。




そもそもその装甲は補助魔法の対刃、対衝撃、対摩擦、対魔法攻撃を儀式魔法で付与され、

永続効果としているので、ダメージを"通す"ことも難しいはずだ。

単純に戦士としての能力も高い。

創造主としての推測だが強さではアイアンゴーレムを軽く越え、ミスリルゴーレムに匹敵

するのでは?と予想している。

もっともこの世界にそんな種類のゴーレムが居れば、だが。




お休みの準備を整えると、今日最後の魔術式、『魔力セット』『体力セット』を起動する。




『魔力セット』

これはその名の通り、魔力上昇、知力上昇、集中力上昇、魔法詠唱速度上昇、最大魔力量

上昇、魔法抵抗力上昇、魔力回復速度上昇を。


『体力セット』

こちらは筋力上昇、器用度上昇、敏捷度上昇、生命力最大量上昇、移動速度上昇、生命力

回復速度上昇、攻撃速度上昇、をマクロ化して一気に掛けてしまう術式だ。




トゲエルフたるもの、一歩外に出れば7x7人の敵が居て当たり前。

補助魔法バフが剥がれてしまうとただのか弱~いエルフ娘が独りぽつーんと残るだけ。

これらのバフは24時間は保持されるハズだが、わたしに取っての命綱なのだ。

だから寝る前と起床した時、つまり一日2回忘れずに必ず起動するようにしているのだ。




そうして、やはりというか使った魔力は大したことがないにも関わらず、生まれて初めて

の旅でそうとう疲れていたのだろう。

いつもより早く眠気が訪れている。

わたしは伊達メガネ(これがわたしの魔術式の秘密なのだが)を外して、誰にともなく、




「おやすみなさーいv」




目を閉じる直前に目に映ったお城は、夜の闇に薄く浮かび上がっていた・・・

空からの攻撃には無力な城だわねぇ。。。。と思いつつ・・・(ブラックアウト・・・)







「とりあえずこの街でしばらく過ごすにしても、生活の糧を稼がないとダメよね。」


わたしは今、おのぼりさんよろしく街の大通りや裏の小道をきょろきょろしつつ歩いてる。

何のために? もちろん、釣りのためよ。




「よー、エルフのおねぇチャン。どっか探しモンかい?」




ちょっとだみ声で後ろから声を掛けてくる男がいた。




キタ!




その男の存在は少し前から気付いていた。

ちなみに今居る場所は大通りを少し入った小道を曲がった所で、大通りのざわめきさえ

ここまでは響いてこない。少し薄暗く閑静な佇まいとなっている。

前方にも数人の気配を感じた。

狙い通り事が進んでいることに満足し、わたしはニンマリしそうな顔を無理やりニッコリ

に変えると笑顔のまま振り向く。




「そうなの! この街には初めて来たのよ、よかったぁ、少し道に迷って困ってたの。」




そこには普通の服装なんだろうけど着崩してどことなくヨレた感じの30前後の男がいた。

「おー、そいつぁ大変だなぁ、俺はこの街に長いこと住んでるから何でも聞いてくれよ。」


小道の前方、今はわたしの背後となってる、から人の接近をしっかりと感じつつ、


「それじゃ~教えて欲しい所があるんだけどいいかな?」


「おぅ言ってみな!」


「あのね、わたしこの街に来たばっかりでどこに何のお店があるのか判ってないんだけど、

何でも屋っていうか、雑貨を買い取ってくれるようなお店ってこの街にあるかな?」


「んー?雑貨屋ねぇ? あーここから近い所にあるぜ? 案内するからこっちだ。」

そう言って男は馴れ馴れしくわたしの肩を抱いて大通りとは反対の方向へ歩き出す。




背後に迫っていた男達は二人組みで、一人はわたしよりも前を歩き出し、一人はわたしが

通り過ぎるのを待って後からついて来る。前後を挟まれた形だ。





「ありがとう!親切な人に出会えてほんとに助かったわ。」

これは本気でそう思っているので声色で相手へ伝わったらしい。

わたしが歩きながらそう言うと


「そうだろぉ?ま、俺も朝から綺麗なおねぇチャンと一緒に歩けてラッキーだぜ!」


「ねぇ、親切ついでにもう一つ教えて欲しいんだけど。」


「いーぜぇ、何でも言ってみなよ。」


ここからが、本当にわたしが知りたい情報となる。






「あのね、わたし働く場所も探してるのよ、それでね、格好見て判ると思うけどこれでも

腕に覚えがあるのよ? そういう荒仕事を紹介してくれるお店とか、知ってるかな?」

大事な情報だから少し小首をかしげながら可愛らしさを演出しつつ聞いてみる。




「うはははは、おねぇチャン。その剣ちゃんと使えるのか?

まぁ荒仕事なら紹介してやれねぇこともないぜ。」


男は下品な笑い顔を浮かべるとあごをしゃくった。

それが合図だったのだろう。後ろに居た男がわたしの両手を掴み後ろ手に拘束する。

と同時に周りからさらに3人の男が出て来た。合わせて6人。




「わりーな、おねぇチャン。

俺が紹介するのは仕事は仕事でも、おねぇチャンが体を使った荒仕事だぁ~。」


わたしの隣に立っている男はそう言うと、


「よーおねぇチャン、腕に覚えがあるんだって?男1000人切りとかか?ぎゃははは。」


「腕を掴まれてちゃ御自慢の剣も役立たずだなぁあ?

お、そうだ!俺の剣を握って良いゼ? へへ、ぶっとくて固いぜー?」


「うあっはぁぁ~、俺もネーチャンを押さえるぜー、

おぉっと間違えて胸揉んじまったーーーー。」




はぁ~。どうしてこうも下品なんだろ?

両手を拘束されたわたしを侮ってその中の一人がそう言いながら胸に手を伸ばして来る・・



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