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そんな訳で(どんなわけ?)、気分的には壊したくないなー、が1で、

ほら私勇者PTの一員だし?曲がりなりにも森の守護者トゲエルフだしー、が9で。

でも時の流れは厳しいです。わたしの気持ちにお構いなく戦闘は始まってる。




『闇爪』

わたしの逡巡など露ほどにも影響されず、起動シーケンスは無常にもあっけなく。

視界内であれば任意な場所に発生させられる、原子すら切断する絶対の刃が生まれる。


それは真一文字に進み、銀色ゴーレムを上下に断ち切る。

「ずしゃーーーっ。」

宙に浮かんで居た銀色のゴーレムは、切断面から大量の銀の液体を飛び散らせ、と同時に

大地へと落下する。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アレ?」


「おい?」

走り寄っていたカズヒサもビックリだ。そりゃそうだ、わたしもビックリだ。


「なんだ、見掛け倒しか。」

ルーは剣を鞘に収めると呆れ顔でこちらに引き返して来る。


「はーぁぁ、ま、楽が出来るに越したことは無いか。」

カズヒサは振り向いてわたしに話しかける。


「あれ全部水銀なのかなぁ?」

銀の液状となったゴーレムは沼地の水の底へ沈んでしまっている。

こりゃ分解と浄化が大変だなー。




「とりあえず、これが何なのか調べ「そう簡単に楽させてくれない見たいよ?」うえ?」

わたしは銀色ゴーレム(液体)を見つめたまま、カズヒサにそう言う。


「ずぎゅ~~~~~~。」

まさにそんな音を鳴らしつつ、液体が凄い勢いで一つにまとまり、あっという間に元の

銀色ゴーレムが復活した。


「だ~よね~?、液体金属と言えば、やっぱしコレだよねぇー?」

なんて軽口を叩いては居る間にも、状況は目まぐるしく変わる。

いや、目が廻る、もしくは、目が点、かな。だって銀色ゴーレムってば、


どこの子供用ブリキロボットですか?

と言わんばかりに頭部から赤い目がビカビカビカーと光まくり、三角錐だった形が、三角

を基本フォルムにした腰から上だけの人型のように変形し、その両肩からもクルクル廻る

回転灯やら、腕には回転ヨーヨーより派手な電飾がビューンと音を立てながら輝いている。


さらに、『バシュッ』とくぐもった音がどこかで鳴ったとたん、

ぐぉーーーーーーん、と銀色ゴーレムが膨らんだのだ。




皆あっけに取られている。そりゃそうだ、わたしもビックリだ。

そうして気がつけば身の丈10mを越える銀色ゴーレム改め巨大ロボが目の前に居た。

それって熱膨張なの?


「・・・・・うっそ。」

カズヒサの言葉は皆の気持ちを代弁しているだろう。

日が暮れてだいぶ昏くなっては居たが、一気に辺りが暗くなったのは気のせい?







「一応確認するけど、シャイア。」

「・・・・・え?わたしですか?」

いつまでもビックリしている時じゃないっ!

わたしはシャイアに話しかけるがシャイアはポケッと眺めてて、反応が鈍かった。


「カズヒサ、ぼけっとしてる暇ないわよっ!

ええ、アイツに『解毒』が効くか試してみてくれない?」

土中や水中の水銀は『解毒』で分解消去が出来たのだ。まー試してみる価値はある。

ハッパを掛けられたカズヒサは、巨大ロボに走り寄ると"光"をまとった剣で切り掛かる。


「あ、はい。

大いなる父なる神よ。救いを求める御子にお力をお貸し下さい。穢れた毒を消去し、

清浄と健やかさを取り戻させたまえ。『キュアー・ポイズン』」


しかし、

「ダメです、効きません。」

「やっぱりね。自然の状態じゃないと水銀の浄化は出来ないのね。」

ちぇーー、やっぱり神様って変なとこでケチだ。

水に溶け込んでようが巨大ロボだろうが水銀は水銀でしょうが。

なんで沼の水銀は浄化出来るのに、ロボだとしてくれないかなぁ?


カズヒサの"光"の剣は確実に巨大ロボを切り崩しているが、何せ巨大である。

切られれば『バシャッ』と液状に戻るが、その傍からロボは水銀を吸い上げてたちまち

復元してしまっている。

ルーの普通の剣や、オーリスの弓矢ではロボにダメージすら与えられてないようだ。




「魔法じゃないと効果的な傷を与えられないようですね。」

ニアはそう言うと攻撃魔法を唱える、


「カズヒサ、いきますっ

バルデラ・ビューイ・キ・ローゼン・ライ・エナン

雷よ!魔力の道を通り抜け敵を貫け!『ライトニング・アロー』」


パァーーーッ

漫画と違って現実には至近距離を光速で宙を疾るイナズマは目に映らない。

巨大ロボの一部と辺りが輝いたかと思うと、次の瞬間まるで花火のように火花が飛び散る。


次の瞬間、それまで攻撃を受けるに任せていた巨大ロボはビカビカ光らせていた赤い目を

スポットライトのように強い光で照らし始める。照らされたのは、






わたしとニアだ。






巨大ロボが腕を振り上げると、また「バシュッ」というくぐもった音が、今度はロボの

肩辺りで鳴った。と同時に腕がぐい~~んと真上に伸びる。

あきらかに前衛のカズヒサ、ルー、オーリスを無視してこっちを攻撃してくる構えだ。


わたしはロボの攻撃準備動作が終る前に、盾を召喚する。


『イージス』

やがては真の最強に、なれたら良いなと少しずつ改良している発展途上の、それでも

現時点で創れるわたしの最強の盾だ。

水銀の重い一撃でも難なく受け止めてくれるだろう。たぶん。

だが、問題はそこではない。


わたしの目に、ロボが巨大な腕を振り下ろして来るのが映った。






ずがーーーーーーーん


「「「 ニア 」」」

カズヒサ、ルーとオーリスが叫ぶっ

と同時にカズヒサは見てしまった、

腕が不可視の盾に阻まれたと見るや、液状へと変化し、

ニアとシャイア、それにファリナを大量の液体が飲み込むのを。


うそだろっ!?水銀に飲み込まれたら・・・・・

カズヒサは焦るが、ニア達を飲み込んだ水銀に刃を振り下ろす訳にも行かない。

下手すりゃ自分の剣でニア達を切っちまう。。

どうやってこの窮地を切り抜ける?







