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今回は、トゲエルフがのの字を書いてるシーンから始まります。
その理由はというと、
話は少しだけ過去に遡ります。
「ふふふ、出来たわ!これはスゴイわよ、
わたし歴史に名前残っちゃう!アッハッハッハッハ。」
徹夜で魔術式を創った後遺症で、ハイテンションなわたし。
勢いって怖いわね。
カズヒサと出会って、『勇者召喚の儀』の自動翻訳効果を確かめた時から、構想を練って
は居たのだ。夕べ閃くものがあって思わず徹夜してしまったわ。
カズヒサの自動翻訳効果は、カズヒサの意思に沿った形で、カズヒサの口から出た音声を
音として伝える前に翻訳を行い、必要があれば口語は音として伝えずにカットし、訳語を
音として伝えるようになっている。
それによって聞き手は、カズヒサの口語と訳語の、2つの声を同時に聞いてしまうという
マヌケな事態にならずに済んでいるわけ。
凄い所は他にもあって、本来カズヒサが口に出してない訳語すらもカズヒサの肉声として
聞こえてくる点だ。訳語だけ聞いても「あ、カズヒサの声だ」と判る。
まぁ、こっちの効果は今回は関係ないから横に置いとく。
わたしが着目したのは『話し手の意思に沿って自動で音が発声されている点』だ。
魔術式が詠唱を必要とするのは以前話した通り。
わたしは"そのホンの一部を"伊達メガネの仮想キーボードにショートカット登録すること
で無詠唱を実現しているが、逆を言えば大多数の魔術式は詠唱を必要とするのだ。
わたしはこれまでも詠唱の短縮化を色々と図って来た。
地味な所では早口。そして得意の魔術式で実現し黒歴史となった『高速言語』まで。
高速言語は知っているだろうか?
一音に複雑な情報を乗せて発声される言語で、高速言語の一音をスペクトラム解析すれば、
周波数成分の各配列ごとに意味がある情報が見て取れるだろう。
わたしはかつて故郷の村に居た頃、今よりもっとずっと若かった頃に(今でも若いわよっ)
この高速言語発声魔術式を開発したことがある。
あの時も得意絶頂で高速言語を使って、それまで創った魔術式を次々と試し撃ちしたっけ。
調子に乗って次々と炸裂する魔術式に、ビックリした村人達は総出でその発生源へ(わたしだ)
に来て、「何をやっているんだ?リアファリナ?」と声を掛けた。
わたしは満面の笑みを浮かべて振り返り、みなに自慢したっけ。
「ピーガラガラピーヒィー。」(注:高速言語『みんな聞いてよー、それがねー、云々』)
わたしは村人全員の、点となったあの時の目が、今でも忘れられない。
高速言語の「コ」すら知らない田舎の村人達、彼らから『頭の残念な可哀相な子』という
目で見られ続けた遠い日々。。。。あーーーーーっ!もう!
「今はその話じゃなくてっ!」
ドコまで話したっけ?
えと、高速言語はオン・オフ魔術式を一々起動しなきゃならないので、タイムリソースの
無駄と、対人コミュニケーションに難有りという理由でお蔵入りしたのよ。
この場合のお蔵入りとは「別な発想もしくは何らかのデメリット解消法が見つかるまで。」
というもので、この度、めでたく『話し手の意思に沿って自動で音が発声される』魔術式
を追加し、改良を行ったことでようやく陽の目を見たわけなのさー。
これでわたしの任意のタイミングで高速言語と、通常使ってるアイゼンワード帝国標準語
である"マロイ語"、ちなみにこの大陸全土でもマロイ語がほぼ標準語だが、を自分の意思
で切り替えて発声出来る術を得たわけなのよっv
え?それだけか?って
もちろん、それだけじゃないわよっ
高速言語は一音に複数情報を乗せて発声する言語なわけで、単に魔術式のダダ長い詠唱を
各節毎にまとめて一音化すりゃ良いという物ではない。
起動シーケンス毎に各魔術の発現段階に沿って、魔術式の構造を分解する。
