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バレたらアウト! 魔力0の裏ボス無双  作者: 雲川ぬーぬー


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13/23

特急ちょろイン行き、間もなく発車致します。

 カルタ・クラムは、物陰からそっと様子を伺っていた。


 冒険者の青年が周囲を警戒しながら、宝箱を引きずって路地裏へと消えていく。


 ボンッ!


 鈍い爆音と共に白い煙が立ちのぼった。

 宝箱の中身はアフロメーカーだったらしい。

 髪の毛が派手に膨らみ、力なく地面に倒れている。


 アフロメーカーを爆発させても、退場はしない。

 退場するのは派手に暴れ、アフロ仮面に倒された者だけだ。


 ただしアフロメーカーが起爆すれば、意識を失って行動不能となる。


 実質、一度でもアフロメーカーを起動してしまえば即終了だ。

 この宝探しゲームでは、宝箱を開ける事そのものが危険極まりない行為である。


 その事実を、カルタ・クラムは理解していた。


「また一人、脱落」


 呟いたカルタの手には、小型の魔道具が握られている。

 クロエ・リバーシ作、アフロメーカー識別装置だ。


 宝箱に触れると、中身がアフロメーカーであるか否か確認できる優れものである。

 ただし使用時には、一番嫌いな食べ物の味を追体験しなければならない。


(絶妙に嫌らしい)


 この程度の代償であれば、誰でも使わざるを得ないだろう。


(しかし、ラッキーでした)


 少女は運が良かった。

 お宝を最初に見つけられたから、パーティーで唯一生き残っている。


 装置は、カルタが開けた宝箱に入っていた。

 ご丁寧に説明書が入っていたので、使い方に悩む必要もない。


 見つけたのは、アフロ仮面と別れてすぐのことだった。


 パーティーメンバーの一人が退場し、三人となってから偶然宝箱を三つ発見した。

 残りものをカルタが開けた結果、両隣が爆発している。


 彼女含めた四人は、試験で組んだばかりの急造パーティーだ。


 パーティー内で争わない。

 優勝しても分け前はなし。


 守れないなら、残り全員で追い出すつもりだった。


 終わったことは、今更気にしても仕方ない。

 今、青紫色の少女は自分の身を守るだけで精一杯だ。


 慎重に、静かに、足音を殺してカルタは路地裏を進む。


 参加者全員が、たった一つの宝物を狙っている。


 宝物とは、一枚の紙きれだ。

 しかし、その紙切れ一枚には計り知れない価値がある。


 天才魔道具師の卵、クロエ・リバーシのオーダーメイド優先依頼権。

 それが、数多ある宝箱の中に一つだけ隠されている。


 クロエ・リバーシは制作を滅多に引き受けない。


 例え王族であっても、興が乗らなければ途中で放り出すと噂されている。

 そんな不敬も、許されるくらいに彼女は代わりが利かない存在だ。


 今はまだ母の実力に及ばないと聞く。

 しかし、そのクロエの母親も遠くない内に自分を超えていくだろうと認めているらしい。

 年齢は十五才、小さな子供が国王にまで顔が利くのだ。


(比べることすらバカらしい、恐怖すら覚えます)


 そんな天才が、優勝者の魔道具製作を無条件で優先的に引き受けるという。


 参加費用も資格も身分も一切が不問だ。

 より多くの参加者を集める為、私財を投じてアルバイトまで集めたらしい。


 このチャンスを活かさない手はない、と意気揚々と乗り込んだが……。


「考えが甘かったですね」


 ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ!


