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バレたらアウト! 魔力0の裏ボス無双  作者: 雲川ぬーぬー


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12/23

毛根はいねがぁ〜

「また会いましょー!」


カルタさんは、楽しそうに手を振っていた。

パーティーメンバーの二人と一緒に離れていく。


そんなことよりも、今日は絶好のお昼寝日和だ。


昼寝するか夜寝るか選べと言われても、片方だけなんて耐えられない。


熟睡感だけで言えば、夜が圧倒的に勝つ。


けれど、自然の中で眠ることも素晴らしい。


深緑と静寂の世界で目を閉じる。

目蓋越しに柔らかい光を感じ、切り株に頭を乗せて、大自然を鼻から口へ吸い込んで吐き出す。


「最高だ」


本来、僕に昼寝は必要ない。

どころか、夜眠る時間も必要ない。


食べ物さえあれば、常に動き続けることができる。

僕の身体は既に人外枠だ。


しかし必要なくても、簡単には辞められない。

異世界に来て、睡眠は一つの趣味になった。


通信機にノイズが走る。

僕のお昼寝タイムを妨害するお邪魔虫だ。


『(愚弟、今度は河川エリアよ)』


無視する。


『(今すぐ起きなさい)』


羽虫のように耳元でうるさく喚いている。

仕方ない、殺し合いだ。


「姉さん、僕と戦争したいの?」


「(一生仮面生活でもいいのね? 仮面に接着剤を仕込んでいるのだけれど)」


降伏するのが身の為らしい。


「ごめんなさい、あと五分」


『(ダメよ、今すぐ行きなさい)』


「最高に気持ち良く寝られそうなんだけど」


『(ミミックの件、協力しなくてもいいの?)』


寝起きでも、すぐに覚醒する自分が憎たらしい。


「あ~いあい」


僕は腕の力だけで飛び起き、河川エリアに向かった。


********************


盗賊団と騎士団が互いに切り合っている。


剣の殺傷能力は拳よりも高い。

当たり所が悪いと、簡単に死ぬ。


普段の鬱憤を晴らすため、共に気合が入っていた。

盗賊団と騎士団は仲が悪いことで有名だ。


でも、殺し合いは外でやってほしい。


(もう全員、僕が倒してしまおうか?)


周りに聞こえないよう、通信機越しに姉と話す。


「(姉さん、着いたよ。どうする?)」


『(全員)』


姉からの指示で、全滅が決定した。


忍び足で悪い子達へ近づき、急所を突いていく。


厄介そうな相手には、アフロメーカーをぶつけて注意を引いた後に殴り倒す。

今日一日、自由に動けないようにすれば充分だ。


人体の構造は大きく変わらない。

後は体格と性別差さえ考えれば、大体上手くいく。


全員をアフロにして、両陣営から下っ端一人をあえて見逃す。


他全員を地面へ叩き付ければ、一旦終わりだ。


「終わりましたー! 次の指示くださーい!」


見逃した二人に声が届くよう、大声で姉に聞いた。

これで、僕から逃げられたと錯覚させる。


しかし、逃がすつもりなんて全くない。


『(追跡後に片付けて。先に盗賊団)』


「了解でーす! 待機ですねー! 」


嘘だ。

姉も分かっている。


逃げ道を用意すれば、安心して気も緩む。

人は焦ると、周りが見えなくなるものだ。


僕は、盗賊団側の一人を静かに追いかけた。

気配を消しつつ、進路を姉に伝える。


「大変だ! 全員倒れた! 騎士団もだ!」

「なんだとっ!?」


本隊が待機していた。

やっぱり先行隊だったらしい。


「なにがあった?」

「それが変な仮面被ったヤツに襲われて」

「人数は?」

「一人です!」

「そのアフロは?」

「ヤツにやられました」


下っ端を見て、全員ゲラゲラ笑っている。

君達も、すぐに彼の仲間入りだ。


(ご案内サンキューでーす)