つまりWBS(Work Breakdown Structure:作業分割構成)し、魔術式のスコープ全体を
俯瞰出来る才能と、アクティビティ化して細分化された意志力を、クリティカルパスを守り
つつ再構成した発声音への変換されても、自身の魔力コスト管理を正確にマネージメント
出来る才能とが必要とされる。
これは逆を言えば、何でもかんでも高速言語化したとして、全て効率化するか?というと
必ずしもそうでは無い事実へと繋がる。
そこへ
満を持して登場したのが、今回の『話し手の意思に沿って自動で音が発声される』魔術式
なわけですよ。この技術の影響範囲は高速言語だけに留まらないのだ。
この魔術式の素晴らしい点はね、
①自分は一つの魔術式を発声しただけで、自分の意思で複数の魔術式を同時発声出来る点。
②自分で発声してない魔術式でも、正しく魔力コストを消費し魔術として発現出来る点。
レコーダーで詠唱を録音して再生しても、レコーダーは魔力を操ってくれないから魔術と
して発現しないでしょ?詠唱の音をただ単に鳴らしているに過ぎない。
自分が発声してない音で、魔術を発現出来るというのは素晴らしい発明なのよっv
『自分の意思が正しく働く複数の音を操る』魔術式と言えば良いのかしら。
高速言語化しないままの通常の詠唱法で複数詠唱可能とせしめているから、その辺の三流
魔術師でも『ファイアーボール』と『アイシクルランス』と『ライトニングアロー』同時
に操る一流魔術師となれるのだ。
風と炎を同時に操れたら、一つどころか、二つ上の威力の魔法となるだろうことは容易に
想像出来るわよね。
三流が一流と肩を並べられる。そして応用範囲が無限の可能性。
こうして、単なる詠唱の短縮化から、夢の技術へと一気に飛躍してしまったというわけ。
わたしの今回創った魔術式の凄さが少しは判ってもらえたかしらっ!?
さぁっ!こうしちゃ居られないっ この素晴らしい発明を一刻も早く皆に自慢せねばっv
わたしはまだ日の出を迎えてもいない早朝にも関わらず、徹夜で躁状態となったまま自分
の部屋を飛び出した。 とりあえず、バカヒサを叩き起こして自慢しようっと。
カズヒサの部屋はどこかと、いまだ効果の残っている昨夜の『パーティーセット』効果の
一つ、メンバーの方位検知で居場所を探る。
わたしが泊まっている家は、村長さんの家だとかで結構部屋が多いお家なのだ。
方位検知によって、カズヒサが何処に居るのか調べてみると、
「何よ、この家の外じゃないの。」
そして、玄関へと歩いている短い間に、わたしが皆の策略に嵌められた事を知った。
とりあえず、出来立てホヤホヤの魔術式『腹話術』、何度も言うが銘々は気分よっ
の効果確認も兼ねて、策略に乗ってあげたけどねっっ
まさに朝飯前の一仕事。その割にはちっとも楽じゃなかったなー。
「あの、ファリナ?怒ってる?」
と朝食時に切り出したのはニアだ。
「べぇっつにー?夜明け前だったしねー、こっそりやっといたけど、後始末は判ってるん
でしょうねぇ?ちゃんとやっといてよっ。」
「ああ任せろ。勇者がまた一つ奇跡を為した。で押し通すさ。コレっきりだけどな。」
カズヒサ達は、わたしが魔術式の創作に没頭している間に、村長の家に村の重症患者達を
運び込んで居たのだ。
それもわたしが直ぐに気付く位置から若い順で並べて置くと言う念のいりようで。
わたしの、誰にも話すなという念押し具合から、普通に頼んでは癒してくれないだろうと
予想したのだろう。それでも苦しんでいる子供を見ればあるいは?と思ったらしい。
いくらわたしでも目の前で苦しんでる子供を見捨てるわけないでしょ。全くもー。
わたしはジト目でカズヒサ、ニア、シャイア、ルー、オーリスを見回す。
ルーは肩を竦め、オーリスは歯を出してニッと笑っている。
「ファリナに癒して頂いた方は生涯感謝をするでしょう。皆に本当の事を言わずに黙って
て良いのですか?」
シャイアの問いには、朝食を口に入れて咀嚼しながら口を閉じたまま返答しましたよ。