 至る所で煙が上がり、爆音と共に参加者の頭が鳥の巣に変わっていく。

 残っているのは、誰もが白目を剥いてピクリとも動かない無残な光景だった。


 公開試験の内容は、他国にまで届く規模となり、数百名が参加している。


 私が生き残っているのは、奇跡に近い。

 最初に引き当てた魔道具がなければ、他の参加者と同じように倒れていただろう。


 立て続けに爆発させれば、参加人数が多くても関係ない。

 動ける人は、すぐに居なくなるはずだ。


 しかし、このままでは絶対に終わらない。


 王族まで見ているのだから、少しは趣向を凝らして楽しませようとするだろう。

 であれば、主催者側からそろそろ動きがあるはずだ。


(思った通り)


 スピーカーに魔力が通い、戦場に相応しくない雑音が響く。


『皆さん、こんにちはー。司会のウッサイでーす。クロエ嬢からクビにされましたが、代役が見つからないということで戻ってきましたー。はい皆さん、復帰おめでとうの拍手!』


 観客から少しだけ拍手が送られた。

 声のデカイ人は、空気が死んでいることを素通りして喋り続けている。


『試験もおやつの時間となりました。クロエ嬢、このめっちゃ旨いお菓子どこに売ってるんですか? 教えて下さい』


『秘密よ』


『とても残念です……あれ? なんか嬉しそうですね? もしかして、このお菓子はクロエ様のお手製ですか?』


『違うわ、秘密の菓子職人に作って貰ったのよ』


『であればどうして……え、やめて! ボディーガードさん、髪の毛千切れちゃう! もう聞かないから辞めて! 毛根が終焉を迎えちゃうぅう~!』


 ぜぇぜぇ、とウッセェワ・ダマレさんの息切れが拡散される。

 ちょっと名前が違う気もするが、もう気にしない。


『アンタ、うるさいわね。少しは、その口閉じたら如何かしら』


『も~、何を言うんですか。自分は、お喋りがお仕事ですよ? そう簡単に閉じられるわけ、って何ですか? その魔道具はなんですか!? え、ちょっ、暴力反対!』


 お喋りティータイムを楽しむ進行役は、早く爆死すればいい。

 クロエ・リバーシは、ダマレさんとアフロメーカーを一緒にしてから結界を張った。


 ボンッ!


 砂嵐の映像が止まった後、ダマレさんの髪の毛は鳥の巣になっていた。


『やっぱりクビにしようか、とクロエ様が怖いので手短にいきますね。試験は中盤に差し掛かりました。黒いアフロに白い煙、今日は絶好の爆裂日和です。しかしクロエ嬢、まだ盛り上がりに欠けますよね?』


 全員の心の中を代弁しておきます。

 このクソボケ、余計なこと言うんじゃねぇ!


『クロエ・リバーシです。生き残っている皆さんに素敵なお知らせです。実は、アフロメーカーは投げられます。使用法は蓋を開けることなく、ひっくり返して床面を見て下さい。以上』


 誰かが叫ぶ。


「今さら言うなぁぁぁぁ!」


 カルタは、遠くの方で爆発と一緒に吹き飛ばされる人を見た。

 爆薬の量が盛大に間違っている気がする。


『え~、一人だけ間の悪い方がいらっしゃったようです。では皆様、レッツアフロー!』

『『『『『レッツアフロー!!!!!』』』』』


 司会による掛け声の後、観客席が続いた。

 その呑気さが無性に腹立たしく聞こえることこの上ない。


 カルタは手を合わせた。

(ご愁傷様です)


 吹っ飛んでいった一人は、タイミングが悪かった。

 そうとしか言いようがない。


「ありました」


 少女は宝箱を発見し、識別装置で反応を見た。

 中身はアフロメーカーだ。


 宝箱を開けることなく裏返す。

 クロエ・リバーシの言う通り、説明書きがあった。


 宝箱の床部分を地面から離し、裏返したまま取り出す。

 爆破機能の管理は自動で所有者の任意に切り替わる。

 使う時は、ピンを抜いて相手に投げつけるだけ。


(もう二、三個持っていましょうか)


 別の参加者と鉢合わせしないよう注意して進み、武器を手に入れていく。


 失敗作の魔道具は、多くの場所で見かけた。


 お腹の音を周囲に撒き散らす参加者も居たが、おそらく魔道具の失敗作だろう。

 あれでは敵に見つけてくれ、と言っているようなものだ。

 きっと、腹ぺこさんは誰かにアフロにされて星になる運命だったのだ。


 しかし引換券入りの宝箱は、全く情報がない。

 噂話すら聞こえないのは、さすがに怪しかった。


(誰かが意図的に隠してるんでしょうか?)