『大地よ、わたしを中心に大きく、何物にも壊されない頑丈な玉を作って、

わたしと隣の女性二人をその玉に閉じ込めて護ってちょうだい。』


いつぞやのモグラ捕獲でも似たような檻を創ったが、こちらは完全に球状だ。

球を創るのは『水球』や『全自動』、それに『雷球』や『炎・風・水の嵐』なども球を

基本としているし、今までも様々な場面で精霊にお願いしてきた。

そのため、精霊達も球という形を創るのに慣れていたのだ。だから間に合った。

巨大ロボが腕を振り下ろすよりも、地霊操りでわたし達を護る球状に密閉した大地の壁を

創る方が早かった。


「な・なに?何が起こったの?」

ニアとシャイアは突然真っ暗な場所に閉じ込められ(『影視』で見えはするけれど)、

驚いている。


わたしも今のは結構あせったかも。

昨日ヘンタイスライムに遭遇しなかったら、もしかしたら殴られるまで気付けなかった

かも知れない。そうしたらわたしはともかく、ニアとシャイアは危なかったろう。


見た目は人型とは言え液体、殴るだけじゃ終らないよね?と。






「どうやら、液状に変化した体の中に閉じ込められたみたい。

地霊操りで壁を作って防いじゃいるけどね。」


わたしが簡単に状況をニアとシャイアに説明する。

さて、どうしよう?

地霊を操って地中から脱出する、でも良いけど。

美女が地中を逃げる?そんなの絵的に却下ですっ!

でもハデに行くとなると、外のカズヒサ達まで吹っ飛んじゃいますねぇ。


あれ?微妙に手詰まり?

正確に言うと手はあるけど選択出来ないというジレンマ?

むむ、女として、魔導師としてプライドが掛かってるゾ!考えるのだ、わたし!






「ただの水銀が意思あるように動くわけがない。

つまりニア達を包み込んでいるのは、なんらかの制御下にあるからだ。

とすると。。。さっき肩の辺りで変な音が鳴ったよな?」


カズヒサはロボの肩の付け根で音が鳴った辺りに目星をつけた、肩の回転灯のちょい下だ!

「せやっ」

と魔力剣で光刃を飛ばし切断する。

切られた部分は一瞬分かたれるが、すぐに切断面が液状となってくっつこうとする。

その瞬間、カズヒサは見逃さなかった。

分かたれた2つの切断面がそれぞれ繋がるために相手側へと細長く伸びた時、腕側の縁に

何か光る玉がチラリと見えたのを。

「あれだっ!」

カズヒサは次の技で狙い外さず斬る!と心に決め、集中と準備に入った。






「つまりー、斬られると液体に戻るという事は、固体状態を保持するためにエネルギーを

使っているわけだ。ならば、魔力の供給源を破壊すれば固体状態を保てないっと。」

わたしは魔術式を一つ選んでこの場で構造をいじる。ベースは『プヨ探知』だ。


魔力のレーダー探知だが、必要なのは魔力を受けて相手の位置を特定する部分だ。

こちらから魔力を放射する必要は無いので、その部分をバッサリ削除する。

『プヨ探知改』の魔術式を早口で詠唱起動すると、

魔力の持ち主であるニア、シャイア、わたしの魔力を受けて活動する精霊達が視えてくる。


と、精霊の壁のすぐ向こう側、

明らかな魔力の供給源がハッキリと視えた。それは二の腕辺り、ちょうど回転ヨーヨーの

電飾があった辺りに"在る"。

それさえ判ればこっちのもの。






『闇爪』魔力供給源を断ち割るべく魔術式が。

「ハッ」全てを斬る光の刃が制御球を。





パシャッ


精霊の壁の向こうで包み込んでいた半固体が、液状となって地面に流れ落ちたのを地霊が

教えてくれた。

わたしは地霊操りで地面に溜まった推定水銀を大地の壁で向こうに押しやりつつ、風霊が

清浄な空気でわたし達を取り囲んでくれるのを感じながら、球状の壁を解除する。


「ニア、シャイア、ファリナ。大丈夫だったか?」

カズヒサ、ルー、オーリスが駆け寄って来る。

ルーはなんだか涙目ですっ


わたしはそれを見て、とりあえずカズヒサには「役立たずっ」と心の中で言っといた。

たくもー、自分のニアのピンチくらいちゃんと助けなさいな、男の子。

オーリスが「ワタナベがやってくれたよ。」とニアへ言っているのが聞こえた。


まったくだ、やってくれたよー。

こういうときは前衛の男の子がしっかりしないとダメダメだよ。そう思うよね?

地霊が護る壁の中に居たわたしには当然カズヒサの活躍など知りようも無かった。





目の前には片腕をもがれた巨大ロボがまだ立ってるが、攻略法も判ったし、

そうなると、壊すのはいつでも出来る。気持ち的にはだいぶ余裕が生まれて来る。


この巨大ロボはいったい何なのか?わたしの思考は謎解きへと移っていた。





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