人数分のアフロメーカーを両手に握り、全員の頭部目掛けてばら撒いた。


「なんだこれ!?」

「髪がアフロに!?」

「誰がこんなことをっ!?」


「アフロ仮面参上!」


盗賊団全員が呆気に取られていた。

下っ端だけは、青い顔で腰を抜かしている。


僕は正体を明かした後、下っ端以外全員叩き落とす。

ダッセー! と言ったお調子者にはアフロメーカーを二つ投げておいた。


アフロ仮面はないな、もっとカッコイイ名前にすればよかった、と自分でも分かっている。


(でも、言われるとムカつく)


ストレス発散も兼ねて、もう一つ叩き付けた。


まだまだ精神修業が足りないらしい。


(オセロ十三ちゃい、難しいことよくわかんない)


アフロメーカーを全員へばら撒いた。


「期間限定の増量キャンペーンでーす! 皆さーん、良かったらぜひどうぞー!」


お調子者の髪の毛達は残らず毟り取り、毛根ごと絶滅させておいた。


大丈夫、スキンヘッドにも需要はあるよ。


(知らんけど)


見逃していた一人は、真っ白な顔で離れていく。

彼には、引き続きアフロ仮面の宣伝をしてもらおう。


盗賊団のボスは、十回くらいアフロメーカーを叩きつけて同じ数だけ毛根ごと引っこ抜いた。


部下の無礼は上司の教育不足だ。

責任は、君の髪の毛に払ってもらう。


元凶は潰しておかなければならない。


殺し合いなんてしてほしくない。

人類皆兄弟、隣人を愛し又愛されよというヤツだ。


盗賊団メンバーにはハゲも居た。

ボスはハゲていなかった。


部下の気持ちを理解しデキる上司を目指してほしい、という僕からの細やかな願いも込める。


決して、昼寝を邪魔されたからではない。


とっても怖―い人の存在は、アフロ仮面の名前と頭部完全脱毛の二つセットで広がるだろう。


カルタさんにもアフロ仮面と名乗ったから、噂が広まるのは二倍だ。

騎士団側にも泳がせているから、すぐ三倍になる。


みんなが大人しくなれば、お仕事も楽になるだろう。


周囲に誰も居ないことを確認してから、イヤホンで姉に話し掛けた。


「さて、今度は騎士団側か。姉さん、特別手当出してくれるよね」


『(オークションの結果次第かな)』


姉さんが作った魔道具の失敗作達か。


使い道なんてあるのかなぁ?

けどマニアもいるらしいから、意外と高く売れるかもしれない。


「ねぇ、知ってる? 家族内でもパワハラってあるんだよ?」


『(パワハラ? なにそれ? 美味しいの?)』


さすが異世界、そんな概念は千切って丸めてゴミ箱にポイすればいいらしい。


「なんでもないで~す」


騎士団のボスも盗賊団のボス同様、ムダ毛の永久処理を忘れない。


髪の毛多いと、甲冑の中が蒸れるでしょう?

全部無くせば、永遠に気にしなくて済むよ。


やったね!


「感謝してくれても良いんだからね!」


『(ウチの弟、マジキモい)』


「黙らっしゃい!」


姉には同意だが、次はいつできるかわからない。

できる時にしなければ、一生言えないのだ。


アフロ仮面の名前は個人、組織問わず口コミのように広まっていく。


噂を知って尚、僕に切り掛かる人もいた。

けど、すぐに退場させた。


もちろんアフロ仮面の名乗りで噴き出した奴は、永久脱毛も無料で付けておいた。


大丈夫、諦めないで。

君達の毛根はたぶんきっと頑張れば何とかなる。


(希望は捨てちゃダメだよ!)


僕の目撃者は増やした。

早々にルール違反者は居なくなるだろう。

やっと僕のお昼寝タイムの始まりだ。


『(オセロ、お仕事よ)』


『少しは休ませて?』


今日、僕が休む時間はないかもしれない。


ハゲ量産計画は、僕の所為じゃないから!


姉は恨んでもいいから、僕のことは恨まないでください!

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