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わたしの名はリアファリナ、トゲエルフのノンビリ旅の陰で、ピネの村は大変なことに。




それからもカズヒサは、故郷へ帰る方法を模索するため?にわたしに何かと話し掛ける日

が続き、時々ニアが顔マッカにして引き剥がそうとする姿が見られたほかは、特に何の

イベントもなく、平穏な旅が続きました。


お風呂タイムでは相変わらずカズヒサをからかって遊ぶ女性陣と、ある意味リフレッシュ

な時間と割り切ったのか、『お風呂セット』のお湯水球の前からどっかと座って動かない

カズヒサ。

見えない状況を、より見え辛くすることで、かえって自身の妄想を掻き立てるその方法は

割と有名どころではあるけれど、これも一つの知識、そして困難を解決する努力の一つ。

ごめんねぇ、ニア。バカヒサの妄想を食い止める魔術式には心当たり無いのよ。

わたしはもう一緒に入るのは止めていたけれど、何も知らない女性達に今更言うのもアレ

でしかないので、この秘密は墓まで持っていくことに決めました。






馬車の旅2日目はパーティーを支援するためのグループ支援魔法バフ開発に勤しんだ。

わたしのショートカットはマクロ対応なので、既に手持ちにある単体バフをメンバー全員

に次々と延々詠唱する方法でも実使用場面としては困らない。

でもっ、わたしの魔道エンジニア、もとい、クリエイターとしての美意識が轟き叫ぶのだっ

もっと美しくっ!と。


というわけで、魔術式のフレームは『魔力セット』そして『体力セット』を流用しつつ、

グループ支援魔法としての特徴を強く打ち出した味付けで組み上げる。

既存魔術式の焼き直しとは言え、思惑通りに行ったなら凄いことになりそうですっ

キタキタキターっ!ひさびさに何かが光臨おりて来ましたっv




カズヒサ達は一心不乱に虚空を睨み指で何かをなぞるようなせわしない動きをしつつ、

時折にへらとユル顔を見せたり、親の敵を見るような厳しい目つきをする謎エルフを

生暖かい目で見守りつつ、勇者そして皇女として課された使命を果たすべく武具の手入れ

をしたり、仲間内で様々議論したりで時間を過ごしていた。

彼らの会話の中には「魔族」だの「全面戦争」だの物騒な言葉が出てきていたが。。。

自分の世界に入っているトゲエルフには馬耳東風だった。






馬車の旅3日目は、まだグループ支援魔法を弄ってました。てへっ

魔術式ってのは一日で為らずなのよっ!






馬車の旅4日目は、まだまだグループ支援魔(ry


って言うと思ったでしょ?ふっふ~ん。

出来ましたーっv 少なくても人様に見せられる程度にはっv


「ねーねー、カズヒサ、支援魔法の試し撃ちさせて?」

「ようやく終ったのか?おつかれ。 だが、断るっ!」

「えーっ?なんでよー?支援魔法よー?すごいのよー」

「わざわざ俺を指名するところが。絶対ろくでもない魔法だ。」

「むかっ あっそう?せっかくカズヒサの技が連発出来ない理由が判って、それを補って

あげられるように創ったのになぁー。カズヒサがそう言うなら仕方ないわよねっ?」


「・・・なんて親切な俺が言うと思ったか?」あ、誤魔化した。




「では行きますっ」

お披露目は、わざわざ馬車を止めて全員の前で行うことになりましたっv



『パーティーセット』

魔術式を起動すると、キュバババババッ、と音を伴いながら全員の体が色とりどりの光で

次々と包み込まれる。この綺麗な光一つ一つがそれぞれ支援魔法なのだ。

その絶大な支援効果はまさにネ申。

こうして説明してる間にも、バババババッ、と支援魔法はまだまだ続くのよっv




プスンっ




ニア

「あら?ファリナ?なんか終わり方が変じゃなかったですか?