 全く耳にしないなんて、誰かが情報の出所を塞いでいるとしか思えない。


(例えば、あの強い仮面の人)


 仮面の人は、参加者ではなく主催者側だった。


 少女のパーティーの中でリーダーを退場させる程だ。

 目の前で見せられたのだから、実力は疑う余地もない。

 声の調子からきっと男の子、もしかしたら同い年の可能性もある。


「もしそうなら……」


 もう一つの目的を思い出す。


 私を助けてくれた、とても強い銀髪の男の子。

 私から名前は教えたけど、男の子の名前を聞くことはできていなかった。


 彼と再会したい。

 会って、直接お礼を言いたい。


(仮面の人も、確か銀髪だったような?)


 そんな訳ないか、と少女はポニーテールを振り回しながら仮面さんの動きを真似する。

 でも、上手くはいかない。


 子供のような体躯で大人を手玉に取る様は、とても新鮮で痛快なものだった。

 あんなに強くなれるなら、と少しだけ考えたが方法が思いつかない。


「決めました。あの人を探しましょう」


 彼は、ルール違反者を取り締まると言っていた。


 問題を起こせば会えるでしょうか? と頭は危ない方向に思考が回り始める。


 しかし、すぐに倒されて退場してしまう。


(とりあえず生き残らないと会えませんよね、本名だって聞けてないですし)


 方針は固まった。

 周囲を警戒しながら進み続ける。


 参加者の動きが明らかに変わってきていた。


 爆弾に怯える雰囲気はなくなり、必死さも不用心さも高まっている。

 全員が血眼でアフロメーカーを探し、相手へ先にぶつけようと走り続けていた。


 アフロメーカーの使い道は様々だ。


 相手の気が緩んだ隙にピンを抜き、何食わぬ顔で渡して元仲間と別れる。

 空の宝箱を元に戻してから少し離れて待ち伏せし、獲物が来たら足下に転がしてドカンッ!


 クロエ・リバーシにとっては嬉しい誤算だろう。

 参加者が勝手に使用法を考えてくれるのだから。


 公開実験は、一人また一人と戦線離脱していく。


 疲労感が半端ない。

 緊張感が続き過ぎて、休憩を入れたかった。


 このままでは、すぐに倒れてしまう。


(何処か良い場所は……)


 人気のない礼拝堂が目に入った。

 身を潜めるには、最適な場所だ。


 中盤に差し掛かったということは、終盤があるということ。

 きっと相応しいイベントが待っているに違いない。


 ならば、話は簡単だ。

 終盤のイベントが始まるまで誰にも遭遇することなく、身を隠していればいい。


 体力を温存する為にも、必要な急速だった。


 今まで爆音と叫び声が聞こえ続けていた。

 でも、礼拝堂の中は静かだ。

 外周も内部も調べたが、この場所には宝箱が一切見当たらない。


 今まで気が休まる場所は一つもなかった。

 何処でも屍アフロが倒れていたし、ピリついた空気で緊張を解けない時間が続いた。


 床に座り込んで、一息吐いた。


(皆さん大丈夫でしょうか?)


 置いてきた急造のパーティーメンバーが気になった。

 リーダーはアフロ仮面に倒されて退場し、他の二人は爆発して倒れている。


(アフロは、きっと何とかなります。三人とも、気を強く持って下さいね)


 再会した時には少しだけ優しくしよう、と固く心に誓った。


「さて、今は自分のことだけ考えないと」


 緊張を和らげないと、最後まで身が持たない。

 入口から身体を隠して座り、深呼吸して目を閉じた。

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