『その事は別にいいわよ。前に言った通り押し掛けられる羽目になりたくないしね。』
ニアはえっ?という顔をした。
でもシャイアは気付かなかったようだ、
「でもファリナは凄いですわ、夜明け頃から治癒を始めたのに、この時間までであの人数
を癒してしまうなんて。」
それよっ、それを聞いて欲しかったのよーーーっっv
わたしはまた口を閉じたまま返答する。
『ま~ね。今回創った魔術式の効果のおかげよ。』
ふっふ~ん、自慢よー、さー気付いてー!という顔をする。
するとシャイアもようやく気付いたのか、
「あれ?ファリナ、口閉じたまま話してる?」
「腹話術かよっ。」
カズヒサが突っ込む。その通りだー
『フフフフフ、この魔術式で高速詠唱したり、複数の詠唱を同時に行ったりできるのよ。』
「それって、もしかして凄い事じゃないのかしら?」
ニアは気付いてくれたようだ。顔に賛辞が浮かんでいる。
「俺には、食べ物を口の中で噛んでるくせに、食べかすを飛ばしもしないで普通に話せて
いる、そのビックリ人間真っ青の奇人変人っぷりの器用さが気になるけどなっ。」
うるさい、バカヒサ。
この程度の『同時に複数の事をこなす』才能は魔導師の必須スキルなのよっ。
今のわたしは調子コキーノにしてムテキング状態。バカヒサのつっこみなど届かぬわっ
そう、シャイアが次のセリフを言うまでは。
「本当にファリナって色々考えてて凄いですよね、わたしなんて神に祈るだけでしたから
詠唱がどうとか考えた事無かったです。」
そう言えばシャイアってば、「神よっ!」の一言だけでカズヒサを癒してたわね。。。。
あれ?。。。。。え?。。。。。。あっ!!
「ね、ねぇ?シャイア?」
わたしはシャイアに恐る恐る聞いてみる。
「はい?なんでしょうか?ファリナ。」
「神官は神様に祈って癒しの術を行使するわけでしょ?実際の所、どこまで祈りの言葉を
短く出来るの?昨日、神よ、の一言でカズヒサを癒してたわよね?」
「あ、あれはとっさだったから。祈りの言葉を短く言うなんて神官にあるまじき行為です。
でも、そうですね、神様は天からわたし達を見守って下さっているので、どのような祈り
であってもお聞き届けして下さるでしょう。それが御心に沿っているならば。」
「って事はもしかして、神様の、"か"、だけでも癒してくれるとか?」
「はい。試したことはありませんが、今後も無いでしょうけど、大丈夫だと思います。」
「恐るべし神様。至れり尽くせり、まさにオートマチック。」
もはや朝食を食べる気力を失ったわたしはご飯を押しのけて食卓へつっぷした。
「ど、どうしたのファリナ?」
ニアが心配してくれた。けれど既に話す気力も無くしたわたしは、腹話術で返答する。
『人が一生懸命努力してマニュアルミッションのギア操作を極めたと思ったら、世の中の
主流は既にオートマチック車でした、というオチに気付いたのよ。』
『腹話術』も『高速詠唱』も『無詠唱』も決して魔術式のシーケンスを省いている訳では
ないのだ。短くなった分、わたしの頭の中ではそりゃー凄い演算を繰り返している訳で。
詠唱者の意思を感じ取り何がしたいかを先読みし、手順をすっ飛ばしても実現してくれる
なんて神様ってズルくない?
「まにゅ?え?おーとまちっく?なんですの?それは。」
「ぶふっ。」
笑うなっバカヒサめっっ
「まぁマジレスするとだな、マニュアルの方がより早いレスポンスを期待できるわけで、
術を使いこなすという意味でファリナのアプローチの方が正しいんじゃないかと思うぞ。」
わたしは顔を起こすと、
「まー良いわ。そのうち神様もビックリの魔術式を創ってみせるから。」
今日から神様はライヴァル、ううん、倒さなければならない敵よっ!
「それにしても、カズヒサから慰められるとはね。
ドスケベの朴念仁かと思ってたわ。」
さてと、丁度良いからカズヒサにアレを渡しておこうか。
「あんた、これから先も旅して廻るんでしょ?