あれれ?ファリナどこ?」


そこには地面につっぷしたトゲエルフがピクピクしてましたとさ。




「ちょっと欲張り過ぎたわ。」わたしは魔力の使いすぎでズキズキする頭を振りながら、

「ある意味、お約束を外さないな、おまえは。」バカヒサが呆れたように言う。


「元々が魔力コスト半端無い魔術式の集合体なのよぉ、一つ一つを大きく改造してコスト

を低減してるけど、最後のヤツみたいに計算違いすると、もう大変。」


苦笑しながら言い訳する。

まともにパーティーセットを掛けようとしたら、わたしが10人くらい必要となるので、

魔術式の無駄を如何に省いてコンパクト化出来るかが勝負なのだ。なのだが。。。


「まったく、魔力使いすぎてダウンなんて、俺が変なヤツだったら危なかったぞ。」

「へ~?そういう事いうんだ?良かったわね、手を出さなくて。」

「カーズーヒーサー!」やっぱりというかニアが来ました。

「うわ!美人の般若顔って怖いぞニア。」

「カズヒサ、ウカツな事いうとニアが暴走しますよ。」オーリスはニヤニヤしながら言う。

「そういう意味じゃないんだけどな。ま、いっか。」

倒れて意識の無いわたしに手をだしたらどうなるかなんて知らない方が幸せよ。




「ところでカズヒサ、あなたの技の話だけど。」

「お?何か判ったのか?」

「うん、あんたがバカヒサだって事は判った。」

「・・・・技の話なんだよな?」


「真面目な話よ。あんたねぇ、丸太を切るのと、小枝を切るのと同じ力で剣を振る?

そうじゃないでしょ?丸太には丸太を切るだけの力で、小枝ならそれなりでしょ?

まぁ魔力面での加減の話だから筋力の力加減とは違って、慣れが大事だけどね。」

「それって、あー?あれか?一回で全力出しすぎてたって事か?」


「そうなるわね、あんたのあの技は半端無い威力だし当たれば全部真っ二つだから必要な

魔力コストのチェックも出来てなかったんでしょ?」

「ああ、全部真っ二つってのも考えモンだな。切れてたり切れなかったりで力加減っての

は学習していくもんなんだけどな。そうか、そうだったのか。」


「それとあんたの技は一応魔法剣扱いみたいよ? 技の属性はこの世界のどの属性でも

ないみたいだけど、勇者属性とでも言うのかしら。

男達の体を真っ二つにしたけど、体を構成する地と闇属性部分がすごく綺麗な霊的切断面

だったわ。この世界の知られてるどの属性で切っても、あそこまで霊的歪が無い切断面は、

有り得ないわね。あれなら精霊相手でも、魔族の結界でも何でも切れるでしょうね。

もっとも、技を使った時に全力過ぎて魔力をほぼ使い切る形になってたから、

だから魔力が貯まるまでの時間は、次の技も出せなかったの。

「一応魔法剣。。。って言われ方するとなんかショボイな。

あれ?でもそれだとおかしくないか?

さっきファリナは魔力を使いすぎて倒れたろ?」


「良いつっこみね。

なんかね、あんたの場合魔力が空っぽになっても保護されてるみたい。

普通は魔力を使いすぎると倒れたり、下手すると死んじゃったりするんだけど、

あんたの場合そうならない。たぶん、だけど『勇者召喚の儀』の恩恵だと思う。

よかったわね、『吸魔』系の攻撃を受けても技が出せなくなる程度で済むわよ。

魔族にはインプとかバンプとかそれ系も多いから勇者には必要な資質ではあるわね。

バンパイアの手下になっちゃったヘタレ勇者様とか、いい伝説に残りそうじゃない?」


「やめてくれ。」カズヒサは苦笑しつつ答える。

「さっき失敗した支援魔法はパーティー全員の魔力回復力を向上する予定だから、

いざ戦闘!ってなったら今よりはもっと技が連発出来るようになるわよ。」




さー、また魔術式のパラメータ最適化作業に戻りますかっ


「それじゃ、わたしは馬車に戻って魔力式の調整やってるね。

うふふふふ、今回の子はなかなか難産だわ。へそ曲がりな子はおしおきよっ。」


そう!こんな時こそ『ズゴゴゴゴゴゴ』の擬音が必要なのよっ き・あ・いよっっ!!

