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バレたらアウト! 魔力0の裏ボス無双  作者: 雲川ぬーぬー


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21/23

蝶のように舞い、蝶のように嗤う

 祭りの明かりはまだ眩しく、笑い声が夜空に響いている。


 僕は仮面をつけたまま、人混みから距離を取った。

 路地裏に足を踏み入れた瞬間、気配が変わる。


 群衆の熱狂に紛れ、僕はいくつかの視線に狙われていた。


 試験中、アフロ仮面として多くの参加者に爆弾を投げ続けた。

 そのせいで、多少の恨みを持たれても仕方ない。


「まだ仮面は外せないか~」


 視線は、どれも素人ばかりだ。

 しかし髪の毛の恨みに混じって、もっと別の観察するような目があった。


 金で雇われたプロの動きだ。

 平然を装って、堂々と前から歩いて来る。


 僕は、フードで頭が隠れている男を見続けた。

 腰に隠された短剣は、毒が塗られているかもしれない。


(やっぱり、獲物を釣るのは祭りが一番だね)


 すれ違った後、僕の首目掛けて剣が振るわれる。


 僕は後ろ向きのまま、剣の持ち手を片手で止めた。


「なッ!?」


「はじめまして、殺し屋さん。早速で悪いけど名前と住所と連絡先、あと誰の命令で来たのか教えてもらえるかな?」


 舌を出して挑発する。


 焦った男の後ろから、さらに刺客が十人現れた。


「わ~お、団体さん? 困ったな~、お出迎えの準備なんて全然できてないんですけど。どうします? この場を丸く収める為に、僕の質問に答えてくれません?」


 僕が動きを止めた男は動かない。


「首だけあればいい。やれ」


 一番奥にいるリーダーっぽい人が指示を出し、他の九人が駆けてきた。


「わー大変だー急いで知らせないとー」


 腕を掴んでいた男の首筋を打った。

 意識を失い、地面に倒れる。


「なーんてね」


 迫ってきた九人は、呻きも許さず崩れ落ちる同僚を見て立ち止まった。


「はい、そこ止まらない。さっさと来なさい」


「「「舐めやがって!」」」


 威勢のいい数人が短剣で迫ってきた。


(なーんか、見た事あるな。あの剣)


 気になったので、試しに斬られてみた。

 頭部、首筋、心臓、的確に相手の急所を狙ってくる人達だ。


(どこで見たのかな~?)


 剣術と言い、体捌きと言い、やっぱり見た事あるような気がするんだよね。


「やったか?」


 奥に居たリーダーが部下を下がらせ、少し離れた場所に立っている。

 フードで隠れていた顔が露わになった


 夜に溶け込む青紫色の髪を短く刈り揃えている。

 目は淡い桃色だ。


(これもどっかで見たことある気がするけど、誰だったかな?)


 最近、記憶力が落ちた気がする。

 異世界に来てから、ゲーム感覚が無くならない。


 魔力0バレたら命の危機のはずなのに、ちょっと気が抜け過ぎだ。


 追加で腹にナイフが十本投げられた。

 これも覚えがある。


(ん~、もう少しで思い出せそうなんだけどな~)


 目の前までリーダーさんが歩いて来る。

 男は、僕を見下ろしていた。


「すみませんが、お名前伺っても? 僕、襲われる心当たりなんて無いんですよね」


「部下が世話になった」


 僕は魔力を見た。


「あ~、覗き魔さん達ですか? 彼女に訴えられても知りませんよ?」


 魔力の波長が公開試験に乱入してきた人達にそっくりだった。

 理由は知らないが、カルタさんを狙っているらしい。


「話が早くて助かる。そのカルタ・クラムだが、今どこにいる?」


「さぁ? 祭りの真っ最中だから、どっかで飲み食いして楽しんでるのでは?」


「答える気は無さそうだな」


(いや、本当に知らないんだけど)


 僕は裏ボスイベントの予感に誘われて、ここまでやってきただけだ。

 蜜に群がる蝶のように来てしまったのだ。


「ボス! ソイツ、ヤバくないっすか?」


 遠巻きから眺める一人が、何かに気づいたように慌て始めた。


「そうだな。ここまでやられて平然と喋り続ける胆力、敵ながら見事だ」


「違いますって! ソイツ、血が流れてないです!」


「そんなことあるわけ……」


 ボスさんは、僕の服を捲って損傷を確認しようとする。


 カラン、と僕に刺さっていた短剣が一つ地面に落ちた。


 血は付いていない。


 ボスさんは、部下のいる場所まで飛び退いた。




「バレちゃった?」


 裏路地には他に誰も居ない。

 誰一人として、この闇に気付けない。


 僕は、笑顔で出迎えた。


「ようこそ僕の裏舞台へ。心ゆくまでお楽しみください」

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