『勇者召喚の儀』って魔王でも倒すためにあんたが呼ばれたってわけ?」
「そうなのです、魔王がわたくしの姉である、アイゼンワード帝国の第一皇女、
ルーレフィシア・ティア・ランナ・ナーシアス・エル・アイゼンに突然結婚するようにと、
帝国へ脅しを掛けて来たのです。
当然我が帝国は魔王の脅しなどに屈しませんでした。魔王討つべしと勇者カズヒサを召喚
したのです。」
ニアは得意げに説明してくれる、
あー、あんたってば、あんなヘンタイ野郎を倒すために呼ばれちゃったんだぁ。
わたしの脳裏にプヨと一緒にいた魔王の言動を思い出す。
『オレのヘソまで反り返ったピ~~でオマエのピ~~~をピ~~
してやんぜー!』とか言っていたっけ。相手にしなかったが。
それにしても、たしか帝国の第一皇女って御歳24歳の行き遅れだったわよね?
美女過ぎる娘の婿条件を絞りすぎたんだか、嫁に出すのを惜しんだとかで。
ヘンタイでも腐っても魔王。貰ってくれるって言うなら喜んで嫁にだしゃ良いのに。。。
そんな事のために見ず知らずの土地に無理やり召喚されて帰れないなんて。
わたしは思いっきり「カワイソー」って顔してカズヒサを見てあげた。
ま、それはともかく。
「これは慰めてくれたお礼よ。あんた昨日剣を壊しちゃったでしょ。」
そう言ってわたしはポシェットから一振りの長剣をヨイショっと取り出す。
以前勢いに任せて創っては見たものの、非力なトゲエルフには振り回せなかった一振りだ。
魔術式で筋力を底上げしても自分の体重が増える訳じゃないのでバランスが取れないのだ。
「大した慰めしてないけどな。良いのか?」
「ええ、一応説明すると、その剣には防御不能、回避不能で必ず会心の一撃が出る魔法が
込められているの。
あんたの何でもぶった切る魔法剣と組み合わせれば文字通り最強剣よ。」
「なんだそのチート性能は?」
「"混沌と螺旋の精霊"って言う精霊がその剣には憑いてるわ。
剣を振る際に、一種のタイムパラドックスを引き起こして無限の可能性の中から唯一つの
もっとも優れた成功例を、最初の一回目で引き当てる事が出来るのよ。
局地的なタイムマシンね。無限のフィードバックから希望する未来を収束させる。
だから誰にもその剣の一撃は防げない回避も出来ない。
どんな達人でも無限に受ければ素人の一撃でも『当たっちゃった』って事はあるでしょ?
それを最初の一回目で引き起こすわけ。」
「聞けば聞くほど凄そうなんだが、ホントに貰って良いのか?」
「構わないわ。」
「これで、ニア、貴方からの依頼は全て達成したから、わたしとしては街に、アイゼリア
へと帰るつもりなんだけど。最初にやらない約束だった村人達の治療代がわりに、お願い
があるんだけど良いかしら?」
「あ、ファリナ、あの、このままわたくし達と一緒に旅をして頂けませんか?」
「ごめん、それは無理。」
「「「「「 え 」」」」」
カズヒサ達はあっさり断られるとは思わなかったのだろう。
「ファリナ、俺としてはお前と一緒で楽しかったし、向こうの事も良く知ってそうなお前
が居てくれて気持ち的に色々助かったよ。これからも俺を助けてくれないか?」
「あのっ、その気の無いファリナに無理やり治療させるような事をさせてしまって大変
申し訳ありませんでした。お気を悪くしたのならいくらでも謝罪いたします。
どうかワタナベの願い通り今後もわたくし達と御一緒に。」
「あのね、村人を助けたのは最終的には自分の意思よ。それとこれとは話が別なの。」
「ファリナ、俺は、もう帰れないかも知れないと思ったとき、酷い絶望に襲われたよ、
そしてお前に逢って救われたんだ。どうしてもダメか?」
「無理なものは無理。それでニアどうなの?お願いを言っても良い?」
ニアは頑固なわたしにこれ以上繰り返しても逆効果と感じたのか、
「判りました、今回は引き下がりますわ。それでお願いとは何ですの?」
「やった!魔術書を調べたいのよ。図書館への出入り許可証をちょうだい!」
「図書館?もちろん構いませんわ。でも魔術書なら魔法研究室の方が揃ってますから、
