エルファリナの挿入ページその1
エルファリナの挿入ページその1
わたしは"混沌と螺旋の全能神"ユミーティア様の4人の眷属の一人に生み出された。
その方は、再生と死を司る全能神にして名を唱えること能わず、便宜上"深紅の君"と呼ば
れている。
この世界を含む三千世界を御創りになられた"混沌と螺旋の全能神"ユミーティア様。
実際には1000の3乗個、10億程度では済まない。
人の数の概念のはるか外。無限と呼べる世界が存在するのではあるが。
その全ての世界に住む生物全てに与えられた共通する理が、
"弱肉強食"、そして、"もっと先へ"だ。
わたしが逢った事があるのは、"深紅の君"と、"竜王の君"のお二方だけであり、
"混沌と螺旋の全能神"ユミーティア様には逢った事もないが、ずいぶん意地悪な方なので
あろう。
停滞を許さず、昨日と違う今日・今日と違う明日を強制され、形ある物はいつか滅びるし、
生きるものは必ず死ぬ。
同じようで、でも違う。ループではない螺旋を描くこの世界の絶対の理。
何をお考えになられてその様に創ったのかは、わたしをもってしても杳として知れない。
"混沌と螺旋の全能神"ユミーティア様
創造を司る全能神"金の君"
破壊を司る神殺しの"神龍の君"
再生と死を司る全能神"深紅の君"
混沌の次元監察官"竜王の君"
上のお三方は世界を創造しても、為すべきことは全て御創りになった時点で全て為されて
しまっているために、世界に干渉せずを貫いている。
誕生して欲しい者が居れば、世界を創った時にその時その場に誕生するよう因子を置かれ、
死んで欲しい者が居れば、世界を創った時にその時その場で死ぬよう因子が置かれている。
下のお二方は、世界に干渉することで救える存在がある、とお考えで比較的積極的に関与
為されているようだ。
一見、意見が分かれている様に見えるが、全能神の視点で見ればそれはどちらも同じこと
なのであろう。
わたしは"出現したその時に"必要な知識は全て与えられているが、その知識が言うのだ、
混沌の名を持つ全能神の視点では『この世界の全ては区別することに意味が無い』のだと。
「おーい、『 』よ。誕生したばかりで、早くも過去を振り返ってるとこ悪いがよ、
何時までもそのままだと話が進まねーんだわ。戻ってこいやー。」
「あ!失礼しました。"竜王の君"。」
「おー、ま、知っての通り、お前に誕生してもらったのは、俺様が楽するためにあるわけ
だからよ。ちょっくら世界を2~3千廻って修行して来い。今のままだと知識は在っても
経験不足だしな。」
「はぁ。さすがにそれほどの数だと廻るだけでも那由他な年月が掛かりそうですが?」
「おー思ったより短いな。もう2~3千廻っとくか?」
「いえ、結構です。」
「おいおい、大した手間隙じゃねーだろ?遠慮すんな。」
億の億倍、さらにその億倍、そしてさらにその……やめよう、年数を考えると負けだ!
そんな途方も無い年月を短いとは、そりゃ貴方だからですよ。
そんな考えただけでクラッとする年月を2回もやらされてたまるか!
そうは思ったが、ここはこちらが大人になって、グッと堪えましょう。
「お前、何気に失礼なヤツだな。まぁ良い。5000人ものヒトの目もあるしな。
おい、ここ見てるヤツら、知っとけ。ドラゴンロードの懐の広さってヤツをよ。」
「5000人?」わたしは思わずキョロキョロと周りを見回す。
「アフォかお前。やがては次元監察官になろうってモンが、それじゃダメダメだろが。
こことは次元を隔ててる所から、これ見てるヤツらが居るんだよ。
具体的には5000アクセスって単位でよ。」
は?アクセス?
「かーーーーーーっ!。」そう言って"竜王の君"はコイツだめだ。とばかりに首を振る。
「とりあえず思考を読むのはお止めください。マナー違反です。」
「バカめ。お前は俺であり、俺はお前なんだ。マナーなんぞ知るか。
ったく、もう5分も無駄にしちまったじゃねーか。お前の那由他の那由他倍貴重な俺様の
時間をよ。」
「たった5分じゃないですかーーー! そもそも修行して戻って来るのが那由他な年月後
ですよ。その間待つことになるわけですから、5分くらいでケチケチ言わないで下さい。」
「1秒後も那由他後も同じことだな。そんでな、『 』よ。
親切な俺様はカウント3してやるからその間に旅立て。
3、2、い「ひーーーーーぇーーーーー、行って来ますっ。」
おー、それと、お前の姿は最初の転生主の姿で固定すっからよ。ま、楽しみにしてな。」
ううう、変な容姿にしたら怨んでやるーーーーーっ
こうして、わたしは世界名『ネイワース』の『ブリューグフト大陸』、その『ラクト山脈』
の東側に在る『ティルトの村』という所で、エルフを両親として、人としての生を受けた。
名を『リアファリナ・レディケイオス・ノヴァリース』という。
名・守護となる精霊名・姓の順である。それにしても『レディ・混沌』とはね。
『って、なんかダメじゃないですかーーっ 転生失敗デスヨっ"竜王の君"!』
「わたしの中にいるわたし、貴方の事、嫌いじゃないよ。好きだよ。
でも努力もしないで何でも出来る力なんて要らない。
いつか、わたしが貴方より強くなったら。その時また一つになろ?
それまで、しばしのお別れだよ。」
『ヤラレマシタ。絶対このこと知ってたよ、あの意地悪キングめ。』
そうして"わたし"は、"わたし"ことリアファリナから切り離されてしまいました。
いや、切り離されたという表現は厳密に言えば正しくない。
次元監察官見習い(とほほ)の視点では、現に今も繋がっているのだから。
『なんだかなー、一番最初の修行だっていうから張り切っていたら、"待つ"事が修行だ、
なんてなー、どうなのよ?そうなの?これも修行なの?
はぁ~~~~、まぁ100の力を半分にして50になったとしても、元々無限を目指す身
だしね。50歩100歩ではあるかぁ。 うん、それじゃ頑張ってよね"わたし"。』
序列で言えば神より上である"わたし"なのだ。
その"わたし"が、人の身である"わたし"の意志を無視して押し通す?バカ言いなさんな。
"わたし"のカンが言っている。これは同じことなのだ、と。
ならば"待つ"ことにしようではないか。
そうして、"わたし"は『時を得る』までしばし意識をたゆたらせた。
微睡みからの目覚めは唐突だった。『時が来た』のだ。
「行っちゃったわね。」とニアが呟く。
「寂しくなっちゃいますね。」シャイアが同意する。
「最後にほっそい足を見せ付けて、飛んでってくれたけどな。」とルー。
「すっごい美人さんだったものね。残念ねー?ワタナベ。」と気持ちを切替えたオーリス。
「ああ、なんかずっと一緒だと思い込んでたからな。へこむぜ。」
「まぁある意味、まだ一緒に居るわけだが。」
「「「「「 え? 」」」」」
む?次元監察官見習いのカンでは、続くらしいぞ。