わたしは馬車へさっさと乗り込んで座り込むと、自分の世界に入り込む。




「ファリナってよっぽど魔法の改造が好きなのね。」シャイアが微笑んで言う。

「凄い情熱ですっわたくしも見習わなくてはっ。」

「好きなのは良いが、あそこまで行くとマッドなサイエンティストだな。」


「この旅が終わっても、一緒してくれると大いに助かるんだけどね。」

オーリスは誰にともなく呟く。


「ファリナの魔法支援はわたくし達の目的を達成するためには必要です。

ですが、無理強いは出来ません。相手は魔王なのですから。」


そこへ、ルーが傍らに馬を引いた騎士を連れて来る、

「ニア、魔王に関しての新情報が入った。

先ほどの話を、もう一度皇女殿下へ報告しろ。」


「はっ、魔王ですが、魔王城から出たとの話はまだ入ってません。

ですが、代わりに側近2名が・・・・・・・・・・・・」






馬車の外で、勇者と皇女様がそんな真剣な話をしてるのはお構いなしに、わたしは魔術式

の調整に余念が無かった。

しばらくするとニア達は出発のため馬車に乗り込むが、その時もまだ夢中だった。


「近くにいる仲間までの距離演算が、このアルゴリズムを圧迫させてるのが癌ね。

音波による反射波の・・・・でもそれじゃ・・・・少し位減らしても他が・・・

んっそれだと全体のバランスが・・・・」


「おいファリナ、あまり根を詰めても良いアイディアは出ないぞ。」

カズヒサは馬車に乗り込んで来ると、わたしに何かを投げて来る。

わたしはとっさにそれを片手で受けとめると、


「ちょっとバカヒサ危ないでしょ。まったく一声掛けてくれれば。。。」

そこで閃くモノがありましたーーーっv


「こーれーだーっっつつ!!投げっぱよっ フィードバックしながら状態監視するから

いけないのよっっ、最初から掛け捨てで・・・・そうよ、ここを・・・・これでっ・・・

いけるっ! いけるわっっ!!

音速1秒の距離だけ届かせれば計算式が簡素化出来るわっ、ならば・・・」




「おーい?ファリナぁ~?やれやれ果物くらい食べてからやりゃ良いのに。」

カズヒサは肩をすくめながらニア達、女性陣と苦笑した。






馬車の旅5日目は、支援魔法が完成したので、かねてから気になっていた『飛翔』が物体

と接触した時の安定性向上と、力場の斥力を利用して狭い場所でもオートパイロットよろ

しく壁や突起物を避けながら怪我無く飛べないかの理論構築を行ってた。

先日の巨大サメ事件で水に接触するのを怖がって『飛翔』を使えなかった反省を生かそう

と考えた訳だ。

もっともこちらの魔術式は基礎もまだまだコレからだから、完成は遠いけどねっ。






馬車の旅6日目は、目的地ピネの村についてからの、わたしなりな課題整理したり、

カズヒサがそんなに帰りたいなら、帰るための魔術式を考えてやるか!とばかりに、

以前ちょっと構築を試みて挫折した『異界渡りの術』の欠けた部分に対する考証をする。


そして。。。。"『異界渡りの術』が行使できるのは神だけである。"

という結論にたどり着いた。いや~~すまんねカズヒサ。と心の中でちょっとだけ謝る。


「・・・・チャンスは一度こっきりか。」

もし、どうしてもカズヒサが帰還を望むなら、一回だけわたしでも何とかする方法がある。


カズヒサはこの世界にとって、一枚余分なパズルのピース。

そんなモノが何時までも弾かれないでこの世界に留まり続けているのはそもそも異常。

それを可能にする術が、行使する代償を必要としないなど有り得るのだろうか?

魔法は具現される力に等価する何かしらを代償としている。

こちらの世界でもエネルギー保存則は有効なのだ。


「わたしの推測通りならば、ニアは贄にして鍵。それなら『勇者送還の儀』は、」

カズヒサとニア、二人にとって最後の選択になるのでしょうね。とため息をついた。






馬車の旅7日目、今日はピネの村に到着する日だから、わたしは油断無く『風の護り』を

わたし達全員と馬車の車体および牽引馬全てを対象に掛けた。

馬車には『清浄』を掛けておく。

言うまでもなく伝染病対策だ。


そうしてお昼過ぎにはピネの村近くに駐留する騎士団の駐屯地へと到着した。




「変ですニア、事前の情報ではもっとピネの村に近い所を駐屯地としていたはず。

何か起きたのかも。」

とオーリスが気付いた事をニアに伝える。

「おおかた、騎士団にも発症者が出たんじゃない?」

と、わたしはありそうな事を適当に言った。




前方から幾人かの騎士がやって来てニアの前に膝を突く、


「サフィニア皇女殿下、このような遠く離れた場所までお越し頂き恐悦至極にございます。

されど、予想外のことが起きました。今すぐ国元へお帰りくださるようお願いします。」


「なっ 予想外のこととは何ですかっ?」驚くニア


「実は、ピネの村から十分な距離を取り、村の病人も隔離し決して接触しないよう厳命し

ていたにも関わらず、騎士団の者から発症者が出ました。」


カズヒサ、ニア、ルー、シャイア、それにオーリスは揃ってわたしを見た。




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