そちらへも紹介状を書きましょう。それと今回の報酬ですが、オーリスお願い。」
「ええ。気を使ってくれてありがとう。」
そして、オーリスから金貨2枚を。ニアから紹介状を書いて貰った。
これでミッションコンプリートね。
「それと、カズヒサ。」
「・・・・ああ。」
拗ねてるし。暗いっ暗いです。カズヒサ。
しかたないなぁもうっ。
「カズヒサが帰る方法は、とりあえず4つあるわ。」
カズヒサがこっちを見る。そうそう、良~~く聞きなさいよね。
「一つ目は、カズヒサが死ぬこと。
でも、これはお勧めしないわね。わたし達は神の作りし箱庭を循環する存在だから、この
世界で死ねばカズヒサの世界に転生出来る可能性が少しはあるわ。
でも、もしかしたら魔界転生かもよ? アハハ、魔王ってあんがいカズヒサかも。」
「その方法は前に聞いたな。他のは?」
「異界渡りを可能にするには神属性が必要よ。つまり神様じゃなければ無理って事ね。」
「それでは不可能なのですか?」ニアにとっては切実な問題だ。
「もったいぶるのは探偵の犯人推理だけで十分だ、つまりは?」
「二つ目は、カズヒサが自分で魔法を使えるようになること。
以前言ったでしょ?カズヒサの属性はこの世界のどの属性とも違う勇者属性だって。
カズヒサが魔法を行使出来れば、異界渡りが出来る。。。。かも?」
「なるほど。。。でも、自分で言うのもなんだが、ずいぶん遠そうだ。」
「三つ目は、カズヒサの魔法剣ね。これも言ったでしょ?何でも切れるって。
この世界とカズヒサの世界の境界線ダケを狙って、世界に穴を開ければ帰れるわよ。
まぁ、カズヒサの精神修行が必要なのは2つ目の魔法と一緒かな。」
「むう、いけそうだっ!って感じが少しはする案だな、それ。」
「四つ目は、わたしの魔術式『勇者送還の儀』を使って帰る方法ね。」
「なんだそりゃ?神様しか出来ないんじゃなかったのか?
はっもしや、おまえか~~?お・ま・え・が、ネ申なのか~~?」
「はいはい。当たらずとも遠からずだけど、わたしは神じゃないわよ。
異界渡りは神にしか出来ない。でも一度だけなら使える神属性があるのよ?
ここにね。」
カズヒサの胸に人差し指をあてながら言う、
「そう『勇者召喚の儀』よ。その効果は神属性、それを利用すれば一度こっきり可能。
でも一度しか使えないから向こうへ帰ったらもうこっちへは戻って来れない。
使うか使わないかはよく考えてね。」
「それじゃ、カズヒサ、ニア、ルー、シャイア、オーリス、また縁が有ったら逢おうね。」
「え?もう行くのか!?もう少しゆっくりして行けば。」
「早く帰って、その魔法研究室とか言うところへ入り浸らなきゃ!
打倒オートマチックよっ!」
そう言って、わたしは村長の家を出て行く。
「ファリナ、村人達を助けてくれてありがとう。あなたの行く先々でミラー神の御加護が
ありますように。」
「名残惜しいがまたどこかで会えるだろう。その時はまた宜しくな。ファリナ。」
「楽しかったわ、元気でねファリナ。今度あの暗闇でも見える魔法教えてね。」
「ファリナ、貴方の御力でこの村そして国を救って下さって、そして何よりもわたくしと
カズヒサを助けて下さってありがとうございました。これから先、何か困った事があれば
わたくしを頼って来て下さい。ううん、また逢いたいだけなの。わたくしが。」
「元気でな、ファリナ。帰る方法考えてくれてさんじゅうきゅ。」
がくっ
最後にそれか!まったくバカヒサなんだから。
「じゃーね。バイバーイ。(必殺エルフスマイルよっ)」
『飛翔』
こうしてわたしはピネの村を後にしたのでした。
「行っちゃったわね。」とニアが呟く。
「寂しくなっちゃいますね。」シャイアが同意する。
「最後にほっそい足を見せ付けて、飛んでってくれたけどな。」とルー。
「すっごい美人さんだったものね。残念ねー?ワタナベ。」と気持ちを切替えたオーリス。
「ああ、なんかずっと一緒だと思い込んでたからな。へこむぜ。」
(謎の人物)「まぁある意味、まだ一緒に居るわけだが。」
「「「「「 え? 」」」」」